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M!LK、趣向凝らした演出から垣間見えた5人のチームワーク ポジティブなエネルギーに満ちたホールツアー

2022年10月18日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

M!LK(写真=斎藤大嗣)

 M!LKのツアー『M!LK HALL TOUR 2022 満月の夜 君と逢う』が9月10日、東京国際フォーラム ホールAからスタートした。


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 なんともロマンチックなタイトルが掲げられた今回のツアーだが、そのハイライトはいきなりやってきた。1曲目「奇跡が空に恋を響かせた」のイントロが流れ始めると、ステージ上の大きなビジョンに映し出された満月をバックに、佐野勇斗、塩﨑太智、曽野舜太、山中柔太朗、吉田仁人の5人が金色に輝くブランコに乗って降りてきたのだ。着用している衣装にあしらわれたゴールドの装飾と共に、“プリンス”感を全身で表現しながら笑顔で登場。月にぶら下がるブランコで歌うというこの演出には、思わず観客は歓喜の笑みをこぼしていた。地上に降りて歌い出した5人は、優しく手を差し伸べたり、しなやかにステップを踏んだりしながら、み!るきーず(ファンの総称)の視線を釘付けに。みんなが見たいM!LK、その理想を遥かに上回る演出での幕開けだった。


 そこから「Feel Alive」「Brave Saga」「恋がはじまる」、そして「Now Story」と続いたこのオープニングのパートは、ここから始まるんだという期待感やポジティブなエネルギーが伝わってくるような構成に。メンバー同士でアイコンタクトを取りながら立ち位置を移動したり、セットの高低差を効果的に使ったりしながらのパフォーマンスからは、ホールAの広いステージを早くも自分たちらしく、生き生きと使いこなしているような印象を受けた。前回のツアー『M!LK SPRING TOUR 2022 “CIRCUS”』では可動式の階段を取り入れたセットが組まれていたが、今回もきっとたくさんのアイデアやイメージを共有しながら5人で作り上げてきたのだろう。メンバーそれぞれが自信を持って、そしてワクワクしながらこのステージに立っているのだということがムードとしてもしっかり伝わってきた。


 インタールードの映像は、上下真っ白の衣装に身を包んだメンバーが、カラフルなペンキを使ってわちゃわちゃとお互いをペイントしていくというもの。笑い声まで聞こえてきそうなその映像が終わると、そこから抜け出してきたかのような衣装の5人がステージに現れ「ボクラなりレボリューション」を披露。そこから「反抗期を表現して」という無茶振りを受け、「……は!? コーヒーなんて飲めねーよ!」と見事な役者っぷりを発揮して曽野が悪態をついた「反抗期アバンチュール」へと続き、EDMバージョンにアレンジされた「SAY YEAH」では、映像から飛び出してきそうな勢いのどでかいウーファーが視覚的な楽しさを演出。この後に披露された「僕の枕ちょーだいっ!」でもフリル付きの可愛いものからシブい和物、昨年グッズで販売されていたメンバーの写真付きなど、さまざまなタイプの枕が小物として取り入れられていたが、新旧どの楽曲も、アレンジや演出、パフォーマンスなどが愛を持ってアップデートされていることも印象的な前半戦だった。


 最初のMCでは、4年前の夏に行われた『EBiDAN THE LIVE 2018~Summer Party~』で初めてこのステージに立ったことや、その時に新メンバーとして山中と曽野が加入したことなどに触れ、あらためてこの場所で初めてワンマンライブができることへの喜びを語る5人。また、当日は中秋の名月ということで、今回のツアータイトルにちなんで「今日、満月だって気づいた人!?」と塩﨑が客席に向かって問いかける場面もあった。そこから月にまつわるちょっといい話にでも繋がるのかと思っていたが、髪色を変えた吉田の後頭部を月の満ち欠けに例えるというまさかのオチ。翌日が誕生日の塩﨑もイジるだけイジられ、ツアー初日らしいテンション高めのトークが繰り広げられていた。


 そのテンションのまま前述の「僕の枕ちょーだいっ!」、そして「サンキュー!N・D・K!」で修学旅行の真夜中を思わせるように大暴れした後は、満月をバックに「逢いたかったよ」「逢えると信じてた」などのメッセージを伝えるロマンチックなインタールードへ。壮大なインストゥルメンタルが終わると、鮮やかなグリーン&ブラックのセットアップ姿に着替えた山中が登場。感情を込めてソロで歌い出したのは、今日がライブ初披露となる新曲「最愛」だ。4人はそれぞれセットのボックスの中に登場し、歌声を繋いでいく。想い合い、時を重ねていく大切な関係性を「逢い」でも熱く歌い上げ、僕らならどんな困難も乗り越えていけるという強い気持ちを「Over The Storm」で表現。ここでは5人がバキバキのダンスを披露し、塩﨑がバック宙を決め、曽野が噴き上がる炎を操るという映像上の演出も加わるなど、各々の見せ場もしっかり作られていた。自分の中にある光や力を信じて未来を目指す決意を歌った「HIKARI」をパワフルに届け、優しいピンクの月が照らす「月明かりの透明」では再び映像とミックスしながらのパフォーマンス。月が照らし出すさまざまな愛の形ーーまさに今回のツアータイトルに込められた想いが、物語のように表現された中盤5曲だった。


