2022年10月22日 09:01 弁護士ドットコム
河野太郎デジタル相が今の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を発表した。取得は任意だったカードが、事実上義務化された形だ。日本弁護士連合会(日弁連)はマイナ保険証とする政策に反対声明を出した。ネット上では、突然の方針転換と強制されることへの反発の声が上がっている。
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気になる報道も出ている。SmartFLASHの「マイナカード一体化に大量の反対署名…導入前の説明は『持ち歩き禁止』だったのに『紛失したらどうする?』の声」との見出しの記事が拡散し、Yahooニュースでは1500近いコメントがついた。
記事をよく読むと、マイナンバーの通知カードを大切に保管するよう、当初言われていたことを説明しているが、見出しの影響もあってか、ヤフコメなどでは、マイナンバーカードについて「当初は国民に所持を強制することは無く、常時持ち歩くようなものでもないと明言していた」「自宅に厳重保管するものと記憶していました」と解釈している人も見受けられる。一方で「本当に持ち歩き禁止だったの?」と疑問視する声も。
2016年から交付されたマイナカードの最初の運用ルールは「持ち歩き禁止」だったのか。総務省に聞いた。(ライター・国分瑠衣子)
総務省の担当者は「マイナンバーカードの運用は制度がスタートした2016年当時から変わっていません。カードは公的な本人確認書類として使えるので持ち歩き禁止ではありません。ただ、マイナンバーが書かれている裏面は安易に人に見られてはいけないという運用です」と話す。
マイナンバーは日本に住民票がある全ての人に付番される12桁の番号のこと。マイナカードは申請があった人に限り市区町村が交付している。マイナンバーカードの表面には氏名や住所、生年月日、顔写真などがあり本人確認の機能がある。裏面には12桁のマイナンバーが書かれている。
例えばレンタルショップなどでマイナカードを身分証として提示した場合、店側は表面のコピーはOKだが、カードの裏面のコピーや書き写しは法律で禁止されている。
また、マイナンバー法第19条では「マイナンバー法に書かれている場合にあたらないところでは、他人に特定個人情報を提供してはいけない」と定めている。自分の番号を他人に提供したり、カード画像をネットに載せるなど不特定多数の人の目に触れる行為は禁止されている。
マイナカードのICチップには「電子証明書」があり、これで本人確認することもできる。ICチップはマイナポータルや、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書などを取る時に使う。
ではマイナンバーを第三者に見られるとどうなのか。悪用が心配だが総務省は「マイナンバーカードの紛失などで他人に見られたからといって個人情報が漏洩したり悪用されたりといったことは困難です」と説明する。
国の説明によると、例えばカードを落としてしまった場合、カードを拾った第三者が悪用しようとしても、顔写真入りのためなりすましはできない。ネットでのアクセスはどうか。ICチップの電子証明書には複数の暗証番号を入力する必要があり、一定回数間違うとロックされる仕組みで破ることは難しい。
マイナンバーの役割は、国や自治体がマイナンバーから生成された符号をもとに情報を検索・管理する「検索キー」のようなイメージだ。例えば税務署や自治体はこの符号を用いて個人の収入などを確認できる。ただし、マイナンバーを使える事務は「社会保障、税、災害対策」の3分野に限定されていて、何の事務にもマイナンバーを使えるというわけではない。
マイナンバーカードは制度開始当初からなかなか普及しなかった。国は高額のポイント還元などの〝バラマキ作戦〟でカードを普及させようとしてきたが、それでも勢いは鈍い。交付開始から約6年がたった2022年10月にようやく交付率50%を超えたばかりだ。
任意から義務化という政府の突然の方針転換に対し、「マイナンバーカード持ち歩き禁止」という誤った情報がネット上で拡散してしまうほど、国民の反発感情は高まっていると言えそうだ。