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かなり意外? スバルの新型「クロストレック」はシートがすごかった!

2022年10月31日 11:32  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スバルがコンパクトSUV「XV」のフルモデルチェンジを実施し、「クロストレック」に車名を変えて発売した。姿かたちにはそこまで大幅な変化がないようだが、新型クロストレックの特徴、強みは何なのか。開発陣に話を聞くと、スバルにしては意外(?)な話題が飛び出した。


○車名は世界統一



まずは「XV」の出自を押さえておこう。このモデルは2017年、スバルがコンパクト4ドアハッチモデル「インプレッサ スポーツ」をリフトアップして作った「SUV版」だったのだが、世界的なSUVブームを受けて本家「インプレッサ」をしのぐ売れ行きとなったため、こちらが先にフルモデルチェンジすることとなった。


「XV」という車名は日本と一部の国で使っていた専用ネームで、主力市場の北米では以前から「クロストレック」の名で販売していた。今回はモデルチェンジを期に世界的な車名の統一を図った。ちなみにクロストレックとは、「クロスオーバー」と「トレッキング」をミックスした造語である。



新世代「スバルグローバルプラットフォーム」を採用したクロストレックのボディサイズは全長4,480mm、全幅1,800m、全高1,580mm(ルーフレール付き)、ホイールベース2,670mm。旧XVとほぼ同サイズだ。パワーユニットは2.0L水平対向4気筒+モーターの「e-BOXER」(イーボクサー、出力は非公表)のみ。1.6Lモデルは廃止になるようだ。トランスミッションはスバル得意のCVT「リアルトロニック」を組み合わせる。


スバルによると、新型クロストレックの開発では「トレッキング」するようにアクティビティをカジュアルに楽しめる「FUN」なクルマを目指したとのこと。確かに新型の姿を見てみると、よりシャープになったフロントLEDヘッドライトとそれを結ぶグリルバーによって顔つきが精悍になり、ライト下に取り付けられた”へ”の字型のパーツをはじめ、ホイールアーチやリアバンパー、アンダーガードなどに使用されるブラック無塗装の樹脂パーツの面積が増えたことで、先代に比べてかなり若々しく、軽快で元気が出そうなデザインになっている。


一方のインテリアは、最新のスバル車が共通して使用している11.6インチの縦型ディスプレイがダッシュボードセンターの多角形の枠内に収まるタイプのものとなり、使い勝手や視認性が大きく向上している。それ以外には、にょっきりと生えたシフトレバーやアルミのペダル類など、スバリストにはおなじみのスタイルをキープしているので、安心して乗り込むことができる。カラーもグレーやブラックが多用されていてシンプルだ。リアシートは足元空間には不満はないが、やはりルーフ形状が後方に向かって絞り込まれているので、大柄なパッセンジャーが乗り込むときには頭上空間が少し気になるかもしれない。


○新旧モデルを乗り比べると…



XVとクロストレックの比較試乗を行ったのは、かなりのアップダウンと曲率の高いコーナーが連続する「自転車の国サイクルスポーツセンター」(静岡県 伊豆修善寺)だ。旧型XV(4WD)、新型クロストレックのFFモデル(新設定)、4WDモデルの順に2周ずつ走ることができた。

最初のXVに乗ったときには「これはこれで十分だな」と思ったのだが、次のFFモデルに乗ると、ボディの軽さ(FFなので当たり前ではあるが)とエンジンのピックアップの良さ、さらには車内の静粛性が明らかに増していることに気がつく。コーナリングでは前輪駆動らしく気を抜くとアンダーが出てしまうのだが、しっかりとフロント荷重を与えながらステアリングを切ってやると、鼻先がうまく出口に向きを変えてくれるようになる。良好なステアフィールについては、2ピニオン式のパワステを新たに採用したことでリニアな応答性がアップしている、との説明だった。


最後に乗った4WDモデルは、リアの駆動力によってコーナリング時の姿勢がさらに安定していて、結構なスピードでも気持ちよくコーナーを回ってくれるし、オールシーズンタイヤにも関わらず車内は静かで、なかなかの完成度であることが確認できた。


試乗を終えた後、新型クロストレックの車内の静かさについて話を聞いたのは、スバル 技術本部 ボディ設計部の竹内源樹主査だ。



新型のボディについては、「レヴォーグ」から始まった「フルインナーフレーム構造」を採用している点がまず第1のポイントであるとのこと。基本となる骨格を組み立てた後にアウターパネルを溶接する手法だ。使用する接着剤の塗布範囲を拡大するとともに、その質についても変更を加え、車内に伝わってくる「ゴロゴロ音」を吸収してくれるようなものを採用しているのが第2のポイントなのだという。



手元にあった新旧のルーフ部材を試しに叩いてみると、旧型の「コンッ、コンッ」が新型では音質が低くてむやみに響かない「コツコツ」という音に変わっていて、新旧の差が著しいことがわかった。


第3のポイントはシートの作り込みだ。こちらを担当したのはスバル 第1技術本部 内装設計部の田中純主査。新型のシート設計にあたっては、地元の群馬大学医学部と共同で、乗員の疲労の原因となる頭の動きをどうしたら抑えられるのかを研究したそう。解答として、人間の腰にある「仙骨」の動きを抑えるシートの設計に行き着いたという。仙骨の動きを抑えれば、それに連なる脊椎と、その上にある頭の揺れを減少させることができて、長時間のドライブでも姿勢が安定し、疲れが少なくなる。クルマの乗り心地を説明するために人体の構造から説き起こすのはマツダの得意分野かと思いきや、スバルもきっちりと研究を進めていたのだ。


クルマのフルモデルチェンジといえば昨今、パワートレインの電動化や自動運転関連の新機能採用など、さまざまな最新技術を盛り込むことが定番となりつつあるが、スバルXVがクロストレックへと変わった今回の刷新は一見すると地味に見える。だがしかし、乗ってみさえすれば、新型クロストレックが総合性をしっかりと高めた入魂作であることがきちんと伝わってくるはずだ。進化したアイサイトやインフォテインメント面などについては、正式発表後に詳細が判明するだろう。いずれにしても、これは期待できそうなクルマに仕上がっている。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)