トップへ

新生児科医・小児科医ふらいと先生の子育て「これってほんと? 」答えます 第8回 どの子にも当てはまる「正解」はない - ネット社会での子育てに必要なリテラシーとは?

2022年09月12日 15:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
「無痛分娩だと愛情が湧かない」「離乳食は手作りがいちばん」――昔から育児当事者を苦しめてきた子育てにまつわる迷信や神話、さらにネット社会で広がる真偽不明の育児情報。



そんな育児の「これってほんと? 」について、ツイッターで人気の小児科医・ふらいと先生をはじめとする専門家たちが答える1冊が登場しました。この連載では、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)より、一部抜粋してご紹介します。

○■子育てのまわりに神話や誤情報が多い理由


子育てのまわりには、スピリチュアルがかったものや、根拠のないまま社会に受け入れられている迷信、神話が集まりやすいものです。いかにも本当らしく聞こえる誤情報も多くて惑わされます。スピリチュアル=精神的なものはそれ自体がわるいわけではありませんが、「赤ちゃんは親を選んでくる」のように誰かを追い詰める可能性を含むものもあります。



不審に思いながらも、「この情報を無視したら、あとで子どもにわるい影響が出るかもしれない」と不安に駆られることもあるでしょう。大人のお世話がなくては生きていけない幼子を育てているのですから、当然です。とくに第一子であれば、何に対しても「これで合っている?」「これがいちばんよいやり方かな?」と心配になるものです。

○どの子にも当てはまる「正解」はない



なぜ子育てのまわりには神話や誤情報が多いのでしょう。それは、子育てには絶対の正解がない場合が多いからだと思います。加えて、エビデンス(=臨床結果や調査に基づいた科学的根拠)があるもの自体が、じつは少ないのです。



子どもの病気や障がいについては、世界中で研究がなされています。しかし、とくにそうしたことがなく育っている子は研究の対象になりにくいのが実状です。そして、「確実に寝かしつける方法」「泣きやませる方法」といったことは、仮に研究が進んだとしても、どの子にも当てはまる方法が出てくるとは思えません。



新生児科医・小児科医として、そしてみずから子育てを経験して思うのは、赤ちゃんはひとりひとり違うということです。

○不安につけ込む悪質な誤情報



正解がないのは決してわるいことではなく、そこにこそ育児の楽しさ、面白さがあります。しかし、正解のなさを利用してつけ込んでくる悪質な誤情報やスピリチュアルがあることも、また事実です。不安や疲れは、人の判断能力を鈍らせます。



「これってほんと?」と思ったときはひとりで悩まず、信頼できる専門家や身近な人に相談する、あるいは専門家がわかりやすく書いた本を読むなどしてみてください。頼れる先は多いほどいいです。この本も、そんな頼れる味方でありたいと思っています。


○■ネット社会での子育てに必要なリテラシー



現代を生きるわれわれにとって、公私を問わずインターネットは欠かせないものです。スマホやパソコンがあれば、そこにある膨大な情報に簡単にアクセスできます。とくに子育て中だと時間もなく手も離せないので、片手で手軽に調べものができるネットはありがたいもの。



さらにそのなかにある便利なツールとしてSNSを日常的に利用されている人は多いでしょう。けれどこれまで見てきたとおり、SNSには真偽不明の情報もあふれています。よって、いまの時代求められているのは「情報リテラシー」です。


○大事なのは、情報を取捨する能力



リテラシーとは、「あまたある情報のなかから必要なものを見極め、抜き出して活用する能力」のことをいいます。



これは本来、発信する側にも問われることだと思います。育児情報、健康情報のなかには、エビデンスに基づかず個人的な体験や感覚だけがもとになった誤情報やうわさも多く見受けられます。深刻な健康被害につながりかねないものもあるにもかかわらず、発信者がその責任を負うことはほぼありません。であれば、情報を受け取る側がリテラシーを身につけておくしかないのです。



情報リテラシーは育児にかぎらず、これからの社会を生きていくうえで必要な能力です。子どもたちは今後、学校教育のなかで学ぶ機会があってほしいと思いますし、すでにそうした動きも出てきているようです。



たとえば日本では性教育が十分でないいっぽうで、ネットには性についての刺激の強い情報があふれ返っています。翻弄され間違った知識を身につけないためにもリテラシーが必要なのです。

○発信しているのは誰? エビデンスは?



現在は、過渡期にあるのだと思います。リテラシー教育を受けないまま、子育ての情報を取捨していくのはたいへんなことですが、「誰が発信しているのか」「エビデンスはあるのか」をつねにチェックするよう心がけてみてください。理想は妊娠前からミドルマンをリストアップしておくことですが、今からでも遅くありません。



またネット上だけではなく、かかりつけ医など、信頼できる相手に直接不安を打ち明けたり質問したりできる環境も整えておきましょう。


○解説:新生児科医/小児科医・今西洋介

新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師。作中の今橋先生のモデルでもある。NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会課題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。Twitter:@doctor_nw


○『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』


(西東社刊/1,430円)

もう悩まない、ふりまわされない! Twitterで正確な医療知識を発信しつづける"ふらいと先生"待望の書。子育ての常識は日進月歩。昔は当たり前だったことが今はまったく違う、ということはたくさんあります。また、ネット社会になり育児不安をあおるようなうわさやうそかほんとかわからない情報がSNSなどをつうじて広く拡散されるようにもなりました。いっぽうで、お母さんだけに負担を押しつけるような育児の迷信・神話は変わらず存在し、いまだ「呪い」のように育児当事者を苦しめています。そのひとつひとつについて「これってほんと?」と問い直し、専門家が最新の知見に基づいて科学的に答えていく一冊です。

Amazonなどで絶賛発売中!