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残業が多くうつ病で休職に、辞める場合は「会社都合退職」になりますか?

2022年09月19日 08:11  弁護士ドットコム

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働き方が原因でうつ病を発症し退職する場合、「自己都合退職」と「会社都合退職」のどちらになるのでしょうか。


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弁護士ドットコムにはうつ病を発症した男性から「原因が仕事にあることから、会社都合にて辞めたい」という相談が寄せられました。



●【相談】ブラック企業でうつ病に

現在、正社員として7年半ほど勤務していますが、うつ病のため休職を推奨され、10月から休職することになりました。



病院には1年半ほど前から通院しており、体調が悪くなるトリガーとなったのは残業が多く負担となったためです。なにか具体的な出来事があったわけでなく、日々の積み重ねで体調が悪くなったと認識しています。



会社は監査で、残業が多いなど指摘が入っており、労基署に指導を受けているような会社です。今のところ休職して復職する気にはなれません。病気になった原因は会社にあると感じており、会社都合で辞めたいと思っておりますが現実的に難しいのでしょうか。



●【回答】労働者側の都合による離職か、会社側の都合による離職か(江上裕之弁護士)

——自己都合退職と会社都合退職では、どのような違いがありますか?



自己都合退職とは、いわゆる一身上の都合による退職など労働者側の都合による退職です。これに対し、会社都合退職とは、倒産、リストラ、解雇(事業所の廃止、普通解雇)などの会社側の都合による退職です。



自己都合か会社都合かは、失業給付金をめぐる場面で問題になることが多く、原則として自己都合の場合は給付制限(給付開始までに2か月間の待期期間)があり、受給金額が少なくなりやすいとされています(失業給付金は会社都合の方が有利)。



●「自己都合か会社都合か」より「給付制限を受けるか」に着目を

とはいえ、退職勧奨を受けて辞表を提出した場合や、恒常的に長時間の時間外労働を余儀なくされたため退職した場合など、形式的には自己都合退職ではあるものの、実質的にみると会社側の都合による退職と評価されるべき場合(「特定受給資格者」といいます)があります。



また、雇止めなどにより離職を余儀なくされた場合など、政策的に受給制限(待期期間)なく失業給付金を支給すべきと考えられる場合(「特定理由離職者」といいます)もあります。



これらの場合は、形式上自己都合退職となっていても、給付制限なく失業給付金を受給することができます。



そのため、個人的には、「自己都合か会社都合か」より、「給付制限なく失業給付金を受給できるか」を考えた方が良いと考えており、こうした観点から退職手続きについて助言させていただくことも増えています。



●会社都合退職と同等の失業給付金を受給できる可能性も

——会社が原因で病気になった場合、会社都合で退職できるのでしょうか?



例えば、慢性的な長時間労働を余儀なくされたために病気になり、退職に至ったという場合、「特定受給資格者」にあたるとして、会社都合で退職した場合と同等の失業給付金を受給できる可能性があります。



離職理由の認定はハローワークが行うことになりますが、その際離職証明書などに記載する内容が非常に重要になります。そのため、離職証明書などをどのように作成すべきかご不安な場合、弁護士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。




【取材協力弁護士】
江上 裕之(えがみ・ひろゆき)弁護士
日本労働弁護団・九州労働弁護団所属。主な取り扱い分野は労働問題と医療問題で、平成24年からは公益社団法人全国労働基準関係団体連合会の委託を受けて、全基連の主催する個別労働紛争処理研修の講師も務めている。
事務所名:岡部・江上法律事務所