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YOSHIの楽曲がバイラルチャートに続々とランクイン “自分を貫く信念”が今リスナーに多くシェアされる理由

2022年11月15日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

YOSHI「VOICE」

参照:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2022-11-09


 Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感・共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの11月9日付のTOP10は以下の通り。


1位:Bar Yahman, Blacky Taiki, 崖の上のオニョ「Yahman Hard Bass」
2位:結束バンド「青春コンプレックス」
3位:SOCKS, DJ RYOW「Osanpo」
4位:YOSHI「COBAIN」
5位:YOSHI「VOICE」
6位:結束バンド「Distortion!!」
7位:シユイ「君よ 気高くあれ」
8位:米津玄師「KICK BACK」
9位:8LOOM「Come Again」
10位:ヤングスキニー「本当はね、」


 今週は11月9日付のデイリーバイラルチャートで、4位「COBAIN」、5位「VOICE」と、トップ5内に2曲ランクインしたYOSHIにスポットをあてる。なお、11月11日付の同チャートで「COBAIN」は3位に上昇、また前2曲に加え新たに「RIDING ON TIME」が初登場13位にランクインしている。


(関連:YOSHIKI、YOSHIの訃報に精神的なショック オーディション継続への苦悩も告白


 YOSHIという19歳のシンガーソングライター/俳優/ファッションモデルの存在は、ここ1カ月間の2つのニュースで、多くの人が知ることとなったのではなかろうか。ひとつは、X JAPANのYOSHIKIが日本テレビとタッグを組み開催したワールドスターを発掘するためのボーイズグループオーディション『YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X』に合格したこと。本年2月から始動していた同プロジェクトは、10月からHuluにて配信、『スッキリ』で一部模様のオンエアがスタートし、合計20名の合格者を順次発表していったが、その中でYOSHIは4人組バンドのボーカリストに抜擢された。この発表で注目を集めていた中、11月5日深夜、事故で帰らぬ人となった。翌日6日のTwitterトレンドで「YOSHI」が1位となっていたことからも世間からの注目度、そしてニュースの衝撃度の高さが窺える。


 YOSHIは、2019年にデジタルアルバム『SEX IS LIFE』でメジャーデビュー。以降、4枚のデジタルシングルと2ndアルバム『I AM CRAZY?』をリリースしている。彼の最大の個性と武器は、彼の人生観が反映されたリリックだと思うが、冒頭で挙げた3曲中2曲に「E」(=Explicit)マークがついていることに注目したい。前述したオーディション番組内で見せた“自分を貫く信念”が楽曲にも表れている証拠だろう。彼の信念に、眉をひそめる人もいるかもしれないが、それはYOSHIが一般論とは異なった己の物差しを持っていたからだと言える。


 4位の「COBAIN」はレゲエのフレーバーも感じる、昨今のトレンドを存分に取り入れたミディアムチューン。洗練されていながら愛嬌ある音色が整然と配置されたバックトラックに、YOSHIのメロウなフロウがライドオンするスタイルは、ざっくり言えばチルポップだが、特徴的なのはYOSHIのラップアプローチである。リズムはしっかり刻んでいるが、語尾の子音を長めに伸ばしている。この余韻を残すスタイルに独特のメロウネスがあり、YOSHIのサウンドの個性になっている。


 YOSHIのクリアな高音から始まる5位の「VOICE」は、どこか抒情的でスケール感あるメロディラインとバンド的なアレンジに、才能の幅を感じる1曲である。2番以降で披露しているラップ然としたキレキレのフロウも、他のパートを生かすコントラスになっている。また、地声のギリギリ上が出るくらいのキー設定で、ファルセットをほとんど使わず、地声のまま歌いあげるなど、ボーカリストとしての素養も印象づけている。しかしながら、この曲が今、多くの人にシェアされている理由は歌詞にある。ほとんどが英語の歌詞だが、ところどころに短い日本語が入る。それが〈生まれた瞬間、〉〈明日死ぬかもしれないって、〉〈止めらんない〉〈オリの中に俺おさまらないさ〉という4つのフレーズ。そして最後はYOSHIの歌声だけで〈I’ll never be alone〉と、羽根がふわりと舞い降りるように終わる。歌詞検索サイトでは、YOSHIの楽曲の中で「VOICE」が最上位になっているサイトもあった。


 今、YOSHIが遺した曲を聴いて感じていることは、人それぞれだと思う。否、思っていた。しかし「シェア」は「共感」の表現方法のひとつなのだと、本記事の執筆で考えるようになった。ひとつ視野を増やしてくれた彼の楽曲に感謝するとともに、心からご冥福をお祈りいたします。(伊藤亜希)