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新米も美味!大地の芸術祭で秋のアート旅

2022年10月03日 10:01  オズモール

オズモール

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◆終了まであと1カ月半! 秘境・秋山郷「旧大赤沢分校」の制作の裏側をチラ見せ?「大地の芸術祭」広報スタッフ便りvol.02

新潟県十日町市・津南町の里山で11/13まで開催中の「越後妻有 大地の芸術祭 2022」。ピカピカの新米も楽しめる秋シーズンがスタートした現地から、広報スタッフ・山口さんよりお便りが届きました。普段は見られない制作過程から地元の人々との交流まで、大地の芸術祭の裏側をレポートする2回目は、越後妻有の中でも秘境of秘境の秋山郷からお届け!




◆「大地の芸術祭」スタッフレポート~秘境に佇む「旧大赤沢分校」の制作の裏側

秘境にたたずむ旧小学校校舎が新しい作品会場に
初の作品会場となった、秋山郷・大赤沢集落にある「旧津南町立津南小学校大赤沢分校」。ここはあまりの雪深さに国から義務教育を免除された歴史を持つほどの場所(昭和11年義務教育免除地解除)。それでもなんとか子供たちに教育を受けさせようと、120年前に集落が寺子屋をつくり、それが現在の大赤沢分校へと続いていきます。

しかし過疎高齢化とともに30年前から児童数は1桁にまで減少し、2011年に休校、2021年に廃校へ。そんな旧大赤沢分校での作品制作を通して、秋山郷のディープな世界をご紹介します。










◆◆山本浩二「フロギストン」

左上/北川フラム(左)と作家の山本浩二さん(右) 右上/旧大赤沢分校の壁に貼られた児童数の推移 下/採集した木を配置していく作業
越後妻有の多様な植生をみせる作品
2021年2月の大雪の中、視察に訪れたのは、作家であり、大学教授、僧侶でもある山本浩二さん。大地の芸術祭総合ディレクターの北川フラムとともに、旧大赤沢分校へ視察&集落へのご挨拶に。

「フロギストン」というこの作品は、越後妻有の多様な植物を採取し、炭化彫刻という手法で記録するもの。大学の教え子たちとともに秋山郷に通い、1年かけて準備をしてきた山本さん。2月からはトチノキやブナ、ミズナラといったさまざまな倒木を採集し、会場となる教室に時間をかけて配置していきました。



「フロギストン」Photo/Kioku Keizo
作品名「フロギストン」とは、ものが燃えるという不可解な現象を説明するため18世紀初頭に考えだされた仮想物質の名前から。台座には各彫刻に使った木材を利用しています。教室や廊下全体に展開され、まるで越後妻有の原生林の中を散策しているかのよう。

秋山郷のトチ(栃)の原生林が壁一面に拡がる教室も。秋山郷にとってトチノキ(栃の木)は重要な木であり、かつての教室に再現された恵みの山。秋山郷の深くて厳しい自然の風景に溶け込む展示をつくりあげました。


◆◆松尾高弘「記憶のプール」「Light book - 北越雪譜 -」

上/物品を撤去する松尾さんとこへび隊 下/職員室の塗装作業
50年前の記憶をモチーフにした土のプール
松尾さんは2作品を展開。視察の際、50年前に集落が子供たちのために自力で作った“土のプール”の写真を見つけ、感銘を受けた松尾さんはそこからプランを考案します。

制作は春からスタートしました。展示する職員室と理科室で、芸術祭ボランティア「こへび隊」と物品の撤去から開始、すっきりとした部屋を今度は黒く塗り進めます。





「記憶のプール」Photo/LUCENT
そして、50年前の旧大赤沢分校の記憶を蘇らせるような、土のプールが完成しました。部屋の中央に設置されたプールのミニチュアを覗き込むと、当時の大人や子供たちの情景が、プールの底から光のホログラフィーによって浮かび上がります。またかつての黒板には当時の記録写真などがコラージュされていて、その時代を追体験できる空間構成になっています。50年前の小学校の象徴として設置された土のプールと教室全体を使って当時の記憶を蘇らせる、松尾さんらしい光のインスタレーションです。




「Light book - 北越雪譜 -」Photo/LUCENT
もうひとつの作品「Light book - 北越雪譜 -」は、越後の雪国の暮らしを描写した江戸時代のベストセラー『北越雪譜』がモチーフ。ページをめくると、描かれた挿絵が次々に浮かび上がります。書籍として今でも十分面白い『北越雪譜』。大地の芸術祭では、越後妻有が大事にしてきた暮らしを伝えるものとして、度々モチーフになる重要な書物です。


◆◆深澤孝史 特別企画展「秋山生活芸術再生館 ー田口洋美 秋山郷マタギ狩猟映像上映ー」

 
秋山郷のマタギ文化を作品に
会期直前に追加プランが浮上。深澤さんに依頼し、次回2024年に向けた調査報告的な形での展開が決まりました。

狩猟を生業とするマタギが今も活躍する秋山郷。狩猟文化が地域の重要な要素だと感じた深澤さんは、今年の2月頃からリサーチを始めました。まずは秋山郷で30年以上マタギ文化の研究を続ける、東北芸術工科大学の田口先生を訪ねて山形県へ。そこで見せて貰った貴重な狩猟映像をお借りして上映することになりました。

さらに、マタギの方など集落にお話を聞きに回ります。実際の制作は7月から開始し、7月末からの公開に向けて、会場となる体育館で急ピッチで制作が進められていきました。




上/熊の毛皮があしらわれた入口 下/映像の一部 Photo/Kioku Keizo
会場で見た30年前の映像は衝撃的でした。指示するリーダー、熊を追いつめるセコ(勢子)、射手など数人で山に入るマタギの姿。撃たれて雪山を転げ落ちる熊。それをズルズル運ぶマタギ。特に解体して胆のうを取り出すシーンは目が離せません。

毛皮で身体を温め、肉を食べ、昔は血もその場で飲んで薬とするなど、山の神様がもたらす恵みとして余すことなく生活に利用したそうですが、なかでも熊の胆のうは約3.75gで7万円とも言われた貴重で万能な漢方薬でした。そんな熊の生態を知り尽くしたマタギを鮮明に捉え、今では失われた狩猟技術や解体前の儀礼を撮影した貴重な映像です。他にも狩猟道具や熊の骨の展示など、ディープな秋山郷の世界へと誘われます。

今後、山の生活と芸術が交差する芸術祭の新たな拠点となる旧大赤沢分校。きっと今までにない体験ができるはずです。秘境・秋山郷でお待ちしています。


◆まだある!秋の大地の芸術祭のお楽しみ

うぶすなの家/「お母さんが作る季節の小鉢と妻有ポークの煮豚&車麩の山菜だれ」(土日祝営業/要予約) Photo Yanagi Ayumi
ピッカピカの新米&お母さんたちのとびきりの手料理をお届け
越後妻有の棚田でとれた魚沼産コシヒカリの新米をぜひご賞味あれ。とれたての新米&お母さんたちが作るとびきりの料理はスタッフ人気も絶大。「うぶすなの家」や「越後まつだい里山食堂」など、アート空間で食す芸術祭ならではのスペシャルランチはお見逃しなく!