荒川弘原作による舞台「鋼の錬金術師」の制作発表会見が、本日10月24日に東京・時事通信ホールで行われた。
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「鋼の錬金術師」は国家錬金術師のエドと、その弟・アルの旅を描いたファンタジー。2001年7月から2010年6月にかけて月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)で連載された。舞台化は今回が初となる。会見には脚本・演出を担当する石丸さち子、エドワード・エルリック(エド)役の一色洋平と廣野凌大、アルフォンス・エルリック(アル)役の眞嶋秀斗、ウィンリィ・ロックベル役の岡部麟(AKB48)、ロイ・マスタング役の蒼木陣と和田琢磨が出席した。
オファーされた当時、2.5次元舞台の演出経験がなかった石丸は、単行本とアニメをすべて一気に読破・鑑賞したといい「その頃には『私が適任だ』と思っていました。11歳という年齢で人体錬成という禁忌を犯してしまった2人が、兄弟でその罪を背負いながら、自分を見つけ、命の意味を見出していく様子が、重く心にのしかかることもあれば、ものすごく軽やかで若々しく描かれている。ずっとその冒険を共にしていて、ぜひとも私に作らせてくださいと逆にお願いをしました」と依頼を受けた経緯を語る。舞台化にあたっては荒川、原作やキャストのファンに向け「真っ向から『鋼の錬金術師』に立ち向かって、観に来てよかったと一生の記憶に残るようにしていきたいと思っております」と決意を語った。
エドとアル役のオーディションは約4カ月もの期間にわたって行われたという。一色は決定の報告を受けた日には、興奮のあまりに最寄り駅から自宅まで走って帰ったと明かし、「湧き上がるものがあって走り出す、という初めての経験でした」と振り返る。また一色はオーディションの様子を振り返り、「集まった俳優たちで1つのシーンを作るという、稽古のようなオーディションで。床は汗だくになって、アクションシーンは他人の汗で滑りながら演じて、『誰がこの役を掴むんだ!』ということは一旦脇に置いて、みんなで1つのシーンを作ることに注力していました。ピリピリしたものはなく、健全に俳優たちが戦ったので、オーディションにいた全員の“エド”が僕たちに乗っかっている気がします」と思いを述べる。
廣野もオーディションを振り返り、「オーディションではあり得ないぐらい時間が長くて! 石丸さんに『今日2シーン作るから』と言われて、作る!? オーディションだよね?と思ったんです」と過酷な日々を思い返す。エド役を射止めた日は一色同様に興奮したといい「やりきったから悔いはないと思っていたんですが、決定したと連絡があったときは膝から崩れ落ちました。マネージャーさんから『よかったね』とLINEが来て。周囲の人たちに感謝して、改めて『やってやる!』という思いです」と力強くコメント。眞嶋は「オーディションでは半日以上みんなと熱を注いで演じているので声も枯れるんですが、そんなことはどうでもいいぐらい、その期間が楽しくて。審査を重ねる度に『出てやるぞ!』という気持ちで、芝居って楽しいなと感じていました」と語った。
続いてキャスト陣は原作や、それぞれ演じるキャラクターの魅力についてトーク。一色は「中学生の始めの頃に作品を読んでいたときは、派手な錬金術に注目していたんですが、大人になって読むと、1巻の1ページ目にある『痛みを伴わない教訓には意義がない』『人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから』っていうセリフに喰らいました。それから自分で心に残ったセリフを書き留めているんです。それからエドの描写にもしびれました。彼は16歳なんですが、時折本当に苦労した成人男性しか寄らないようなしわが寄るんです。これは舞台ではしっかりと表現したいなと思います」と述懐。廣野は「エドを演じるにあたって彼と向き合ったとき、彼がすべてに対してきらめいていて、うらやましかったんです。僕らは生きていくうえで困難に出会ったらうまく逃げて、向き合っているふりをしてしまうこともあると思うんですが、エドたちは困難にがむしゃらにぶち当たっていく。そして持ち前の精神力で乗り越えていくさまが気持ちいいんです。もちろんそうありたいと思って生きていますが簡単なことではありません。僕ら人間が、もがいている2人に共鳴して、憧れて、キャラを理解したうえで演じることにすごく重大な責任を感じています」とエドとアルへの思いを述べた。