 5人がリモートで行っている夜のミーティングで塩﨑が完全に寝落ちしていた話や、それぞれが飲んでいるステージドリンクなど、M!LKの日常を覗いているような気分になるトークで楽しませてくれたMCの後は、「み!るきーずのみんなと育てていきたい曲」(佐野)だと紹介された「シアワシェイク」を初披露。世界中の言葉で“幸せ”が詰まったこの曲は、思い切りカラフルかつポップな映像と共にパフォーマンスされたのだが、ゆくゆくはアリーナやドームといった巨大な会場で、メンバーカラーのトロッコに乗った5人がみ!るきーずの間を走り回るような演出が実現したらどんなに楽しいだろう。楽曲の振り幅、歌やパフォーマンスのスキル、アーティスト/エンターテイナーとしての魅力がライブごとに高まっているからこそ、そんなイメージが膨らむ時間でもあった。


 フリルのシャツとパンツに着替え、ラスト5曲は銀テープが舞った「ハロー!」からスタート。「かすかに、君だった。」「Don’t think, Jump!」「Around The World」と飛ばしていき、満月が見守ってきたこの夜も、その名の通り「夜明け」へと向かう流れが作られていた。高らかなみ!るきーずの“心の声”は、これまでも、そしてこれからもメンバーの大きな支えとなっていくはず。本編最後、記念すべきメジャーデビュー曲でもある「Ribbon」を心を込めて歌い終えた5人は再び金色のブランコに乗り、天高く舞い上がっていった。


 アンコールの1曲目は、パタパタと回転するランキングボードの映像を使って楽曲が選択されるシステムにより「My Treasure」に決定したのだが、イントロが流れ始めると、ここでもまさかのサプライズが。なんと二手に分かれたメンバーが、正面ではなくサイドに迫り出しているステージに登場し、客席のすぐそばで歌い出すという嬉しい演出が用意されていたのだから、盛り上がらないわけがない。その後のMCでは今日のオープニングとエンディングについての話が始まったのだが、吉田が実は高所恐怖症ということで、今後“フライング”などの演出をどうするかなどについてのミーティングに移行。次々と出てくる奔放なアイデアに会場は大爆笑となっていたが、なるほど、こういうネタのようなトークが次なる“何か”に結びつくのかもしれない。


 11月30日にはニューシングル『STARS』をリリースし、来年1月に『M!LK 里帰りイベント ~僕たちここで生まれました~』を開催することも発表。サービス精神旺盛な5人が故郷の街のステージに立つーーもうそれだけでワクワクするようなお知らせに、客席は歓喜の笑みで包まれた。アンコールの最後は、覚悟を滲ませるような表情の佐野が「M!LK、時代作っていこうぜ!」というメッセージを発して披露された「ERA」。年齢も性別も関係なく“同じ今を生きる仲間達”に向けられたM!LKの思いが、あらためて心に響くパフォーマンスだった。


 最後の挨拶で塩﨑は「今日がすごく楽しみだった。ぜひ僕の地元にも来てください」と笑顔で手を振り、曽野は「初めてM!LKとして立ったこのステージに、ワンマンで立つことができた。これからも階段を1段飛ばし、2段飛ばしで進んでいくので応援よろしくお願いします」と挨拶。山中も4年前を振り返りつつ「こうして5人で立てて本当に嬉しい。みんな笑ってくれてて、すごく幸せな時間でした」と嬉しそうな表情だ。「ライブ前は不安に思うことが多いけど、今回は心から楽しみに思えた。M!LKも佐野勇斗もステップアップしてんじゃね? と思える1日でした」と佐野が少しだけ照れ臭そうに胸を張ると、リーダー吉田は「みんなでもっといい景色を見たい。これからも焦らず頑張っていきたいと思います」と感慨深そうに締めくくっていた。


 初日ならではの心地よい緊張感が顔を出しつつ、初日とは思えないさすがのチームワークで作り上げられたこの日のライブ。本レポート公開時には愛知公演、大阪公演も経て5公演すべてが終了しているが、M!LKの5人にとっても、み!るきーずにとっても、きっと最高の景色を運んできてくれたツアーになったはずだ。(山田邦子)