2022年11月18日 07:11 リアルサウンド
アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開が、12月3日に迫っている。その内容について、現在まで発表されている情報は限定的で、映像としては11月4日、東映アニメーション公式YouTubeチャンネルにて公開された予告編のみだ。既報の通り、湘北高校不動のポイントガード・宮城リョータにスポットライトが当たり、井上雄彦による読切作品で、宮城の過去を描いたスピンオフの可能性が高い『ピアス』を思わせる描写があることも、各方面で話題になっている。
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原作の『SLAM DUNK』はご存じの通り、圧倒的な人気でいくらでも連載を続けられたなかで、ある意味では唐突に終幕を迎えた名作だ。最後のコマで「第1部完」との表記があったこともあり、当初は続編を期待する声が大きかった。『THE FIRST SLAM DUNK』がそれに応える作品かどうかはさておき、現在まで、『SLAM DUNK』には続編も正式なスピンオフもなく、“その後”の彼らの姿が描かれたのは、2004年12月、1億冊突破記念として、井上雄彦自身が廃校となった旧神奈川県立三崎高校の黒板に残した「あれから10日後-」くらいだ。『リアル』に木暮公延の姿がカメオ出演のような形で描かれたこともあるが、物語上の広がりはなかった。
そもそも『SLAM DUNK』が連載されていた当時、「スピンオフ」はいまほど盛んに行われていなかった。現在であれば連載中の作品でも、人気キャラクターの前日譚やサイドストーリー、キャラクターの設定だけを生かしてシチュエーションを変更した学園モノなど、スピンオフは量産されている。『SLAM DUNK』はあれで完成されており、余計な装飾や続編はいらない……という見方もあろうが、当時の読者が『ピアス』に感激したことを考えると、井上雄彦氏が認めるかどうかは別として、読んでみたいスピンオフ作品が、ファンなら一つや二つはあるのではないか。
例えば、流川楓や仙道彰など、スター選手の前日譚は、本編で十分に描かれているとは言えず、バスケットボールにのめり込んでいった経緯など、知りたいエピソードは多い。山王工業のエース・沢北栄治の過去はわりとしっかり描かれており、こちらはアメリカへの挑戦がどうなるか気になるところだ。連載当時は「日本人がNBAで活躍する」ことにリアリティがなかったが、今なら大学バスケからドラフトにかかるくらい活躍することにも現実味がある。
他校を軸に据えるなら、濃密なストーリーがあり、湘北高校と裏表の関係にも捉えられるインターハイ大阪代表・豊玉高校のその後も気になる。バスケ部以外なら、“桜木軍団”が活躍する作品もいい。主人公感のある水戸洋平を中心とした不良漫画も読んでみたいし、桜木花道を獲得できなかった青田龍彦率いる柔道部に、高宮望が入部する……なんて未来はないだろうか。
『THE FIRST SLAM DUNK』で描かれるのが既知のエピソードだったとしても、井上氏のなかで物語や選手に対して新たな解釈が生まれていることは語られており、多くのファンが諦めかけていた、公式に『SLAM DUNK』という世界が更新される機会であることは間違い。実現可能性は横に置き、どんなスピンオフ作品、どんな続編が描かれたら面白いか、想像しながら、映画の公開を待ってみてはいかがだろうか。
(向原康太)