眞嶋は「最後のオーディションでスーツアクターさんの動きに声を乗せる場面があったんですが、アルが鎧になった自分の姿への思いや、元の体に戻りたいと語るセリフがあるんです。そのとき、どういう感情でその言葉を言ったのかを考えると奥深いなと感じました。自分でもまだ答えが見つからないんですが、舞台を通してその答えと向き合い、アルに丁寧に命を吹き込んで演じていけたらいいなと思います」とコメント。岡部は「おばあちゃんに育てられたウインリィですが、男の中だけで育ったような強さを感じます。精神面でも技師としてもエドとアルの支えになる大切な役ですが、いつしかエドに対しての恋心に自分でも気付いていく人物なので、強さの中にもかわいらしさと優しさがちょっと見えるのが魅力だと思っています」と述懐した。
青木はマスタングについて「小学生ぐらいのときに読ませていただいたときはカッコいいお兄さんだなと思っていたんですが、気付けば彼とほぼ同い年になりました。彼は大人の余裕とか隠しきれない優しさとか、魅力の詰まった役だなと思いつつ、心の中ではいつも炎が燃えていて、それが見え隠れしそうでグッと押さえているところが一番魅力的だと思っています」と語る。同じくマスタングを演じる和田は彼を「圧倒的な人間」と表し、「“圧倒的”って、手を伸ばしても届かない高さにいる人と、物を落としても底が知れない程深さがある人の2パターンだと思っていて、マスタングは深い人間だと思います。マンガを読んだときに感じた、彼の深い愛情や信念を表現できたら」と説明した。
会見中には石丸が作詞、森大輔が作曲した舞台「鋼の錬金術師」テーマ曲「鋼の絆」を、一色と廣野が生披露する場面も。今回の舞台では、生のバンド演奏を組み込むことも発表され、石丸は「演出のお話をいただいた2年前にはもう私たちはコロナ禍にいたんですが、上演されるころには、2次元が立ち上がってくるときに観客が五感で感じるものをライブでお届けできることの良さを享受できる時代になっているだろう、と思っていたんです。今もその頃と状況はあまり変わりませんが、演奏される音楽が鼓膜にダイレクトに届くことは素敵なんじゃないかなと思って最初から構想にありました」と意図を語る。会見の終盤にはスーツアクター・桜田航成演じるアルも登場し、登壇者たちとフォトセッションに応じた。
■ 舞台「鋼の錬金術師」
期間:2023年3月8日(水)~3月12日(日)
場所:大阪府 新歌舞伎座
期間:2023年3月17日(金)~3月26日(日)
場所:東京都 日本青年館ホール
□ スタッフ
原作:荒川弘「鋼の錬金術師」(掲載「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
脚本・演出:石丸さち子
音楽監督:森大輔
作詞:石丸さち子
作曲:森大輔
美術:伊藤雅子
照明:日下靖順
音響効果:天野高志
音響:増澤努
映像:O-beron inc.
舞台監督:今野健一
ヘアメイク:馮啓孝、井村祥子
衣裳:渡邊礼子
小道具:羽鳥健一
殺陣:新田健太
演出助手:高野玲
制作進行:麻田幹太
宣伝デザイン:山代政一
グッズデザイン:山代政一、石本寛絵
デザイン協力:石本茂幸
宣伝スタイリング:中西永人(JOE TOKYO)
フォトグラファー:TOBI
□ キャスト
エドワード・エルリック:一色洋平 / 廣野凌大
アルフォンス・エルリック:眞嶋秀斗
ウィンリィ・ロックベル:岡部麟(AKB48)
ロイ・マスタング:蒼木陣 / 和田琢磨
リザ・ホークアイ:佃井皆美
アレックス・ルイ・アームストロング:吉田メタル
マース・ヒューズ:岡本悠紀
ジャン・ハボック:君沢ユウキ
デニー・ブロッシュ:原嶋元久
マリア・ロス:瑞生桜子
ティム・マルコー:阿部裕
ショウ・タッカー:大石継太
イズミ・カーティス:小野妃香里
ラスト:沙央くらま
エンヴィー:平松來馬
グラトニー:草野大成
傷の男(スカー):星智也
ゾルフ・J・キンブリー:鈴木勝吾
ピナコ・ロックベル:久下恵美
グレイシア・ヒューズ:斉藤瑞季
ニーナ・タッカー:小川向日葵 / 尻引結馨
キング・ブラッドレイ:辰巳琢郎
アルフォンス・エルリック(スーツアクター ):桜田航成
バンドメンバー:森大輔(Band Master、Key)、オオニシユウスケ(Gt.)、熊代崇人( Ba.)、守真人( Dr.)
高野玲の高ははしごだかが正式表記。
(c)荒川弘/SQUARE ENIX・舞台「鋼の錬金術師」製作委員会