「自律的に仕事をしてほしい…」
「モチベーションを見失わないでほしい…」
「もっと仕事に集中してほしい…」
部下に対して、こうした悩みを抱えている管理職の方も多いと思います。実際、どう対応していけばいいのでしょうか。今回は、最近よく耳にする“内発的動機付け”をテーマに、部下に高いモチベーションで自律的に働いてもらうためのポイントを綴ってまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
部下の内発的動機を育むために上司ができること
VUCAと言われる先の見えない時代に、コロナショックが合わさり、ますます先行き不透明になっています。そんな時代においては、管理職として先を示すことは大切ですが、部下自身が自分で先を見据えて、自律して動けるようになっていく必要があります。
部下の自律心を育むためには、部下が内発的動機によって動いている状態を作ることが大切です。内発的動機づけとは、金銭、名誉、他者からの評価といった外的な報酬ではなく、自分の興味関心、好奇心や探求心、意欲などに動機づけされている状態になります。
内発的動機付けは、仕事のなかで「自分の能力を発揮できている」「自分自身で目的を定め、計画を立て、実行している」といった感覚があるときに得やすいと言われています。社会心理学者のエドワード・L・デシによれば、内発的動機付けには有能感と自己決定感が強く影響するといいます。私は、部下の内発的動機づけの為には、デシのいう有能感と自己決定感を含め5つのポイントが重要になると考えています。その5つとは以下のものです。
(1)自身の大切にしている価値観を感じられている
価値観とは、私たちが「目標に向かう」あるいは「問題を回避する」何かであり、行動の源泉です。この価値観は、部下のこれまでの人生経験が作り上げています。管理職としては、日頃のコミュニケーションの中で部下の価値観を知り、それを大切にしてあげることが求められます。
(2)仕事の目的に腹落ちしている
目的の無い仕事は、“作業”になってしまい、部下のやらされ感を生み出していまいます。上司としては、常に組織の目的を語り、部下自身の仕事の目的との繋がりを示していく必要があります。
(3)有能感を感じられている。
有能感とは、目の前の仕事を自分で出来るといった感覚です。自己効力感ともいうことができます。これを上げるためには、出来た仕事の振り返りと能力開発が欠かせません。上司としては、部下に仕事を振り返らせるタイミングと能力開発の機会を提供することが求められます。
(4)自己決定感があると感じている。
自己決定感とは、いわゆる自己裁量のことを言い、ある程度の権限が委譲された状態です。上司としては、マイクロマネジメントにならないように注意をし、勇気をもって仕事を任せていく関わりが求められます。ただし、丸投げはNGです。
(5)上司の支援がある。
以上のポイントでもお示ししましたが、上司として日頃のコミュニケーションを通して、部下の内発的動機づけのポイントを刺激し続ける必要があります。そのためにも部下が話しかけやすいオープンな雰囲気をまとい、日常的なフィードバックを心がけましょう。
管理職としては、部下の価値観を大切にしながら仕事を任せて、育成していくことが求められます。内発的動機付けから“自律”的な部下を醸成し、高い組織成果に結び付けていってください。
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筆者近影
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。