2022年10月01日 07:41 弁護士ドットコム
コロナ禍で広がった在宅勤務。交通費は実費精算に切り替わった企業も多そうですが、弁護士ドットコムには「通勤定期券代をもらっていたのに、定期券を買っていなかった」という相談が寄せられています。
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電車通勤を申請し、通勤定期券代をもらっていました。ただ、ここ一年間はコロナで在宅勤務が多かったことと妊娠したため、定期券を購入せず、車と電車を併用してました。
休職に入るので、会社から6カ月定期券の払い戻しをして証明書を提出するように求められ、調べるうちに事の重大さに気づきました。ちなみに、電車通勤よりも自動車通勤のほうが支給額は高くなります。
詐欺罪や横領にあたるのでしょうか。
これは通勤定期券代が「賃金」にあたるか、または、会社が「業務費」として実費の精算をしているにすぎないのかによります。
就業規則などにより交通費の支給基準が定められているかぎり、「賃金」ということになりますので、実際には、定期券を購入せず、自動車通勤をしていたとしても、返還の必要はなく、会社に損害もないので、詐欺罪や横領罪を構成することはありません。
一方、交通費の支給基準がどこにも明示的には定められておらず、単に実費相当額の交通費を支給するという運用がなされているだけという場合は、賃金にはあたらず、業務費とされる可能性が高いでしょう。
この場合、あくまで実費の支給なのですから、実際に使用しなかった交通費相当額は返還する必要があります。にもかかわらず、電車通勤をしていたなどと虚偽の申告をしてこれを返還しない場合には、会社に対する詐欺罪を構成する可能性があるでしょう。
【取材協力弁護士】
大部 博之(おおべ・ひろゆき)弁護士
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。主に企業法務、訴訟を扱う。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/