トップへ

『SLAM DUNK』で物議を醸す声優交代劇 他の国民的作品でのケースはどうだった?

2022年11月21日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

12月3日に公開される映画『THE FIRST SLAM DUNK』。ファンにとっては待ちに待った『SLAM DUNK』の続編だけに、制作決定から高い期待を集めている。


 そんな『THE FIRST SLAM DUNK』だが、映画公開間近となった11月、東映公式チャンネルのYouTube配信で映画の声優がアニメ版と一新されることが発表され、ネット上で物議を醸した。アニメ版で主人公・桜木花道を演じた草尾毅、流川楓役の緑川光など、当時の声優陣が未だに現役として活躍しているだけに声優一新に不満を持つファンもいるようだ。


 物議を醸す声優交代劇だが、今回のようなケースは実はすくなくない。代表的なものを検証していきたい。


■『ドラえもん』は往年のファンからの違和感も……時代を経て定着


 藤子・F・不二雄原作の国民的漫画、『ドラえもん』。テレビ朝日では1979年からアニメが放送され、第1回から大山のぶ代がドラえもんの声を担当し、高い人気を誇った。


 また、ジャイアンはたてかべ和也、のび太は小原乃梨子、スネ夫は肝付兼太、しずかちゃんは野村道子が大山とともに声を担当。息の合ったやりとりは「ドラえもんファミリー」とも称されるとともに、視聴者から愛され、顔と声のイメージが完全に一致していた。


 ところが2005年3月になり、声優陣の高齢化を理由に声優が一新され、ドラえもんは水田わさびに変更となる。交代当初は違和感を訴える声などもあったが、現在は水田のドラえもんが定着し、現代の子供たちに支持されている。


 ちなみに『ドラえもん』は1973年に日本テレビでもアニメが放送されたことがある。その際に初代ドラえもんを演じたのは、バカボンのパパ役などで知られる富田耕生。2代目は野沢雅子が担当した。


■『クレヨンしんちゃん』は見事な交代劇!?


 平成を代表するアニメとして名高い『クレヨンしんちゃん』。主人公の野原しんのすけを担当したのは、矢島晶子だった。


 1992年の放送開始からしばらくは普通の子供感が強い声だったものの、徐々に癖を強め、作品人気向上とともに「しんのすけ像」が定着。実に26年にわたり、矢島が野原しんのすけを演じた。


 2018年、矢島が「しんのすけの声を保つことが難しくなった」ことを理由に降板を発表。しんのすけ役は小林由美子に引き継がれることになった。小林のしんのすけは矢島のテイストを踏襲しているため、違和感を覚えない人のほうが多いようだ。降板が矢島本人の希望だったこともあり、交代に理解を示すファンが多数派だった。


■『ルパン三世』といえば山田康雄。しかしそこには大きな葛藤も…… 


 モンキー・パンチ原作で、アニメ化され、国民的人気を持つ『ルパン三世』。アニメでは山田康雄がルパン三世を演じ、その軽妙な語り口がキャラクターとマッチし「ルパン=山田康雄」のイメージが定着した。


 ところが1987年に公開されたOVA「ルパン三世 風魔一族の陰謀」で、山田康雄らTVシリーズの声優陣が一新される。ルパンは古川登志夫が担当し、次元大介は小林清志から銀河万丈、石川五エ門は井上真樹夫から塩沢兼人に交代された。


 古川は山田のイメージが強すぎるルパンを演じることに葛藤があったそうで、断るつもりだったそう。そして演じる際には山田に寄せることはなく、古川ならではのルパン像を作り、撮影に挑んでいたことを明かしている。


 ルパンと銭形警部の壮絶なカーチェイスなど、作品の内容は好評だったこの作品だが、視聴者側はやはり山田康雄、小林清志、井上真樹夫のイメージが強かったようで、結局元に戻されている。ルパンの声優交代は、失敗例として語られることが多い。


 山田康雄の死後、山田ルパンをものまねしていた栗田貫一が声優に就任。山田のテイストを継承しつつ、新たなルパン像を作り上げている。


■『アンパンマン』ジャムおじさんはマスオさん役増岡弘からの希望で山寺宏一に


 やなせたかし原作の『アンパンマン』アニメ版で、第1回からジャムおじさんを演じていたのが、『サザエさん』のマスオ役でも知られる増岡弘だ。


 柔和で優しそうな声を持つ増岡とジャムおじさんのイメージはぴったりで、長年親しまれる。増岡は1988年から2019年まで演じ、同年に高齢を理由に降板を発表。その座を山寺宏一に譲り、大役を終えた。この交代も増岡による希望だったため、ネガティブな声は少数だった。


 声優の一新はアニメが人気作品になればなるほどキャラクターと声のイメージが強固なものになるだけに、見る側が戸惑ってしまう様子。しかし、新しい世界が広がることもまた事実で、時が経過すると、徐々に後を受けた人物のイメージが定着していく。


 単純に『SLAM DUNK』と声優交代劇と重ね合わせることはできないが、時が経過すれば、違和感を解消することも、できるのかもしれない。