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動物たちが繰り広げる物語をミニチュアで 温かいスチームパンクなジオラマ

2022年10月12日 07:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

動物たちが繰り広げる物語をミニチュアで 温かいスチームパンクなジオラマ

 現代のような世の中ではなく、レトロフューチャー的な世界観が魅力のスチームパンク。登場する機械はソリッドな冷たさよりも、どこか温かな質感を有しています。


 そんなスチームパンクな世界をミニチュアジオラマ作品にしているのは、エンチャント工房さん。魚をモチーフにした潜水艦や研究室には、どんな物語が隠れているのでしょう。


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 昔から小さいものが好きで、高校時代からミニチュア作りをしていたというエンチャント工房さん。モノづくりの楽しさを伝えることと、見てくれた方に驚きと現実を忘れられるような時間を過ごしてもらうことを念頭に、作品に取り組んでいるのだといいます。


 幅広い作風が特徴でもありますが、オリジナル作品では「かわいらしいファンタジーなものを意識して作っています」とのこと。登場するキャラクターたちもかわいい動物で、一貫したシリーズとしてつながっているのだそう。


 ジュール・ベルヌがきっかけで好きになった、というスチームパンクの世界。魚をモチーフとした作品については、昔から海の生き物が好きで、よく魚の絵などを描いていたのが発想の原点になっていると話してくれました。


 素材は各種の粘土やレジンが最近は多いそうですが、そのほかにも紙や空き容器、針金などと多種多様。「ネコ博士の植物ラボで起きたキセキ」という作品を例に、作り方を教えてもらいました。


 エンチャント工房さんのオリジナル作品には、必ず背景となる物語が混在します。この作品では、ネコ博士の植物ラボにいるヒツジさんがお腹を空かせ、屋根の上にある草を食べようと配管をよじ登っていたところ、足を滑らせて落ちてしまいました。


 そのはずみで試験管に入っていた薬剤がこぼれて混ざってしまい、そこから偶然にも草が生えてきた……というもの。空腹に負けてヒツジさんはその草を口にしてしまいますが、どうやら害はなく、お腹もいっぱいになったようです。


 この作品に使われているのは、ほとんどが100円ショップで売っているもの。ベースとなる植物ラボの建物は、ガラス試験管風の一輪挿しとそのフレームです。


 壁面は白のカラーボード。アクリルガッシュで着彩すると同時にアクセントをつけ、塗り壁のような表面仕上げを再現します。


 机や椅子といった家具類は薄いバルサ材で天板を作り、足はつまようじを四角く削ったもの。扉や窓枠もバルサ材で、これもアクリルガッシュで着彩していきます。


 実験器具や配管、煙突といったものは、空き容器やプラモデルのランナー(パーツ枠)、ストローなどを利用。中に入っている薬剤は色付けした紫外線硬化レジンを流し込み、固めています。


 パーツが出来上がったら、ひとつずつ内部に作りつけていきます。徐々に部屋の内部が充実していき、研究室っぽさが出てきました。


 ネコ博士のフィギュアを最後に配置して、完成。ヒツジさんが食べたがった屋根上の植物は、一輪挿しを転用した大きな培養槽から成長したものとなっています。


 偶然とはいえ、新たな植物を生み出してしまったヒツジさん。ネコ博士はこの現象をうまく再現して、論文にまとめることはできたでしょうか……?


 エンチャント工房さんは作品を発表し、メイキング動画をYouTubeで公開するほか、ミニチュア作りのワークショップ(体験教室)も不定期に開催しています。ものづくりの楽しさを少しでも多くの人に、という思いから続けているそうですが、そこで受講生の皆さんが生み出す作品にも驚かされることが多いのだとか。


 「体験される方の作品が、毎回私の予想を超えたものが沢山で感動します!子どもたちの純粋な発想が、見ていて楽しいですし、とても勉強になります」


 次回、エンチャント工房さんが参加するイベントは、名古屋市のポートメッセなごやで2022年12月3日・4日に開催される「クリエーターズマーケットvol.47」とのこと。出店ブースなど、詳しい情報は今後Twitterにて発表されるそうですので、チェックしておくといいかもしれません。



<記事化協力>
エンチャント工房さん(@enchantkobo)


(咲村珠樹)