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海外のアンチHV派に衝撃? トヨタ「クラウン デュアルブースト」の可能性

2022年11月09日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車の新型「クラウン」に追加となった「デュアルブーストハイブリッドシステム」搭載モデルは、海外のハイブリッド車(HV)否定派に衝撃を与えるかもしれない。少なくとも、HVだからといってエコカーだと甘く見ていたら、乗って驚くことは間違いない。このクルマについては気になることがいくつもあったので、トヨタの商品企画担当に話を聞いてきた。


○そもそも「デュアルブースト」とは?



トヨタの新型クラウンは4つのボディタイプでも我々を驚かせてくれたが、新登場のパワートレイン「デュアルブーストハイブリッド」に乗ってみるとこれまたびっくりした。トヨタのHVといえばエコカーの代表というイメージだったのだが、クラウンのデュアルブーストは電気の力をエコではなく、走りに全振りしている感じだったからだ(とはいえ、燃費はWLTCモードで15.7km/Lだからそこまで悪くもないが……)。



このクルマについて、商品企画に携わったのトヨタ社員に話を聞いてきた。


――そもそも、「デュアルブースト」ってどういう意味ですか?



商品企画担当者:「ターボ」のブーストと「モーター」のブーストということで「デュアル」です。走り出しはモーターでグイッと出してあげてエンジンで上まで引っ張るので、伸びがいい走りになっています。電気自動車(EV)も出だしはいいんですが、高速になると落ちてくる感じがありますよね? こちらはエンジンでグーっと伸びていく感じが作りだせているのではないかと思います。


――前のクラウンにも「RS」というグレードがありましたが、今回のRS(デュアルブースト搭載)は走りのよさを継承したモデルですか?



商品企画担当者:クラウンは歴代、通常づかいの2.5Lくらいのエンジンと排気量の大きなエンジン、先代であれば3.5Lハイブリッドというように、基本的には2つくらいのラインアップを用意してきました。大きなエンジンでゆったり走りたいというニーズもあるからです。今回も、気持ちよく走れる高出力のエンジンを乗せたいと思っていたところに、すでに開発に着手していたターボの新しいハイブリッドがありましたので、搭載しようということになりました。



燃費、使いやすさ、価格帯などを見て、多くの方は2.5Lのほうを選ばれると思います。先代クラウンでは、8割くらいの方が2.5Lを選択されていました。ただ、大きなエンジン、走るクルマをお求めになるお客さまもいらっしゃいます。


商品企画担当者:今回のデュアルブーストは、ものすごく気持ちよくできているので販売比率が高まるかもしれません。お客さまが選択されることですからわからないのですが、願望を含めていえば3~4割くらいまでいけばいいなと。すでに受注は始まっていますが、現時点では3割くらいがデュアルブーストです。



――同じ「“Advanced”」のグレードで比べると2.5Lを積む「G」が510万円、デュアルブーストを積む「RS」が640万円ですから、130万円の差ですね。



商品企画担当者:発売当初は上級グレードから売れるというのは一般的な傾向ですね。クラウンは500万円、コミコミ550万円くらいがボリュームゾーンなので、そこには2.5Lのシリーズパラレルハイブリッドがあります。こちらは燃費もいいですし、扱いやすくてゆったりと乗れるので、普段使いに向いています。乗っていて疲れないとか、楽に乗れるというのは歴代のクラウンでも大事にしてきことです。

ただ、RSもそこまでガチガチに足回りを硬くしているわけではありません。気持ちよく走っていただきたいという意図なので、決してレーシーにはしていないんです。ドライブモードの「コンフォート」は乗り心地に振っていますから、楽に乗りたいときには選んでいただければと思います。ドライブモードによって色は付けていますので、山を走るときは「スポーツ」か「スポーツ+」がオススメです。スポーツ+ではアブソーバー、ステアリングの手ごたえ、後輪操舵の切れの応答、出力特性まで変わるので、差がはっきりわかると思います。


――現時点で注文している人は、ロイヤルユーザーが多いんですか?



商品企画担当者:多いんですが、SUVや輸入車からの乗り換えが従来より増えているのも特徴的です。これはおそらくスタイル、エクステリアに関心を持っていただいた結果だと思います。今までにないジャンルのクルマなので、若いお客さまにも受けているのではないでしょうか。



――さきほど試乗した「CROSSOVER RS“Advanced”」は、オプションを含めると700万円を超えていました。そうなると、輸入車の「Cクラス」や「3シリーズ」も見えてきますね。そのあたりからの乗り換えも期待したいですか?



商品企画担当者:乗り換えていただいても全然いいと思っています。ただ、クルマ自体はジャーマンスリーに真っ向から対抗するという感じではなく、目新しいジャンルになっているとは思います。



――高性能・高級バージョンの「RS」なのに、特別なバッジが付いていたり、意匠を変えたりといったような演出はしていないんですね。意外です。



商品企画担当者:意図的に付けていないんです。デザイナーのこだわりといいますか、そういう差別化はしたくないという思いがありました。外観の差はホイールのデザインと、リアの「CROWN」の文字くらいです。このロゴは通常はシルバーなのですが、RSは漆黒メッキになっています。よい意匠なら、(あえて差別化せず)ひとつでいいのでは? という考えです。


――試乗したクルマには「ドライバーサポートパッケージ」と「リアパッケージ」というオプションが付いていました。2つで計50万円くらいでしたが、これらの中身は?



商品企画担当者:ドライバーサポートパッケージでは、渋滞時のハンズオフ機能が追加となります。新型「ノア/ヴォクシー」から導入した機能です。リアパッケージは後席に乗る方を優先するオプションで、リアシートをリクライニングできたり、前席背面にアシストグリップが付いたりします。細かいところですが、助手席のヘッドレストがぱたんと倒れて、後席の人が前を見やすくなる機能も備えています。クラウンはショーファーカーとして使う方もいらっしゃいますし、個人事業主の方が顧客を後席に乗せたりもしますので、必要に応じて選んでいただければと思います。



――新型クラウンは海外でも販売するわけですが、地域によってはブランドが浸透していないと思います。どうやって売っていきますか?



商品企画担当者:そのあたりは、正直にいうとこれからですね。まずは北米や中国です。特に中国では、前にクラウンを売っていたこともありまして、ブランドとしては大事に思ってくれている方もいます。北米では試乗会を実施しました。



――デュアルブーストの登場で、海外におけるHVの評価も少し変わるのではないでしょうか? 「HVはエコだけど、走りはつまらないよね」と思っている人も、これに乗れば考えが変わるかもしれません。



商品企画担当者:それはたぶん、あると思います。HVについて海外、特に米国でよくいわれるのは「ラバーバンドフィーリング」、つまり、アクセルを踏むとエンジン回転数は上がるけれどスピードはなかなか上がらず、加速が遅れてくるという意見ですが、デュアルブーストはリニアに加速しますからね。



――HVなのに、エコカーという雰囲気ではありませんよね。



商品企画担当者:今回の試乗会のプレゼンテーションでも、燃費のことは全くいっていませんからね(笑)。ただ、走りが楽しいとご説明しています。(藤田真吾)