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STUTS、米津玄師、ロレイン・ジェイムス、TSHAら、今週のおすすめ楽曲をレビュー

2022年10月14日 13:00  CINRA.NET

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Text by CINRA編集部

毎週更新のCINRAプレイリスト「Songs We Dance To」。ロック / ポップ、インディ、ヒップホップをはじめ、実験的なエレクトロニックミュージックからK-POPまで、ジャンルレスに選曲したプレイリスト(2022年10月12日週更新)から、編集部員が特におすすめしたい楽曲を紹介します。

Whatever The Weatherとしても今年デビュー作をリリースし、11月には来日を控えるロレイン・ジェイムスの新作より。本作は1990年に亡くなったゲイのブラックアメリカンの作曲家、ジュリアス・イーストマン(詳細は原雅明さんによる『サンレコ』の記事を)の“Stay On It”や“Femenine”、“Crazy Nigger”、“The Holy Presence of Joan d'Arc”といった楽曲を再解釈、再創造したアルバムとあってか、Hyperdubからリリースとなった『Reflection』(2021年)といった作品と質感はかなり異なる。

ジュリアス・イーストマンがミニマルミュージックの作家だったこともあり、シンセサイザーのシーケンスひとつとってもミニマルな精神を感じるし、一方で、この“Enfield, Always”においてはアコースティックな質感のリズムトラックのなかでハイハットの刻みが不自然に揺らぐ瞬間もあったりするなど、どこか即興演奏的な趣もある(Phantom LimbのA&Rから提供されたというMIDIデータ由来のものかもしれませんが)。レコード屋の棚でいえばノイズ/アヴァンギャルドあたりに置かれそうな作品で、これを自身の名義で発表するところに明確な意図を感じる。(山元翔一)

STUTSの作品でもお馴染みなメンバーによるマイクリレー。総勢8人! タイトルの通り「表現すること」「表現せずにはいられない」というテーマを体現するような歌い手に声をかけたのだという。8人がかわるがわる登場する楽しさ、とくにラップがつづくなかに北里彰久の歌とメロディが入る瞬間がとても気持ちよい。マイクリレーでわくわくする感じは、“GET UP AND DANCE”を聴いたときのよう。ライブがとても楽しみな曲で、観客の歓声や盛り上がりを想像しながら聴くのもよいです。(川浦慧)

先日放送が開始された藤本タツキ原作のアニメ『チェンソーマン』のオープニング主題歌。楽曲中にモーニング娘。“そうだ!We're ALIVE”がサンプリングされていたり、そのことにつんく♂が反応したり、常田大希が編曲で参加していたりと話題は尽きないのだが、米津玄師がこの楽曲のジャケットビジュアルとして自ら描いたチェンソーマンのイラストも話題だ。

この楽曲が持つ、悪酔いしそうになるほどの異常な疾走感、フル音源で聴くことができる白々しくも壮大で、痛切なストリングスパート(ここでの米津の歌声はL'Arc~en~Cielのhydeを想起させる)、狂ったように繰り返される「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」のフレーズ。鬱憤を晴らすようなシャウト混じりの米津の声には、錆びついた機械のようなボイスエフェクトがかけられている。この楽曲は、米津(と常田)が解釈して3分13秒に圧縮した『チェンソーマン』という作品そのものなのではないか。前述したイラストは、その象徴のように見えた。(佐伯享介)

ロンドンを拠点に活動するプロデューサーで、FoalsやThrowing Snow、HONNE、Qrionらのリミックスも手がける注目のアーティスト・TSHAが、Ninja Tuneより1stアルバム『Capricorn Sun』を発表。R&B、ブレイクビーツ、ガラージ、ハウスなどさまざまな音楽性を内包するフロアユースな楽曲が揃う本作には、パンデミックなどの世界的な出来事と、自身の家族間に起きたパーソナルな出来事、個人的な葛藤の影響が反映されているそう。本人が「他の曲よりも私自身を表していると思う」と語る“Anxious Mind”は、タイトルに象徴されるようなメランコリックな雰囲気が印象的で、TSHAの多面的な魅力を感じさせる一曲。(後藤美波)

そのほか、MAMAMOO、5lack、Dry Cleaning、Alvvays、池田亮司、ロバート・グラスパー、Måneskin、SAULT、えんぷていなどの新曲30曲を追加。CINRA編集部がいま聴いている曲をセレクトするプレイリスト「Songs We Dance To」は、Apple Music、Spotifyで毎週水曜に更新中。