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キコ・コスタディノフが文化服装学院で特別講義 「トレンドはもうない」学生からの質問に回答

2022年10月29日 10:32  Fashionsnap.com

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キコ・コスタディノフ、ディアナ・ファニング、ローラ・ファニング

Image by: FASHIONSNAP
「キコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)」のメンズデザイナーを務めるキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)と、ウィメンズデザイナーのディアナ・ファニング(Deanna Fanning)とローラ・ファニング(Laura Fanning)の双子の姉妹が文化服装学院で特別講義を行った。

 今回の特別講義は、今夏キコ・コスタディノフがリサーチを兼ねて文化学園の図書館に来館したことをきっかけに実現。午前は文化服装学院アパレルデザイン科の3年生と希望する2年生を対象に、午後はシューズデザイン科の学生に向けて講義を開いた。午前は質疑応答形式で、「流行やファストファッションについてどう思っている?」という質問に対してキコは「ファッションにもうトレンドはないと思っている。誰も新しいシルエットを作り出していないから。『ミュウミュウ(MIU MIU)』のミニスカートは新しく感じたけれど、2000年代のブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)みたいだし。ソーシャルメディアの時代において、みんなミックスしてファッションを楽しんでいるから、作り出せるのは色のトレンドくらいだろうね」と回答。また、ローラは「私も学生の頃に同じ質問を講師にして、『ポストモダニズムの時代に生きていて、トレンドはない』と同じようなことを返された。約10年経った今、同じことを質問され、同じ返答をしていることがとても面白い」と話した。

 「新しいデザインを作るために取り組んでいることは?」という問いには「本当に新しいモノはない。リサーチをたくさんすることで、似ているものが知れるし、自分が何が好きかを知ることが大切。強いて言えば個人的な体験をすることでしょう。飛行機に飛び乗って沖縄に2週間行ってみることのほうが、インスタグラムを見続ける日々よりはいい。自分の手でたくさんの物を見て、知ることが大事」とコメント。日本人デザイナーの強みについて聞かれると、「コミットする力とクラフトマンシップに優れていると思う。あとはヨーロッパのルーツを持っていないことが強みでしょう」と話した。そのほか、「色の合わせ方で気を付けていることは?」「他の学科と積極的にコミュニケーションを取るにはどうすれば良いか」「数日前にインスタグラムのストーリーズに投稿していた画像の意図は?」「卒業後一度就職した方が良いか、いきなり独立したほうが良いか」といった質問が寄せられ、約2時間にわたって質問に答えた。

 午後は2018年から協業している「アシックス スポーツスタイル(ASICS SportStyle)」を迎え、コラボレーションが始まった経緯などを解説。学生たちにとっては、これまでのモデルのサンプルやデザイン画などの資料を手に取り、デザイナー本人から素材やディテールの意図を聞く貴重な機会となった。


—講義を終えた率直な感想は?
キコ:とても楽しかったです。普段講義をすることがないので、僕たちも緊張していました。目的は僕たちがただ話すだけでなく、学生と繋がることだったのでたくさん質問をしてくれて良かったです。
ディアナ:質問のいくつかは私が学生のときに抱えていた疑問と似ていたのでとても興味深かったです。卒業後すぐに自分のブランドを立ち上げるべきか、一度就職して経験を積むべきかは私も悩んでいましたし。

—悩みに関する質問が多かったですね。
キコ:学生はあまり深刻にならなくてもいいと思いますけどね。
ローラ:もちろん私たちもいまだに不安になることがあります。世界中で素材の価格が上ったり、ファッションにとってとても難しい時期だと思うので、そういった質問が多かったのかもしれませんね。
—講義では「好きなことを見つめ直すことが大事」と何度も話されていましたが、それぞれ好きなことを教えてください?
キコ:新しい刺激が好きです。なので、旅行して色々な物を見ることも、こういった図書館でリサーチをすることも好きです。夏はここで4時間程度リサーチをしていて、新しい人に会ったり刺激を貰いました。
ディアナ:私はヴィンテージのリファレンスを探しているときが夢中になれて好きです。今はオブジェクトについて調べることが気に入っています。
ローラ:旅をすること好きで、常に自分の視線を新鮮に保ってくれるものだと思っています。
—2018年のインタビューで、デザイナーを目指す人に一言で「やめておいた方がいい。想像以上にハードワークだから(笑)」と答えていました。今もその言葉は変わりませんか?
キコ:はい、変わらないですね(笑)。
ディアナ:インディペンデントにやるとしたら、常にやるべきことがあって、自由な時間はないでしょう。まあ、私たちが言っていることは全ての人に関わることではありませんし、決めるのは自分自身です。
キコ:今回の講義は教育をするためではなく、彼らが各々好きな部分を切り取ってもらえれば良いです。私たちは彼らの決定に何の責任も取れません。何人かは僕たちの発言に賛成したかもしれないけれど、一方で反対した人もいるでしょう。それはとても良いことで、なぜならファッションにはいくつもの視点があるべきだと考えているからです。