デヴィッド・ベッカムが、中東初のサッカーワールドカップであるカタール大会のアンバサダー(大使)を務めていることに非難の声が殺到している。カタールは女性やLGBTQ+、移民労働者への差別が問題になっていることから、開催についての抗議運動も起こっていた。英コメディアンはデヴィッドへの抗議として札束をシュレッダーにかけたほか、元豪サッカー代表選手は「取り返しがつかないほどのダメージだ」と猛批判した。
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デヴィッド・ベッカムが、現地時間20日に開幕したFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会のアンバサダーを務めていることが波紋を呼んでいる。
今回、中東で初めてのサッカーワールドカップ開催国となったカタールは、女性やLGBTQ+に対する差別、移民労働者の扱い方など複数の人権問題で批判されている。同国で同性愛は違法であり、違反した場合は最長7年の禁固刑に処されることがある。
デヴィッドはワールドカップとカタールのプロモーションを行うため、2億4600万ドル(約350億円)で契約を締結した。これは今後10年間におよぶ契約であると報じられており、このような決断が自身の評判を落とす結果になると懸念されているのだ。
今大会では英ウェールズ代表が1958年以来のW杯出場となったが、英国のLGBTQ+でサッカーファンの一部からはテレビでの観戦をボイコットするという声もあがった。
英人気コメディアンのジョー・ライセットは、デヴィッドが同性愛者を違法とするカタールとの関係を断つならば、1万ポンド(約168万円)をサッカー界の同性愛者を支援する慈善団体に寄付すると約束していた。
しかしデヴィッドからは何の反応もなかったため、ジョーは現地時間20日の午後に動画を生配信し、用意した1万ポンドの紙幣すべてをシュレッダーにかけたのである。この大胆な抗議がデヴィッドに対する批判を高めることになった。
なおジョーは翌21日に動画を公開し、シュレッダーにかけたのは本物の紙幣ではなく1万ポンドは慈善団体に寄付したと明かした。
そしてデヴィッドに向けて「あなたからの連絡は期待していなかったよ。みんなの話題になるように仕組んだ、空の脅しだった。いわばあなたとカタールの取引みたいなものさ。最初から全くのゴミだったんだ」と語った。
20日には、元豪代表サッカー選手のクレイグ・フォスターが豪テレビ番組『The Project』にゲスト出演し、「僕達が思い描くデヴィッド・ベッカムの姿は、取り返しがつかないほどのダメージを受けた」と強く批判した。現在クレイグはサッカー解説者を務めるほか、人権問題の活動も行っている。
クレイグは「彼はゲイのアイコンとなり、それが自身のブランドの一部となった。だけど今は世界中のLBGTIQコミュニティの人々が、それは本物ではなく単なるブランドのひとつに過ぎなかったと感じているだろう」と話した。
デヴィッドはイングランド代表チームのキャプテンだった2002年、英ゲイ向け雑誌『Attitude』の表紙をプレミアリーグのサッカー選手が飾るという史上初の快挙を成し遂げていた。
クレイグはさらに「カタールでのLBGTIQコミュニティの犯罪化や抑圧に触れることなく同国を宣伝し、外に向かって素晴らしい国だと言えるとは。彼が過去20年間に行ったすべての発言に明らかに反している」と述べ、こう続けた。
「彼は非常に強力なブランドを持ち、ポジティブな変化をもたらすことができる立場にある。自分の誤りを認めて振り返り、彼ら(LGBTIQコミュニティ)のために発言してくれれば素晴らしいのだが。」
そんなデヴィッドについて、SNSでは「彼の評判を永遠に汚すことになる。金持ちによる、吐き気がするような決断だ」「デヴィッドは血税による報酬を受けている」「アンバサダーになったことを恥じるべき!」と非難の声が殺到している。
現地時間20日にはカタール北部のアルホールにあるアルベイト・スタジアムで開会式が開催されたが、英BBCはこの様子を中継せず、カタールでの人権問題や大会を取り巻く論争に関する番組を放送した。
画像は『David Beckham 2022年10月15日付Instagram「Our city..」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)