2022年10月13日 10:41 弁護士ドットコム
会社員のサトウさんが交差点に向かって歩道を歩いていると、隣の車道で驚くような光景を目撃した。
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交差点の左レーンで信号待ちしていたバイクの運転者が、バイクから降りて、車体を手で押しながら、そのまま交差点を「左折」したのだ。
運転者は左折が完了すると、またバイクにまたがり、颯爽と走り去っていった。
あたかもバイクから降りている間だけ、自分は「運転者」ではないとでも主張するような行為に感じる。何か法的に問題ないのだろうか。元裁判官の片田真志弁護士が解説する。
——この運転者の行為は道路交通法などに違反するでしょうか。
運転免許をお持ちの方には割と知られている話ですが、道路交通法上、バイクを降りて押して歩いている場合、「歩行者」と扱われることになっています(同法2条3項2号)。
つまり、この問題は「歩行者」が車道上を歩いて左折した場合に規制があるかという問いになります。
歩道と車道が分離されている道路では、歩行者は歩道を通行しなければなりませんから(同法10条2項)、歩道があるのに車道上をバイクを押して歩いている状態は、通行区分違反になります。
通行区分違反の場合、ただちに罰則が適用されることはありません(それ自体は犯罪ではありません)が、警察官が違反者に歩道を通行するよう指示したのに、その指示に反して違反を続けた場合には2万円以下の罰金または科料が科されます。
なお、これは自動二輪でも、いわゆる原付(原動機付自転車)も、押して歩いている場合には歩行者とされることになっています。
——「左折」の際、バイクのエンジンはかかっていたままでした。エンジンがかかっている状態での「押し歩き」でも歩行者になるのでしょうか。
エンジンをかけていると歩行者として扱われないという解説を見かけることがありますが、法律に明確に規定されているわけではありませんし、そのような解釈が確定しているわけでもありません。
ただ、エンジンがかかっていると「押して歩いている」といえるかどうかに疑いが生じ、場合によっては、運転行為の一部とみなされるリスクがあることは間違いありません。もし運転行為とされると、対面信号が赤なのに車両が停止線を越えて進入すれば、それだけで赤信号無視として刑罰を受けることにもなるので注意が必要でしょう。
故意とみなされれば、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科され、過失では10万円以下の罰金です。
【取材協力弁護士】
片田 真志(かただ・まさし)弁護士
弁護士法人古川・片田総合法律事務所 代表。大阪弁護士会所属。2004年大阪地裁にて裁判官に任官。2014年に退官して弁護士登録。元・刑事裁判官の経験を活かし、刑事事件にも力を入れている。
事務所名:弁護士法人 古川・片田総合法律事務所 大阪梅田事務所
事務所URL:http://www.fk-lpc.com/