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舞台「鬼滅の刃」猗窩座役・蒼木陣「登場シーンの“絶望感”をお客様にも伝えたい」【インタビュー】

2022年09月09日 18:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

蒼木陣
大きな話題を呼んだ劇場版アニメや、原作マンガの完結が記憶に新しい『鬼滅の刃』。舞台版3作目となる『舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車』が、2022年9月10日より上演される。
本作で炎柱・煉獄杏寿郎との死闘を繰り広げるのは、上弦の参の鬼である猗窩座。圧倒的な強さを誇る、作中でも人気の高いキャラクターだ。

今回は舞台版で猗窩座を演じる蒼木陣さんにインタビュー。本格的な稽古がスタートする前ではあるが、衣裳や台本などからはすでに本作の魅力が伝わってきたという。中には「これは本当に舞台で表現できるのか?」と驚いた場面もあるそうだ。
蒼木さんが感じた猗窩座の魅力や作品への熱い想いを、撮り下ろし写真とともにお届けする。

[取材・文=ハシビロコ 撮影=Fujita Ayumi]

■「絶対勝てないじゃん!」猗窩座に感じた絶望感



――舞台への出演が決まる前から『鬼滅の刃』はご存じでしたか?

蒼木 もちろんです! もともと原作のマンガが好きで何度も読んでいました。ただ、舞台への出演が決まってから原作を読み返していると、どうしても猗窩座目線で感情移入してしまって……。「初見で読んだときの気持ちはどこに行ったんだ!」と思うこともあります(笑)。

――お気に入りのシーンはありますか?

蒼木 『鬼滅の刃』は鬼サイドにもドラマがあって魅力的です。だからこそ多くのキャラクターに感情移入できる。また、コミカルなシーンと苦しいシーンの波にも引き込まれますし、主人公の炭治郎が強くなっていく過程にもワクワクしました。

初見に近いときの感想でいえば、猗窩座が初登場したときの「絶対勝てないじゃん!」という絶望感は今でも覚えています。煉獄杏寿郎たちに感情移入しながら読んでいたので、どうやったら倒せるんだろう、と思いました。

――その猗窩座をご自身が演じると決まったときの心境はいかがでしたか?

蒼木 最初は高揚感や嬉しさが強くて、どう演じようかと考える楽しさがありました。そんな「陽」の感情が強かったのですが、だんだん冷静になってくると「陰」の感情も押し寄せてきて。幅広い世代に愛されている作品の人気キャラクターを演じることへの重みを感じました。原作ファンはもちろん、舞台で初めて『鬼滅の刃』に触れる人にも認めてもらえるだろうか、とドキドキしています。

猗窩座はとても魅力的で、僕も舞台への出演が決まる前から好きなキャラクターです。同じように猗窩座が好きな方はたくさんいらっしゃると思うので、そうした方々の期待を裏切らないように演じなければいけない。だから今でも不安や恐怖を感じることはありますが、作品やキャラクターに真摯に向き合えばお客様にも届くはずです。猗窩座が心に残る存在になるよう、精一杯演じます。

――キャラクタービジュアルが解禁されたときは、クオリティーの高さがSNSでも話題になりました。

蒼木 ビジュアルに関しては嬉しいお声をたくさんいただけて、本当にありがたいです。でも僕ひとりの力ではなく、プロフェッショナルなスタッフさんたちがいてこそだと思っています。撮影中もメイクをして衣裳を着ていくうちに、猗窩座としての気持ちが強くなりました。舞台の上で動いた姿にも満足していただけるよう演じたいです。

――撮影中に印象的だったことはありますか?

蒼木 スタッフさんたちのプロとしての腕前に感動しました。メイクも衣裳もひとつひとつこだわりが詰まっていて、たとえばベストの長さは何度も調整してくださっています。試着をくり返して数センチ単位で修正し、もっとも猗窩座らしくなるバランスを追求していきました。こうした尊敬できる方たちと舞台でご一緒できるのは嬉しいです。たくさんの方々に支えられてキャラクタービジュアルが出来上がっているのだと実感すると同時に、改めて感謝の気持ちを抱きました。

■炭治郎と杏寿郎の大きな存在感



――『舞台「鬼滅の刃」』の1作目や2作目はご覧になりましたか?

蒼木 どちらも劇場で拝見しました。炭治郎役の(小林)亮太くんが本当に魅力的で、とてもひたむきに演じていたことが印象に残っています。毎公演このクオリティを維持しているのは奇跡だ、と思うほどで。舞台は生身の人間がその場で演じていて、しかも何度も舞台に立ってその役の物語を演じます。本当に大変なことですが、真摯に作品や役に向き合っているのだと、客席にいる僕にまで伝わってきました。

2作目の亮太くんは、より存在感を増していました。1作目では作品やキャラクターを背負っている印象でしたが、2作目ではさらに座組のみんなを背負っているように感じて。より『舞台「鬼滅の刃」』に生きるひとりとして大きくなっていました。僕が言うのもおこがましいですが、どんどん伸びていく魅力的な役者だと思います。

――そんな小林さんをはじめとするみなさんと『其ノ参 無限夢列車』で共演するにあたり、役作りなどで意識した点はありますか?

