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けっこう売れてたフォルクスワーゲン「Tロック」に「R」が登場! 実力は?

2022年10月10日 12:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
フォルクスワーゲン(VW)はSUV「Tロック」(T-Roc)にマイナーチェンジを実施し、高性能バージョンの「R」を追加して発売した。Tロックは昨年、輸入SUVで第2位の販売台数を記録した人気車種。新たに追加となったRの実力はどれほどなのか、公道試乗で確かめてきた。


○日本で2番目に売れていた輸入SUV



TロックはVWで2番目に小さいコンパクトサイズのSUV。登場からわずか4年で世界累計100万台が売れた同社の稼ぎ頭の1台だ。日本では2021年に7,000台以上を販売。輸入SUVではVWで最も小さい「Tクロス」(T-Cross)に次いで第2位の人気モデルとなった。



VW車に共通するまじめで高品質なつくりと日本での使用にぴったりなサイズ、高速道路で見せてくれる胸のすくような走りなどが評価されての人気だとは思うが、今回のマイナーチェンジでは何が変わったのか。そして気になるのは、高性能バージョン「R」モデルの走りだ。湘南周辺の公道で2台を試してきた。

○内外装をアップデート



全長4,250mm、全幅1,825mm、全高1,590mm、ホイールベース2,590mmという新型のエクステリアについては、”顔”となる部分に手が入った程度だ。VWエンブレムをセンターに取り付けたグリルには、全車LEDとなった左右のヘッドライトを横一直線に結ぶLEDストリップを装着。バンパー左右にある六角形の枠内にはデイタイムランニングライトを取り付け、今どきのクルマらしく華やかさが増している。


一方のインテリアについては、400万円クラスのクルマにしてはそっけないほど樹脂部分が目立っていた前期モデルに比べると高級感が増した。ソフトパッドを多用したダッシュボードやドアのトリム部分、ピカピカしないマットなアルミ調の加飾パネルを見れば、質感の高さが感じられるはずだ。デジタルメータークラスター「デジタルコックピットプロ」の全車標準化、フローティングタイプで8インチから9.2インチにサイズアップしたセンターディプレイ、エアコンの操作パネルのタッチパネル化など、先進的な雰囲気を感じる部分も増えている。ステアリングも最新デザインのスマートなタイプになった。


走りは基本的に変わっていないようだ。搭載するエンジンは最高出力110kW(150PS)/5,000~6,000rpm、最大トルク250Nm/1,500~3,500rpmを発生する直列4気筒の1.5Lガソリンターボエンジン「1.5TSI Evo」と、最高出力110kW(150PS)/3,500~4,000rpm、最大トルク340Nm/1,750~3,000rpmを発生する直列4気筒の2.0Lディーゼルターボエンジン「2.0TDI」の2種類。7速DSGトランスミッションと組み合わせて前輪を駆動する「TSI」と「TDI」は、マイルドハイブリッドなどの電気の力は使っていないものの十分によく走るし、VW車らしくかっちりとしたボディや少し硬めの足回りのセッティングがきちんと伝わってくる。十分な「完成品」として、誰にでもおすすめすることができるクルマだ。


○0-100km/h加速4.9秒の「R」を試す



電動化や環境性能が叫ばれる現在においても、やっぱりクルマ好きは「R」の文字に弱い。どうしても高性能モデルに惹かれてしまうのは仕方のないところだ。TロックRは2022年11月に本国でデビューしていたが、マイチェンのタイミングでついに日本にも入ってきた。

パワートレインは「ゴルフR」(320PS)よりわずかにデチューンされた最高出力300PS/5,300~6,500rpm、最大トルク400Nm/2,000~5,200rpmの直列4気筒2.0Lガソリンターボ「2.0TSI」に7速DSGトランスミッション(湿式)を組み合わせたもの。シリーズ唯一の4輪駆動となる「4MOTION」システムにより0-100km/h加速4.9秒、最高速度250km/hをマークする。


エクステリアでも高性能をアピールしてくるのがRの特徴だ。フロントバンパーはエアインテークの吸入量を増やした形状に。リアには4本出しマフラー(オプションでアクラポビッチ製チタンエキゾーストを用意)が輝く。ほかにもグリル、リアハッチ、左右フェンダーの「R」バッジ、19インチ大径アルミホイール、Rのロゴが入ったブルーの大型ブレーキキャリパーなど、ツボを押さえた数々の専用パーツで“武装”していて迫力は十分だ。


インテリアではRロゴ入り専用シートやステンレス製ペダルのほか、Rボタン付きのマルチファンクションステアリングホイール、4MOTIONアクティブコントロールなどを装備することで差別化を図っている。


さっそく走ってみると、専用サスペンションによって20mm低くなった車高とプログレッシブステアリングにより、ハイスピードでも思い通りに小さなボディをコントロールできるのが楽しい。SUVタイプなので少しアイポイントは高い(ゴルフより20mm高い)のだけれども、ステアリングの「R」ボタンを長押しして走行モードを「レースモード」にしておけば、排気音は低く太くなり、ボディの動きはスポーツカーそのものという感じに変化するのがはっきりとわかる。レースモード選択時は「ESC」(横滑り防止装置)と駆動トルクが最適の状態で、最大のトラクション性能が必要になるサーキット走行などでもベストパフォーマンスが発揮できそうだ。


パドルシフトが使えるので、シフトのアップ・ダウンは自由自在。エンジン回転数が5,000rpmを越えたあたりで聞こえてくる2.0TSIの快音はとても魅力的で、少し高い買い物をしたことを全く後悔させないし、「純エンジン車を手に入れて本当によかった」とオーナーを満足させてくれるはずだ。



ちなみに筆者は、過去にVWの「ゴルフ3」(2.0L直4)を所有していて、次の乗り換えとして「ゴルフ3 VR6」(2.8L V6)を手に入れたことがあったのだが、ノーマル車にはないハイパフォーマンスをそのままのボディでも楽しめるという点では、今回のTロックでも構図が同じだなと思った(当たり前だが)。



TロックRを実際に手に入れようとすると価格は600万円オーバーとなり、同じ「MQBプラットフォーム」を採用するアウディ「SQ2」(300PS)とガチンコで被ってしまう。ただし、標準でフル装備状態のTロックと同じレベルにするには、SQ2だと100万円近いエクストラコスト(オプション代)がかかるということだから、価格面でのアドバンテージはVWにありだ。



実車を見たり試乗したりする前の段階で、TロックRにはかなりの数のオーダーが入っているとのこと。そういう話を聞くにつけ、VWの高性能モデルに対する評判や信頼感がしっかりと伝わっていることがわかる。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)