2022年10月18日 17:21 弁護士ドットコム
家庭の虐待等で困窮する大学生を生活保護の対象にするよう訴え、署名活動を展開している太田伸二弁護士らが10月18日、厚生労働省に2万6019筆を提出した。
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現在の制度運用では、大学生は対象外となっており、受給するならば休学・退学するしかない状態だ。署名運動は、生活保護制度について議論する5年に1度の審議会に向けて理解を求めている。
提出後に太田弁護士と会見した儚さん(21歳)は、虐待家庭に育ち地方の国立大に進学したが、バイトと学業の両立で休学に追い込まれている。「私たちはマイノリティーかもしれません。でも学びたい人は学んでいいはず。現状をみてほしいです」と語った。
太田弁護士によると、2人は厚労省保護課保護係長と面会し、5分ほど問題点などを説明した。太田氏らは虐待家庭に育ったなどの「極限的な事例」に限ってでも運用改善してほしいと訴えている。
国側は「(大学生は)稼働能力があるけれど活用していない状態とみなされる」ため、特例的な対応は難しいとの認識を示したという。
太田弁護士は「大学生全員に適用してほしいというのは誤解。生活保護を受給するか退学するかという二択を迫られることをなくしたい」と強調した。儚さんも「外的環境によって、選択肢が狭められる。学びたい人が学べる機会均等が国の役目では」と訴えた。
生活保護家庭から進学した場合、世帯分離という手続きがとられる。生活扶助は人数に応じた額のため、実質的に実家の「収入」が減ることになるため、進学を渋ったり本人から搾取する親もいるという。
儚さんも実家から独立したものの、口座を知っている親からバイト代や奨学金を抜き取られる経験をしている。
世帯分離の課題として、別の事例も話題となっている。
熊本地裁は10月3日、世帯分離して看護学校に進んだ孫娘が就職し、収入が増えたからという理由で、祖父母の生活保護を打ち切った県の処分について違法と判断したが、県は控訴している。
太田弁護士は、問題の根底は同じだとし「就学のために世帯分離して収入が増えたから解除していいと読めるとこはないはず。厚労省はもう1回、自分たちでつくった規定を見てほしい」と批判した。