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【ライトノベル最新動向】「ダンまち」シリーズがずらりランクイン! 「アストレア・レコード」シリーズの魅力とは?

2022年10月19日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 大森藤ノによる「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」シリーズがRakutenブックスのライトノベル週間ランキング(10月10日-16日)で大盛況。『アストレア・レコード1 邪悪胎動 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』(GA文庫)が10月15日発売ながら7位に入ったほか、このシリーズの続編や別の外伝、そして2023年1月24日発売の正編の最新刊を含む7冊が25位以内に並んだ。


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 新米冒険者のベル・クラネルがダンジョンのあるオラリオという街に来て、少女の姿をした神様のヘスティアとファミリアを作り、ダンジョンでの冒険やモンスターとの戦いに挑むというファンタジー。冒険者の少女で、剣姫という二つ名を持つアイズ・ヴァレンシュタインに救われ、その強さに惹かれて自分を鍛え上げ、どんどんと強くなっていくベルの成長を楽しんでいたストーリーに、様々な事情を持った仲間が加わり、他のファミリアとの交流や抗争も重なって膨らんでいく物語世界に、大勢が惹きつけられている。


 「アストレア・レコード」シリーズは、ベルがオラリオに来る前に起こった出来事を描いていく前日譚的な作品だ。アプリゲーム『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~メモリア・フレーゼ~』の発売3周年を記念して配信されたシナリオ「偉大冒険譚アストレア・レコード」を、執筆者の大森藤ノが改めて小説に仕立てて全3部作で刊行していく。


 『アストレア・レコード1 邪悪胎動 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』はその第1弾。本編にも登場するエルフの冒険者、リュー・リオンが所属していた【アストレア・ファミリア】の物語で、誰よりも正義感が強くて快活な女性、アリーゼ・ローヴェルを団長に、見かけは大和撫子だが口を開けば悪口雑言が飛び出すゴジョウノ・輝姫らファミリアのメンバーが、オラリオの平和を脅かす闇派閥(イヴィルス)に立ち向かう。


 ここでクローズアップされるのが、「正義」とは何かという簡単そうで難しい問題だ。冒険者たちを狩り、街の住人も傷つける闇派閥の振る舞いは誰が見ても「悪」で間違いない。その闇派閥を討伐するリューたち【アストレア・ファミリア】の行動は、団長のエリーゼが常に標榜する「正義のため」を地で行くものだと言えなくもない。


 ただ、そうした行為を何のために行っているのかを、エレンと名乗る男の神様に問われ、自己満足に過ぎないのではと詰められて、リューは憤りつつ悩みを抱く。後に明らかとなるエレンの“正体”から考えれば、ただの揺さぶりに過ぎなかったのかもしれない。ただ、そうした「正義」を貫き続けたことが後に、正編でもリューの回想とともに示唆される【アストレア・ファミリア】の悲劇を招いたのだとしたら、いったい誰のための「正義」だったのかはやはり気になってしまう。


 『アストレア・レコード1』の中で、腕に覚えがあるだけに競いたがる冒険者たちを、真っ直ぐな考え方で同じ方向にまとめあげるリーダーシップを見せたアリーゼの姿も、熱心な「ダンまち」ファンは後に悲劇に見舞われると知っているだけに、ページを繰る手も重たくなる。楽しげな表紙絵とは裏腹の重たいシリーズだ。


 ファミリアを襲ったそんな悲劇をただひとり生き残り、憎しみと後悔の念を抱えて生きてきたリューが、改めて正しい道を歩み始めるきかっけとなるベルとの出会いと、過去の克服がテレビアニメの第4期となる『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ』の中に描かれることになる。放送は10月1日でいったん終わり、『深章・厄災編』が2023年1月5日から再開となる予定だ。


 それに合わせるように、11月15日にシリーズ第2弾となる『アストレア・レコード2 正義失墜 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』、12月15日に『アストレア・レコード3 正邪決戦 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』が3カ月連続で刊行となる。リューやアリーゼたち【アストレア・ファミリア】の活躍だけでなく、本編にも登場する【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の主要な団員たちがまだ少し若かったころや、アイズが戦いに送り出されてみせる戦いぶりを楽しめそうだ。


 そして、4カ月目の来年1月に登場する『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか18 』で、主人公のベルにとって新たな戦いの舞台が用意される。17巻で宣言された戦争遊技(ウォーゲーム)で、【ヘスティア・ファミリア】はベルの運命をかけて、美の女神フレイヤの下、オラリオでも最強クラスの冒険者を大勢抱える【フレイヤ・ファミリア】と激突する。もうワクワクしか浮かばない最新刊だけに、小冊子付き特装版が8位、通常版が22位と共にランクインして期待の大きさを見せている。


 続く3月には、アイズを中心に【ロキ・ファミリア】の活躍を描くシリーズの最新刊『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリオ14』が登場。小冊子付き特装版が20位、通常版が25位とこちらもなかなかの前人気ぶり。これだけの量を繰り出してきて作者は大丈夫なのかと心配する一方、本編をあまり待たせないで刊行して欲しいという希望も浮かんで、気持ちの持っていく先に困る。なるほど「正義」は難しい。


 ランキング1位は川原礫『ソードアート・オンライン27 ユナイタルリングⅣ』(電撃文庫)、2位は伏瀬『転成したらスライムだった件20』(GCノベルズ)、3位は衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年正編8』(MF文庫J)、4位は佐島勤『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー5』(電撃文庫)と、超人気シリーズ本編の最新刊が並んで強さを見せた。5位はアサウラ『リコリス・リコイル Ordinary days』(電撃文庫)でアニメが終わっても変わらない人気ぶり。続編を早くみたいとの催促か?