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【漫画】惑星の引力を利用して飛行する宇宙探査機、その運命は? 創作漫画『スイング・バイ』が面白い

2022年10月11日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 天体の運動万有引力を利用する宇宙探査機の飛行法「スイング・バイ」。これを題材とした短編漫画『スイング・バイ』が2022年9月にTwitterで公開された。


漫画『スイング・バイ』を読む


 最後の探索を控えた探査機・カッシーニは、これまで共に過ごしてきた衛星・タイタンにスイング・バイを断られてしまう。異なる思いをもつふたりが再び“踊る”ことはできるのかーー。


 作者の栗花ちまきさん(@kurihanachimaki)が漫画を描きはじめたのは子どものころ。1度は漫画を描くことから距離を置いていたものの、とある出来事をきっかけに再び創作の道を歩むようになったという。本作を創作したきっかけ、漫画を描くことの魅力など、話を聞いた。(あんどうまこと)


ーー宇宙に関する出来事の壮大さやロマンチックな一面を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。


栗花ちまき(以下、栗花):もともと宇宙が好きで、TV番組のなかでカッシーニと衛星・タイタンの「スイング・バイ」を目にしました。累計100回以上の接近通過をしたり、タイタンの元を離れ最後にカッシーニが土星へ旅経つ様子が「お別れのキス」と呼ばれていたりなど、恋愛にも似た奇妙な友情を感じ号泣してしまいました。


 そんなカッシーニとタイタンの物語を見るなかで、まるでふたりがダンスしているように見えたのです。そんな情景を漫画創作コミュニティ「コルクラボマンガ専科」に参加したことをきっかけに本作を描き上げました。


ーー実際の出来事をひとつの作品として表現するために苦労したことは?


栗花:限られたページのなかで漫画として描く出来事を取捨選択することがむずかしかったです。コルクラボに参加する前にも「スイング・バイ」を漫画として描いていたのですが、ひとつの物語にまとめることができず頓挫してしまいました。コルクラボでは漫画として絶対に仕上げようと思っていましたね。


ーー印象に残っているシーンを教えてください。


栗花:ふたりがダンスをするシーンは1番描きたかったものなので印象に残っています。またカッシーニが「一緒に踊ってくれますか?」と話すダンス前のシーンや、タイタンがカッシーニを叩く前に「地球と土星が全てでしょう!」と話すシーンは泣きながら描いていました。


ーー感動を覚えた出来事を漫画として描き上げたときの心情を教えてください。


栗花:実際の出来事とは別物ができてしまったと感じましたね(笑)。事実に基づいて描いたものの、事実を元ネタとした私の中での「グランド・フィナーレ」になってしまったというのが正直な印象です。


 ただ本作をきっかけに「グランド・フィナーレ」をはじめとする出来事に興味を抱いた方がいらっしゃったことはうれしかったです。


ーー栗花さんの思う宇宙の魅力とは?


栗花:私自身わからないことがわかることに魅力を感じていて、とくに宇宙はその最たる例だと感じています。とてもスケールの大きい世界なので、思わず笑えてしまうほど訳の分からないことが、少しずつ明らかになっていくことに魅力を感じますね。


 宇宙はひとつのものから広がってできた世界であるので、宇宙を知るなかで私たちのルーツを知れることも楽しいと感じています。


ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。


栗花:小学生のころに漫画雑誌『りぼん』を夢中になって読み、気が付いたら自分で漫画を描くようになっていました。そのあと漫画を描くことはやめてしまったのですが、ここ数年前から「死ぬまでに漫画を描きたい」と思うようになりました。


ーー「死ぬまでに漫画を描きたい」と思ったきっかけは?


栗花:はじめて身近な人の死を経験したとき、このまま漫画を描かないで死ぬことは嫌だと思ったんです。ちゃんと漫画を描いて「漫画を描いてよかった」と思いながら死にたいと思いましたね。


ーー漫画を読むだけでなく、漫画を描くことの魅力とは?


栗花:集中できるんですよね、漫画を描いているときは。集中できているときは漫画以外のことを忘れることができ、それが漫画を描くことの魅力かなと思っています。


 ただ漫画という表現方法にこだわりがあるというよりも、私にとって頭の中で考えたものを出力するために向いていたのが漫画だったんです。原稿作業はあまり得意ではありませんが、多くの人に読んでもらえるようになるべく綺麗なかたちを目指して漫画を描いています。


ーー今後の目標を教えてください。


栗花:妄想したり、頭の中の自分が良いな!と思うものを表現することが好きだと感じています。妄想を出力するために私には漫画が適しているので、漫画の題材となるアイデアが頭の中で湧いてくる限りは漫画を描き続けたいと思っています。


 その一方で漫画にこだわらなくてもいいのかなという思いもあります。自身の妄想を出力するためにより適した方法があるのなら、漫画とは異なる方法で表現していきたいとも考えていますね。