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au、ブレインテックを活用したドライビングテクニック向上を計る実証実験を実施。実車でのタイム短縮を確認

2022年11月18日 13:00  AUTOSPORT web

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7月20日から9月26日まで行われた『みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト』
 KDDI株式会社、株式会社アイロック、VIE STYLE株式会社、株式会社レーシングヒーローの4社は、脳科学とITを組み合わせたブレインテックと、eスポーツを活用したトレーニングを通じ脳の認知能力を高め、実車でのドライビングテクニック向上につなげる技術の開発に取り組むべく、7月20日から9月26日まで『みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト』を実施。11月18日、同プロジェクトの実証結果を発表した。

 今回の『みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト』は2021年度に実施された実証実験を拡大するかたちで実施され、20名のeレーサーがテストドライバーとして参加。実車とシミュレーターよる走行タイムの測定と約4週間の脳トレーニングが行われた。そのうち、脳トレーニングを受けた10名のeレーサーは、トレーニングをしなかった10名と比べ、実車走行で約2.2倍のタイム向上率と、脳トレーニングの効果が確認されたとしている。

 auが行った調査によると、レーシングドライバーに憧れたことがある人のうち、93.6%の人が「職業として叶わなかった」、99.0%の人が「レーシングドライバーになることはハードルが高いと思う」と回答。さらに、諦めた理由として70.5%の人が「お金がかかるから」、49.5%が「何から始めたらよいかわからなかったから」、42.5%が「練習場がなかったから」と回答したという。

 そこでauはレーシングドライバーになりたいという、『環境的な要因で叶えにくい夢』を叶えるべく、ドライビングテクニックをドライビングシミュレーターとブレインテックで伸ばすトレーニング手法に着目。技術開発の全体を統括するKDDI、脳科学のVIE STYLE、ドライビングシミュレーターの提供と運転技術サポートのアイロック、eレーサーのマネージメントを担うレーシングヒーローの主要4社に加え、スバルとスバルドライビングアカデミー(SDA) など、実車トレーニングのサポートやPCの提供など各業界の知見を有する11社が協力し、プロジェクトは実施された。

 まず、8月1日に筑波サーキットにおいて1回目の測定会を実施。ここでは、実車とドライビングシミュレーターで走行タイムと脳波を測定。また、運転パフォーマンスと相関する認知能力を特定するため、5種類の認知タスク・心理尺度回答を実施し、これらの測定結果をもとに、トレーニング対象の認知能力を特定。

 続いて、8月下旬から9月中旬にかけて、脳トレーニングの対象者と、脳トレーニングを実施しない比較対象者をそれぞれ10名ずつを振り分け、脳トレーニングの対象者には1週間に1回、計4回の脳トレーニングを実施。

 そして9月26日、筑波サーキットで2回目の測定会を実施し、1回目と2回目の最速タイムの短縮率を分析。その結果、脳トレーニングを受けた10名のeレーサーは、トレーニングをしなかった10名と比べ、実車走行で約2.2倍、シミュレーターでは約13倍のタイム向上が見られたという。

 今回の実証実験についてKDDIは「特に実車での走行タイム短縮に効果が出たことから、脳トレーニングは、eモータースポーツと比較して、参加者への伸びしろが大きい運転パフォーマンスの向上につながることが示唆されました。一方でドライビングシミュレーターにおいては、結果のばらつきが大きく有意ではなかったものの、絶対値としてはコントロール群と比較し、大きな向上効果が期待される結果となりました」

「これらを踏まえると、開発した脳トレーニングによってターゲットとなる認知能力を伸ばすことで、レースパフォーマンスの向上に因果的に寄与することが示唆される結果となりました」と、実験結果を評価した。

 また、KDDIは「今後KDDIは本技術をもとに、始めるハードルの低いeスポーツから実車のレーサーに近づくための脳トレーニングアプリの実現を目指し、挑戦する人を応援していきます」としている。

 リアルレースとeモータースポーツの結びつきを深め、eレーサーからレーシングドライバーを目指す人にとっては大きな後押しとなりそうな実験結果なだけに、今後の展開・技術開発にも注目していきたい。

■動画:みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト
URL:https://youtu.be/b6eBBFokMTw