2022年11月08日 19:21 弁護士ドットコム
国連の自由権規約委員会が、日本の入管施設の対応改善をもとめる勧告をおこなったことを受けて、名古屋入管の収容施設で亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの妹らが11月8日、東京・永田町の参院議員会館で記者会見を開いて、日本政府に勧告を真剣に受け止めるよう訴えた。
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国連の自由権規約委員会は11月3日、日本の入管施設で2017年から2021年までの5年間に3人の収容者が亡くなったことや、収容施設内の劣悪な医療環境、在留資格を失って就労できない「仮放免者」(Karihomensha)の不安定な状況に関する報告について懸念を示した。
そのうえで、入管施設内で医療へのアクセスを含む処遇について、国際基準に則って改善することや、仮放免者を支援して、収入を得るための活動ができる機会を作れるよう検討することなどをもとめる勧告をおこなった。
ウィシュマさんは生前、交際していた男性からDV被害を受けていることを警察に相談していたにもかかわらず、入管施設に収容された。その後、必要な医療を受けられず、2021年3月、名古屋入管の施設で亡くなった。
この日の会見には、ウィシュマさんの妹ワヨミさんとポールニマさんのほか、彼女たちの代理人をつとめる指宿昭一弁護士、駒井知会弁護士らが出席した。
ワヨミさんは「わたしの姉のような犠牲者が二度と出ないように、日本政府には、国連の勧告を本気で受け止めてほしい」と話した。ポールニマさんも「きれいな言葉でなくて、きちんと勧告を受け止めて、行動してくれるとうれしい」と述べた。
今回の勧告について、駒井弁護士は会見で次のように語った。
「ウィシュマさんの命と引き換えに出た勧告だということを強く感じました。もちろん多くの方々の努力、ウィシュマさんだけでなく、多くの方々の犠牲のもとに出された勧告であると強く感じました。絶対に無駄にしてはならないと思っています。
また、『Karihomensha』という、ローマ字表記がされたということ。非人間的な異常な状況におかれた彼らの状況が国際的に知られることになったということについても非常に重要な勧告であると考えます」
国連の勧告を受けて、葉梨康弘法務大臣は「国連の勧告はしっかり受け止めるが、現段階では、個別法によるきめ細かな人権救済に対応していきたい」と述べたという(NHK)。この発言について、指宿弁護士は次のように述べた。
「(葉梨法務大臣は)『国連の勧告を受け止める』と言った。これ自体は間違っていないと思いますが、『個別法で対応する』という不思議な言葉を述べています。ウィシュマさんと同じような犠牲を生み出さないために必死に努力するという姿勢は感じられませんでした。
この勧告は、3年後にフォローアップの機会があります。報告する期間を考えれば、1年くらいで本格的な改善をおこなって、その結果を見ながら、人権規約委員会に報告しなければならないはずです。法務大臣のコメントはあまりにも悠長で頼りないと思いました」