2022年11月11日 14:21 弁護士ドットコム
四車線道路の左折レーンを走行中、突然、直進レーンを走っていた車が横切ってくる様子をとらえた動画が話題になっている。
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動画の車は、左折レーンに割り込むのではなく、そのまま横切り、道路外にある店の駐車場へと入っていった。問題の車には、若葉マークがついていた。
うまく避けられなければ、車同士が衝突した可能性もある。このような危険な車線変更にはどんな法的問題があるのか。西村裕一弁護士に聞いた。
ーー急な車線変更は違法なのでしょうか。
車線変更については、道路交通法26条の2という条文で、次のように定められています。
【道路交通法26条の2】 (1項)車両は、みだりにその進路を変更してはならない。 (2項)車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
したがって、急な車線変更は、この条文に違反した走行方法であるといえます。
今回の動画をみると、問題の車両は、ウインカーは上げているものの、2車線にわたって一度に車線変更をし、さらにその先の道路外の施設に入っています。
直進レーンが渋滞していて交通量も多いと思われますので、車線変更としても極めて危険なものです。また、路外への進行を規定した道路交通法25条の2にも違反しているといえるでしょう。
ーー今回の動画では、後続車はなんとか減速して衝突を回避できています。しかし、もしも、このような急な車線変更が原因で衝突した場合、ルールを守って走っていた後続車も責任を問われるのでしょうか。
仮に、衝突してしまった場合、私は今回のケースでは後続車は過失ゼロを十分に主張し得ると考えます。
しかしながら、車線変更をした車が前方にいて、直進車が後方という位置関係での車線変更の事故は、基本の過失割合が後続車3:車線変更車7となっています。
そのため、危険な車線変更を「重過失」として過失割合を修正しても1:9という可能性もあり、民事では後続車の直進車も過失を問われて過失相殺をされる可能性があります。
刑事については後続車が責任を問われることはおそらくないでしょう。
ーー事故が起きる可能性もなきにしもあらずです。トラブルが起きた場合のために、やるべきことや気をつけるべきことはありますか。
今回はドライブレコーダーがあったので、車線変更の車の危険な態様が客観的に明らかになりました。しかしながら、映像がなければ、互いの認識が異なって、どのような事故であったかについて、そもそも言い分が違うということも起こり得ます。
運転者が初心者の場合には、こちらが想定していないようなタイミングで車線変更をしてくるということもあり得ますし、ご高齢の運転者の場合には、ことさら嘘をついているわけではなく、ご本人の記憶・認識から事故態様について、客観的な状況と異なる主張をするケースもありがちです。
したがって、できる限り、ドライブレコーダーをつけておくことが望ましいといえます。
【取材協力弁護士】
西村 裕一(にしむら・ゆういち)弁護士
福岡県内2カ所(福岡市博多区、北九州市小倉北区)にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。自転車事故も含め、年間100件以上の交通事故に関する依頼を受けており、交通事故問題を専門的に取り扱っている。
事務所名:弁護士法人デイライト法律事務所北九州オフィス
事務所URL:https://koutsujiko.daylight-kitakyushu.jp/