Text by CINRA編集部
毎週更新のCINRAプレイリスト「Songs We Dance To」。ロック / ポップ、インディ、ヒップホップをはじめ、実験的なエレクトロニックミュージックからK-POPまで、ジャンルレスに選曲したプレイリスト(2022年11月7日週更新)から、編集部員が特におすすめしたい楽曲を紹介します。
ROTH BART BARONの5年連続、7枚目のアルバム『HOWL』より。コロナパンデミック下であらずとも異常な、その創作ペースとクオリティーに毎度のことながら驚かされる。
サンプリングされた声の断片、電子音の胎動、綺羅星のごときギターの音の粒たちが何層にも塗り固められた、分厚い、内にも外にも無限に拡がるサウンドスケープのなか、三船雅也は<“新しい何か 言葉が欲しい/人間でいたい 化け物でもいたい”>と歌う。「化け物」とはなにか。こんな一節もある<みんなで生み出した 化け物 を 倒そうとしてる>。ここでいう「化け物」は一義的なものではないだろう。これは「人間」とはなにか? という逆説的な問いかけなのかもしれない、なんてことも思う。
そうやって考えていると<“何か確実な 確かなもの”が/本当に欲しいかい?/“本当に欲しいのかい?”>という歌が聞こえてくる。人間と化け物のあいだにあるもの、それが三船雅也が歌い続けてきた「けもの」の感覚なのだろうか。確実なことはわからない。だが、ここにこの先に未来を照らしうるなにかがあるような気がする。(山元翔一)
「アジア / 東洋の女性」という自身のアイデンティティーを探求した2019年のアルバム『GENERASIAN』でも注目を集めた韓国のシンガー、LIM KIM。久しぶりの新曲“VEIL”は、いまやさまざまなK-POPアーティストの作品に引っ張りだこのSUMINと、SMエンターテイメントのアーティストのリミックスなどを手がけるWill Not Fearがプロデュースで参加。シルキーな歌声が耳に心地よく、LIM KIMのボーカリストとしての魅力を再確認できるR&Bソングになっている。
タイトルに冠された「ベール」は、鋭い緊張感と、本当の姿を確実に見られるようベールを脱ぐ、という2つの意味が込められているという。なおLIM KIMは先日11月9日にSpotify O-EASTで行なわれた『KOREA SPOTLIHT@JAPAN』で来日公演を披露したばかり。(後藤美波)
最近はメンバーのPanda BearがSonic Boom、Nosaj Thing、ジョージ・フィッツジェラルドといったアーティストたちと活発なコラボレーションを繰り広げており、相変わらず自由きままな活動をしているAnimal Collective。新曲“crucible”は『ムーンライト』『レディ・バード』『ミッドサマー』『WAVES/ウェイブス』といった話題作を次々に送り出してきたA24の新作映画『The Inspection』に提供した楽曲だ。
この『The Inspection』という作品は脚本と監督を手掛けたエレガンス・ブラットンの自伝的なストーリーで、ゲイの黒人男性が海軍に入隊し、差別や偏見のなかで自己のアイデンティティーに向き合うというあらすじ。Animal Collectiveは同作の劇中音楽を担当している。日本公開は未定だが、すでに『トロント国際映画祭』『ニューヨーク映画祭』などでお披露目されており、いずれ本邦でも話題になりそうだ。(佐伯享介)
そのほか、パソコン音楽クラブ feat.藤井隆、Phoenix、Gorillaz、崎山蒼志、ASH ISLAND、Yves Tumor、MorMor、Joji、C.O.S.A. feat.JJJ、KUČKAなどの新曲30曲を追加。CINRA編集部がいま聴いている曲をセレクトするプレイリスト「Songs We Dance To」は、Apple Music、Spotifyで毎週水曜に更新中。