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ジープが新型「コマンダー」発売! なぜ日本導入? 初ディーゼルの走りは?

2022年10月24日 16:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ステランティスジャパンがジープの新型車「コマンダー」を発売した。聞きなれない車名だが、なぜジープはこのクルマを日本に導入するのだろうか。そして、ジープとしては国内初となるディーゼルエンジンの走りは。試乗して話を聞いてきた。


○「チェロキー」に代わる選択肢?



競争が激しい3列シート中型SUVに登場する新型モデル「コマンダー」。受注開始は10月24日だ。



ジープの「コマンダー」と聞くと、2006年~2009年に日本でも販売されていた四角いボディの旧モデルを思い出す方がいらっしゃるかもしれない。こちらは当時、ダイムラー・クライスラーの傘下にあったジープブランドのフラグシップとして開発・製造されたもので、パワートレインは4.7Lと5.7LのV8エンジン、室内には立派な3列7人乗りシートを装備していた。ただ、今回の新型コマンダーは旧コマンダーの後継モデルという立ち位置ではないらしい。



新型コマンダーは弟分となる「コンパス」と同じく、横置きエンジンのFWDシャシーをベースとする。実はインドやブラジルではすでに販売されているクルマで、1年ほど前から路上を走り始めているそうだ。日本仕様の右ハンドル車は、同じく左側通行のインドで製造している。向こうでは「メリディアン」の名で販売中で、なかなかの人気車になっているのだとか。


ジープには2系統の商品ラインアップがある。本格オフローダー系の「レネゲード」「ラングラー」「グラディエーター」と、乗用車系の「コンパス」「チェロキー」「グランドチェロキー」だ。そのうち、日本向けのチェロキーは2021年に生産終了となった。この穴を埋めるべく登場するのが新型コマンダーというわけだ。チェロキーは有名な割に販売で苦戦していたそうだが、コマンダーでは「3列シート」と「ディーゼルエンジン」でチェロキーとの差別化を図り、販売を伸ばしていきたい考え。


○3列目はどのくらい快適?



コマンダーのボディサイズは全長4,770mm、全幅1,860mm、全高1,730mm、ホイールベース2,780mm。これなら、日本国内の道路でもギリギリ無理せず乗り回せるサイズ感だ。



直線を多用したエクステリアはシンプルかつタフなイメージ。「Jeep」のメーカーロゴがボンネットの鼻先やライトカバー内、リアセンター、ホイールセンターなど随所に散りばめられている。「COMMANDER」のロゴが両サイドのフロントドア部分に入っているが、ここに車名を入れるのジープ各モデルに共通する意匠である。



18インチのアルミホイールには、オンロードの快適性能を重視したブリヂストンのコンフォート系SUV用タイヤ「DUELER H/T」を装着。サイズは235/65R18だ。


インテリアはブラックの8ウェイパワーレザーシート(ヒーター付き)をはじめ、皮巻きのステアリングとシフトノブ、10.25インチのフルカラーマルチビューディスプレイ、10.1インチのタッチパネルモニターなど、最新モデルらしい仕上がりになっている。


気になる3列シートの2列目は60:40の分割可倒式。3列目は50:50の分割可倒式だ。2列目の背もたれのロックを外すとシートが強力なバネで一気に前方に跳ね上げられ、3列目へのアクセスが容易になる。「ドスン」というその勢いにちょっとびっくりさせられるのだが、簡単で合理的な作りではある。



3列目に乗り込んでみると、サイズ的にはエマージェンシー用をわずかに超える、というくらい。ある程度の時間であれば、我慢して乗っていられそうな印象だ。ただし、2列目を元の位置に戻すと3列目パッセンジャーの足先を滑り込ませる空間がなくなってしまうのが惜しいところ。試乗車は大型サンルーフ装着モデルだったので、後方まで光が差し込んでいて閉塞感はなかった。


○2.0L直列4気筒ターボディーゼルの走りは?



コマンダーが搭載するパワートレインは、排気量1,956ccの直列4気筒DOHCターボディーセルエンジン。最高出力は125kW(170PS)/3,750rpm、最大トルクは350Nm/1,750~2,500rpmだ。聞くと、ディーセルエンジンを搭載したジープ車は、日本では今回が初登場だというからちょっと意外である。


エンジンをスタートさせると、クルマの内外には結構な音量でガラガラというディーゼルノイズが聞こえてくる。音質やノイズのレベルとしては、静かさを売り物にする最新の高性能ディーゼルエンジンに比べると一昔前のものという感覚だが、ジープに乗るのであればこれはこれであり、ということもできる。



トランスミッションは電子制御の9速ATで、オンデマンド方式で4輪を駆動する。シフトレバーはオーソドックスなタイプ。その横に搭載するドライブモードセレクターでは「サンド/マッド」「スノー」「オート」の3つが選べる。通常はオートのままでOKだ。その手前には、オフロード車らしく4WDのLOWやLOCKのボタンが配されている。


走り出すと、フラットトルクに乗っかってゆったりと車速が上昇していく様子が、いかにもディーゼルエンジン車らしくてなんともいい感じ。1,870kg(サンルーフ付きは+20kg)の車重に対しては必要十分な350Nmのトルクを1,750rpmから供給してくれるので、動力性能的には決して遅いわけではなく、高速の合流などでもたつくこともない。



足回りはフロントがマクファーソン式、リアがマルチリンク式のサスペンションを採用していて、堅からず柔らかからずの絶妙な加減にセッティング済み。先に紹介したブリヂストンのコンフォート系タイヤの効果もあって、日本国内のスピード領域であれば非常に乗り心地がいいのである。1時間ほど高速と一般道を走り回ってメーターを見ると、燃費は12.4km/Lを表示していた。燃料は軽油なので、お財布にやさしいところも評価できる。


ステランティスジャパンでは2022年8月に新型コマンダーの発売を予告したが、その後の数週間で2,000件以上の問い合わせが入ったとのこと。その内訳は約4割がジープ車のオーナーで、話を聞くとかなり本気で購入を検討している様子が伝わってくるのだという。コマンダーの販売については、まずは上級グレードの「リミテッド」(597万円~)を導入する方針。サンルーフ仕様・パールコート塗装は618.5万円となる。



ただし、ミッドサイズの3列シートSUVといえば、輸入車ではメルセデス・ベンツ「GLB」、日本車では三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」や日産自動車「エクストレイル」など、人気モデルがすぐに浮かんでくる。厳しい勝負が待ち受けているのは間違いない。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)