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紙ドライバーFのへなちょこ試乗日記 第16回 日産自慢のVCエンジン、本当に動いてる? 新型「エクストレイル」に驚く

2022年09月15日 11:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
日産自動車の新型「エクストレイル」にたっぷりと試乗してみて驚いたのは、とにかく静かなところだ。エンジンは発電に専念し、走りはモーターが担うハイブリッドシステム「e-POWER」のクルマなのだが、いつエンジンが動いたのか、正直にいうとほとんど気が付かなかった。


○聞こえてくるのはエアコンの音だけ?



新型エクストレイルで日産が狙ったのは「タフさ」と「上質さ」の融合。初代から「タフギア」で鳴らしてきたエクストレイルだから、大きくキャラ変をしなければ「タフさ」を獲得できることは間違いない。問題は「上質さ」をどうやって身につけるかだ。


新型エクストレイルは「S」「X」「G」の3グレード展開。それぞれで2WD(FF)と4WD「e-4ORCE」が選べる。価格は319.88万円~449.9万円。試乗したのは最上級グレード「G」のe-4ORCEで、オプションを含めた価格は499.15万円だった。


試乗は「フォレストサンズ長瀞」(埼玉県秩父郡長瀞町)を出発し、高速道路を走って本庄児玉インターチェンジで降りて折り返し、帰りは県道287号線を通って間瀬湖を右に見つつ、山の中のワインディングロードを通った。一般道、高速、山道と多様な道を体感できたわけである。



実際に見ると横幅1,840mmの影響もあってかなかなか大きいエクストレイルだが、四角い車体だから四隅が意識しやすいし、ステアリングが軽くて小回りも利くので、運転してみるとそこまでクルマの大きさは気にならない。モーター駆動のe-POWERだけあって力強さは電気自動車(EV)的で、出だしから軽々と動き出すので乗っていて気持ちがよかった。


気分がいいのでカーステレオ(オプションでBOSEの高性能な9スピーカーシステムを搭載)で曲を流し、夏の終わりということもあってサザンオールスターズ『夏をあきらめて』を歌いながらドライブを楽しんでいたのだが、これはまずい! 試乗前に日産の人から「新型エクストレイルの圧倒的な静粛性を味わってください」とのヒントをもらっていたのに、サザンをなんとか原曲のキーで歌おうと「こしのあたりまでーきれーこーむー!」などと声を張り上げていたのでは、静けさも何もあったものではない。



急いでカーステレオをオフにすると、少し大げさかもしれないが、聞こえてくるのは風の音だけ。暑い日だったので室温23度の設定でエアコンを付けていたのだが、走っていて最もよく聞こえてくるのが送風の音なのだ。高速道路で80km/hを出しても、エンジン音や風切り音に車内の静けさを破られることはなかった。


新型エクストレイルは日産が世界で初めて量産に成功した可変圧縮比エンジン「VCターボ」を搭載している。状況に応じて圧縮比を変えられるエンジンを手に入れたエクストレイルのe-POWERは、加速時でも回転数を抑えたまま発電できるようになった。エンジン自体の存在感が薄くなったところに徹底的な遮音を実施し、ターボの振動にも対策を施した結果、エクストレイルの走りは滑らかかつ静かになったそうだ。



結局、日産ご自慢のVCターボエンジンの快音をはっきりと聞くことができたのは、帰り道で上りのワインディングロードに差し掛かり、エンジンをぐっと踏み込んで坂を駆け上っていたときくらいだった。高速道路の合流で加速するときにも聞こえたような気がするが、遠くの方で鳴っているような感覚なのである。


クルマには、質の高さ(あるいは低さ)を感じられる部分がたくさんある。例えばシートの表皮や座り心地であったり、ダイヤルやスイッチ類の素材や触感であったり、メーターやセンターディスプレイの色、クリアさ、フォントであったり、質感を実感できるポイントは様々だ。同じプラスチックのインパネであっても、安っぽいものとそうでないものがある。



運転中の「音」というのも、クルマの質感を左右する重要な部分だ。考えてみれば、日産のEV「アリア」に試乗した時もほぼ無音の車内に驚いたものだが、エンジンを搭載するエクストレイルでも、日産の遮音は徹底したものだった。



紙ドライバーF かみどらいばーえふ 生活するには自動車が必須な北陸の某県で生まれ育ちながら、運転免許証の取得後は都会暮らしとなったため、これまでに一度も自家用車を所有したことのないペーパー(紙)ドライバー。すでにマニュアルトランスミッションの操作もおぼつかないが、ひょんなことから自動車業界を取材することとなった。 この著者の記事一覧はこちら(紙ドライバーF)