2022年11月19日 09:11 弁護士ドットコム
不倫関係による思わぬトラブルに発展した女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
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相談者は相手から誘われ、交際を始めてしまったそうです。しかし交際中、相手が自宅に押しかけたり、最寄駅で待ち伏せしたりするようになりました。恐怖を感じ、何度も別れを切り出しましたが、その度に「離婚するから待って欲しい、別れるなら死ぬ」と言われ、なかなか別れられずに関係が続きます。
その後、相手の妻に不倫がバレると、相手は「別れるなら不倫をばらすと脅されていた」と主張し始めたのです。
相談者は相手の妻に慰謝料を支払うことは受け入れています。しかし「自分は交際中も相手の子どもや家計の心配もして、別れを促していた」として、不倫関係に積極的だったのは相手の方であり、そのことは慰謝料を減額する要素になるのではないかと考えています。
さらに相手の不貞関係は相談者に限らず、他にもいたと聞かされていたことから、自分だけが責任を問われることにも納得がいかないようです。
こうしたやり取りの記録は全てLINEに残っているといいます。相談者はどのような対応を取るべきでしょうか。浅野格之紳弁護士に聞きました。
ーー交際相手は常に他の女性とも浮気をしており、それを認めたLINEのやりとりもあるようです。こうした証拠も今回の浮気の慰謝料に影響しますか?
そもそも不貞行為によって損害賠償責任が生じるのは、不貞行為によって「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」が侵害されるためです。そして、そのような権利または利益が、一人によってではなく複数の人物によって侵害されたのであれば、その複数の人物に損害賠償責任が生じます。
その場合、一人あたりの損害賠償責任が小さくなると考えた裁判例もありますので、男性が他の女性とも浮気をしていたということであれば、その事実を立証することにより、女性の責任を小さくする、要するに慰謝料の額を減らすことができる可能性はあります。
ーー相手の「別れるなら死ぬ」という発言は、慰謝料の減額理由になりますか
男性から「離婚するから待って欲しい、別れるなら死ぬ」と言われ、なかなか別れられなかったということですので、女性は関係を清算しようとしていたが、男性がそれを引き止めていた、要するに男性が主導的に不貞関係を続けていたことを立証することで、慰謝料の減額を求めることができる可能性もあります。
ーーこうしたLINEのやりとりは相手方や弁護士に見せても問題ないでしょうか?
LINEのやり取りや興信所の調査報告書などを弁護士に見せることで、相手方からなにか言われるのではないかとご心配される方もいます。相手方や自分の弁護士といった限定された相手に見せることは基本的に問題ありません。
ただし、例えば、SNSで公開する、印刷したものを職場にばらまくといった、不特定多数の人が見ることができるような状況にすることは、内容、方法等によっては名誉毀損等に該当する可能性がありますので注意が必要です。
ーー相談者は相手の態度に強い不満を覚えていますが、相手に反省を促す方法はあるのでしょうか
残念ながら相手に反省を促すのは難しいでしょう。
しかし、このような相手は、事態が収束した頃に再び連絡をして、関係を持とうとしてくる傾向があります。その場合、再び関係を持つことを断ったにもかかわらず、自宅に押しかけてきたり、最寄り駅で待ち伏せしたりする場合には、ストーカー行為として警察に相談し、注意等をしてもらうのがいいでしょう。
【取材協力弁護士】
浅野 格之紳(あさの・かくのしん)弁護士
弁護士登録以降、離婚を主とした家事事件に注力。弁護士法人とびら法律事務所は、累計4000件以上の相談実績を誇る。早期解決を目指し、裁判所を使わない協議案件に力を入れている。
事務所名:弁護士法人とびら法律事務所
事務所URL:https://www.tobira-rikon.com