Text by CINRA編集部
カニエ・ウェストによる人種差別的な言動や反ユダヤ主義的な発言をめぐり、波紋が広がっている。アディダスは10月25日、「イェ(※)氏とのパートナーシップを即時終了します」と宣言する声明を発表。カニエと提携していたバレンシアガ、ギャップも契約解消を発表している。
(※)カニエの改名後の名前
トランプ元大統領への支持を表明し(その後撤回)、アメリカ大統領選に出馬するなど近年の言動が物議を醸すカニエ・ウェスト。
10月初め、パリで開催されたファッションウィークで発表した自身のブランド「YEEZY」の最新コレクションで、背面に「WHITE LIVES MATTER」とプリントされたシャツを発表したことが大きな批判を浴びた。「白人の命も大切だ」と訳される「White Lives Matter」は、アメリカの黒人差別の抗議運動「Black Lives Matter」に反発して生まれたフレーズで、白人史上主義や極右団体などがスローガンとして使用する言葉だ。アメリカでは人種差別的なフレーズとして知られている。
<カニエが発表した「YEEZY」のSeason 9コレクション映像。2分43秒ごろ、黒人のモデルが「WHITE LIVES MATTER」とプリントされたシャツを着用している。>
さらに、保守系の黒人作家、言論人のキャンディス・オーウェンズは自身のTwitterで、「WHITE LIVES MATTER」のシャツを着ているカニエとの2ショット写真を投稿した。
また、2020年に白人警官から暴行を受け殺害されたジョージ・フロイドさんや、ユダヤ人コミュニティーに対する発言でも波紋を広げた。
CNNによると、N.O.R.E. とDJ EFNがホストを務める人気Podcast番組「Drink Champs」に出演したカニエは、ジョージ・フロイドさんは薬物の過剰摂取によって死亡したと主張。しかし検死官は、フロイドさんの死因は首を押さえつけられたことによる「窒息」であることを断定している(*1)。
ユダヤ人コミュニティーについての発言については、TwitterとInstagramがアカウントを凍結するまでに至っている。AFPによると、カニエは10月9日までに、自身のTwitterで「目が覚めたらユダヤ人にデスコン3を仕掛ける」と投稿(※)。「death(死)」と米国防総省が定めた軍の防衛態勢レベルを示す指針「デフコン(DEFCON)」をかけ合わせた造語とみられ、投稿後、アカウントが利用規約違反で凍結されたという。
カニエのTwitterとInstagramアカウントは現在も確認はできるものの、更新されていない状態だ。
(※)ツイートは現在非表示になっている。
度重なる言動を受け、アディダスなどカニエと提携していたブランドは契約解消を発表している。
2013年から約10年間にわたりカニエとパートナーシップを結んでいたアディダスは10月25日、同社での「YEEZY」の事業を直ちに終了することを宣言した(*2)。同社は「反ユダヤ主義やそのほかのヘイトスピーチを容認しません」とコメント。「イェ氏の最近のコメントと行動は容認できず、憎悪に満ちた危険なものであり、多様性と包括性、相互尊重と公正という弊社の価値観に違反しています」としている。
なおカニエはここ数か月、自身のデザインを盗用しているなどとしてアディダスやギャップへの批判をSNSで繰り返しており(*3)、9月にはBloombergの取材に対し、パートナー企業との関係を終える方針であると明かしていた。またHYPEBEASTは10月初旬、パートナーシップを見直しているとするアディダスの声明を報じている。
アディダスの公式サイトより
9月に「YEEZY」との契約を終了していたギャップも10月25日、公式サイトに声明を掲載(*4)。「反ユダヤ主義、人種差別、ヘイトはいかなるかたちであっても弁解の余地がない」とカニエの言動を批判し、オンラインストアから「YEEZY Gap」の商品を削除すると発表した。
「YEEZY Gap」とのコラボラインを発表していたラグジュアリーブランドのバレンシアガも、プロジェクトを継続しない方針だという(*5)。パリのファッションウィークで、カニエはモデルとして2023年サマーコレクションのランウェイにサプライズ登場していたが、公式サイトではカニエの写真が削除されている。