トップへ

ホンダのAIは空気が読める? 「協調人工知能」搭載の乗り物を研究中!

2022年11月02日 15:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ホンダの研究子会社である本田技術研究所が独自AIの研究を進めている。「人と分かりあう」ことができる協調人工知能「Honda CI」(CIはCooperative Intelligenceの頭文字)という技術で、これを搭載する小型の乗り物(マイクロモビリティ)を2030年の実用化を目指して開発中だ。どんな技術なのかデモを見てきた。


○ホンダのCI搭載車がタクシー代わりに?



Honda CIを活用したマイクロモビリティの主な技術は2つある。「意図理解・コミュニケーション技術」と「地図レス協調運転技術」だ。これらの技術を使うとどんな乗り物ができるのか。ホンダが搭乗型マイクロモビリティ「サイコマ」(CiKoMa)という乗り物で説明した。



サイコマは1人~複数人の乗車を想定した電動マイクロモビリティ。必要なときに呼び出し、目的地に到着したら乗り捨てるような使い方を想定しており、街中や観光地での「ちょい乗り」で役立つ手軽な移動手段を目指している。ホンダでは機能に応じて作り分けた3種類のサイコマを公開。これらのデモを見たり、実際に乗ったりすることができたので、内容をレポートしたい。



最初に体験したのはタクシー代わりに使えそうなサイコマだ。この車両、高精度地図に頼らずカメラで周辺環境を認識しながら走行し、基本的には自動で目的地に運んでくれるのだが、車内のジョイスティックを操作すれば乗員が思った方向に道路を右左折してくれる。


次に見たのはマイクロバス型(4人乗り)のサイコマ。こちらの車両は茨城県常総市の「水海道あすなろの里」と「アグリサイエンスバレー」で実証実験を行う予定だ。

この車両で体験できたのは、ドライバーの意識や状態を読み取り、気が付いていないリスクについて注意を促す技術。ドライバーモニターカメラで運転手の視線を認識し、近づいてくる自転車や前を横切ろうとする歩行者などに本人が気づいていないと判断した場合は音や画面表示で知らせる。


3つ目のサイコマは1人乗りを想定。大勢の人が行き交う広場などで、ほんのちょっとした移動をサポートしてくれそうな乗り物だ。


この車両は人の意図を読み取る技術を搭載。人間と音声で対話しながら、「どこどこの店の前に来て」「(指をさしつつ)そこに止まって」「やっぱり赤い自動販売機の前に来て」といった指示に従って自動走行し、望みの場所まで迎えにいく。指示された場所に到着した際、そこに複数の人がいて誰に呼ばれたのか分からない場合は、サイコマの方から「赤い服を着ていますか?」「スマホを操作していますか?」などの質問を発し、本人を特定する。


気になるのは、これらの技術や乗り物を使ってホンダがどんなビジネスを構築していくのかだが、デモを前に挨拶した本田技術研究所 代表取締役社長の大津啓司さんによると「研究所は事業を考えない」のが基本であるとのこと。「今は技術に集中」しつつ、実証実験を通じて同技術の社会実装に向けた「実態把握」を進めていきたいという。


ただ考えてみると、こうした未来の技術には浮かんでは消えていくという側面もある。これまでに無人タクシーやらコミュニケーション可能な乗り物やらの実証実験はたくさんあったように記憶するが、実用化に結びついたものといえば数えるほどもないような気がする。技術の具体化、社会実装に向け、ホンダはどのくらい本気なのか。



そのあたりを問われた大津さんは、「今後、先進国を中心に少子高齢化が進んでいくのは事実で、さまざまな課題を解決する必要があります。ホンダは『人の役に立つための技術開発』をしてきた会社であり、それがポリシーであり生き様でもあるので、(課題があると)分かっているのに何もしないというのは、ホンダとしては『ノー』なんです。『何かをやらなければならない』という意思先行でスタートさせています」と話していた。(藤田真吾)