2000年代のはじめ頃、僕の周りには能天気にパチプロをやっている若い友達が結構いた。実家暮らしで就職もせず(もしくは新卒で入社した会社をさっさと辞めちゃう)、時間はあるのでパチンコホールに出向き、そこで勝ちやすい立ち回りを覚えて稼ぐ。そういうのがゴロゴロしていた。
また、大学に通いつつパチスロで生計を立て、奨学金の返済に充てるばかりか車まで購入した先輩もいた。ある程度運が良かったんだろうけど、それでも実際そういう人がいたわけで。
しかし、時が経つと、僕の周りからそういう人は消えていった。みんな足を洗ってまともな食い扶持を持つようになった。年齢を考えれば当然だ。では、パチプロとして食っている若者が今も大勢いるか と問われれば答えはNO。00年代初頭には掃いて捨てるほどいたパチプロなんて、本当に一握りになっている。年代の問題ではなく、絶対数が減っている。(文:松本ミゾレ)
「玉増やしたらすぐ出禁 玉減らさなかったら出禁」
先日、暇だったので5ちゃんねるでエゴサでもして、誹謗中傷されてたら開示請求しようと思っていると「パチプロだけどガチで稼げない」というスレッドに出会うことができた。スレ主はパチプロ。しかし現状にだいぶ疲弊をしている様子。彼の、疲れ果てた背中が想像しやすい書き込みを紹介していきたい。
「もうオワコンだよこの業界」
「玉増やしたらすぐ出禁 玉減らさなかったら出禁」
「(現在の平均時給について)最終的に持ち玉率低くて時給1000円切ってるはあるけど平均的な持ち玉率なら1300~1500はあるで」
「もう就職できる年齢じゃない」
ちなみに彼の年齢は26歳。別にそんなに年を食ってない印象はあるんだけど、26でもずっとパチンコしかしていないと社会性もみるみる削られるので、手遅れパターンもありえる。
もう今更社交性を身に着ける段階じゃないだろって人、パチンコホールにゴロゴロいるし。
中でもしんどそうなのが「玉増やしたらすぐ出禁 玉減らさなかったら出禁」という書き込み。パチンコは技術介入次第で大当たり中の玉を増やすことができる。僕はビギナーなので試したことは数少ないが、1日単位でこれをやっていると収支にはかなり影響を及ぼす。プロだったら必修レベルの技術介入要素だ。
しかし今はホール側はこういった技術介入を基本的に認めない傾向にある。台のハンドルが傷みやすいという理由や、プロお断りという方針の一つの目安として、玉を増やすような客は客ではないと考えているお店って多いものだ。
また、パチンコは保留が貯まっているのに玉を打ち続けても抽選されないから意味がない。
だから基本的に保留が3つ貯まったあたりでハンドル操作をしないのが損をしないコツ。でも、この保留止めに関しても厳しい店はプロの仕業とみなして出禁対象にすることもあるようだ。
僕は毎回やっているけど、ビギナー丸出しなので出禁を言い渡されたことがない。やっぱりプロって結構雰囲気が違うし、丸一日打つからすぐ判るのだろう。
ちなみに前述のスレッドを立てたパチプロの場合、10月は35万円相当の稼働をし、実際の収支はプラス29万円ということだった。ほぼ毎日、長時間パチンコをして、下振れはあったものの手取り30近く。これを「高い」と見る人はいまい。
退職金もないし健康を維持し続けなければ一気に奈落の底!
ここから、ちょっとパチプロの行き付く先についてシミュレーションしてみよう。まずパチプロという職業なんてない。基本的にホールが用意した台の中から、釘が甘い台を狙って朝から晩まで打ち続ける、お店にとっては寄生虫のような存在。そしてユーザーにとっても、目の上のたんこぶみたいな人たち。それがパチプロだ。
だが、仮に稼げたとしても生活がラクなはずはない。
まずパチンコで生計を立てる以上、お店選びも大事だし、食事休憩も摂らずに朝から晩まで座ったまま台とにらめっこ。その間も効率的な打ちまわしをしようもんなら一発で出禁にされるリスクが常に背中を見守っているようなもので、気が休まることはないのだろう。
加えて体がやはり資本。体調を崩してしまうとパチンコどころの話ではなくなる。「打たない=稼げない」なのでまさしく死活問題。休業補償金なんてものはないし、退職金もない。体を壊しても傷病手当もないし。
やってることはデスクワークに似ているが、拘束時間は長いし、しかも休憩も最小限。もしくは休憩などしないというプロもいる。その上自分が向き合う筐体は、パソコンの画面とは違って無駄にきらびやか。音もうるさい。頭が痛くなりそうだ……。
これぞ、まさに苦行ではないだろうか。怠惰を求めてパチプロになったのに、気が付けば見返りが乏しいのに、パチンコに対して誰よりも勤勉になっちゃうなんて皮肉なものである。
普通に考えれば馬鹿らしい。しかも今の若い人なんて賢いのが多いから、そもそもパチンコホールに近寄りもしない。
こうして今、パチプロはどんどん減っている。今目立つのなんて、軍団ぐらいのもの。それも都市部にしかいない。田舎では昔はちらほらいたパチプロなんて、今どのぐらい生き残っているのか。少なくとも僕は、滅多に遭遇しなくなった。代わりに増えたのはハイエナかなぁ。