蒼木 猗窩座は、鬼の中では比較的人間くさくて感情移入できるキャラクターだと思いますが、本作においては圧倒的な敵であり悪役として存在しなければなりません。僕が原作や劇場版、TVアニメを見たときに思った「こいつに勝てるのか?」という気持ちを、舞台を観に来てくださったみなさんにも感じてもらえるように役作りをしようと意識しています。

――煉獄杏寿郎を演じる矢崎広さんの存在も大きいのではないでしょうか。

蒼木 そうですね。先日、初めて矢崎さんとお話ししたんです。本当に魅力的な方で、矢崎さんが役者として培ってきたものや、人生で積み重ねてきた経験などを言葉の節々から感じました。そんな方と同じ作品やシーンを演じられることを光栄に思います。役者としては矢崎さんのほうが先輩なので、甘えられるところは甘えたいと思っていますが、役としては自分が倒すべき相手なので、あまり甘えられないかもしれません(笑)。それでも同じ舞台を作る仲間なので、頼るところは頼って、苦しいところは一緒に苦しみたい。そんなふうにさまざまな時間を共有して、作品を作り上げていくつもりです。

――仲間でもあり倒すべき好敵手でもあるんですね。

蒼木 やっぱり杏寿郎の強さや言葉の重みには説得力を感じますし、性別問わず惹かれるものがあると思います。原作を読んでいたときから大好きなキャラクターのひとりです。

そんな杏寿郎を演じる矢崎さんも、とてもかっこいい。舞台2作目のラストで、杏寿郎だけが舞台に立って次作に向けたシーンを演じたことがありました。そのシーンの矢崎さんはご本人の身長以上に大きな存在に見えましたし、客席に飛んでくる圧のようなものがすさまじくて。まさにコミックス8巻の表紙のようでした。煉獄杏寿郎としてたしかにそこに存在している、と圧倒されたことを今でも覚えています。きっとあの瞬間、劇場にいた誰もが矢崎さんに惹きつけられていたはずです。



■生身の人間が演じるからこその表現



――舞台の台本はもう手元に届きましたか?

蒼木 はい。「ここでこの演出なのか!」、「舞台でこのシーンもできるのか!」と驚かされることも多くて。ワクワクや楽しさを感じながら読みました。脚本や演出を担当されている末満(健一)さんの中では、すでに舞台上でのプランができていると思います。

末満さんの作品は演出方法がおもしろく、演者としてもお客さん目線としても魅力的です。また、末満さんはどのセクションに対しても愛を持って向き合われる方なので、台本を読んでいても熱い想いが伝わってきました。その愛に応えられるよう、役者としてしっかり取り組んでいきます。

――蒼木さんはこれまでも『舞台「刀剣乱舞」』シリーズをはじめとする末満さんの作品に出演されていますが、それでも驚きが多いのですね。

蒼木 毎回驚かされてばかりです。とくに本作では表現の難しいシーンが多いので、演出がどうなるのかまったく予想できません。列車の表現はもちろん、猗窩座のシーンがどうなるのか、楽しみであると同時に、押し寄せる不安もひとしおです(笑)。

――蒼木さんは「2.5次元」と呼ばれるジャンルの舞台でも活躍されています。2.5次元のキャラクターを演じるとき意識していることはありますか?

蒼木 「もしこのキャラクターが僕らと同じ人間の世界にいたらどんな人だろう」と考えています。2.5次元とはいえ演じているのは生身の人間で、舞台は僕らが生きている現実の世界に存在します。生身の人間が演じることでより魅力的に見える部分もあると思うんです。せっかく舞台として見るのに、2次元で楽しんでいるときとまったく同じ感想しか抱けなかったらもったいない。人間が演じるからこそできる表現や伝わる生の感情を大事にして、そのキャラクターをもっと好きになってもらえたらと思っています。

――舞台の上で蒼木さんが演じることで、猗窩座の新たな魅力も伝わりそうですね。

蒼木 でも今回演じるのは鬼なので、これまでと同じように「現実にいたら……」と考えるのは少し難しかったです。僕は腕が取れた経験もないですし、身体をえぐられて再生した経験もありません。どうしても想像力で補うしかないですが、そんなマンガやアニメでしか起こりえない場面も、演劇では演出や役者の表現でお客さんに伝えることができます。想像力と工夫でどんな世界でも描写できるのは、2.5次元舞台のおもしろさのひとつです。

■お前も○○にならないか?



――猗窩座の名台詞「お前も鬼にならないか?」のように、蒼木さんが仲間を増やしたいと感じていることはありますか?

蒼木 「お前もマッチョにならないか?」です(笑)。僕はありがたいことに、アクションシーンのある舞台など身体を動かす機会を多くいただいています。もともとアクションは得意でしたが、体幹トレーニングを取り入れてからは軸がまったくぶれなくなりました。もしこれまでトレーニングを避けてきた読者の方がいたら、「お前も一緒にトレーニングをしてマッチョにならないか?」とおすすめしたいです。体幹が強くなると私生活でも楽な動きが増えますし、トレーニングをすると代謝も上がります。

――ちなみにおすすめの体幹トレーニングはありますか?

蒼木 プランクです。うつ伏せになって両腕とヒジ、つま先を床に付けて姿勢をキープするトレーニング。筋肉や体幹はあって悪いことはないと思うので、ぜひ今からトレーニングをして、マッチョになった状態で舞台を観に来てください(笑)。

――最後に本作の見どころと、読者に向けてメッセージをお願いします。

蒼木 本作の一番の見どころは、物語全体を通して描かれる煉獄杏寿郎の生き様だと思います。その生き様が今後の炭治郎、善逸、伊之助にも影響を与えていくので、ぜひ注目してほしいです。また、そんな杏寿郎と戦う猗窩座の姿も楽しみにしていてください!

あと、これは僕自身がこれまでに感じたことでもありますが、見ている間に心が動いた作品は、いつまで経っても忘れないものです。『舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車』も観に来てくださった方々の心にずっと残るよう、座組のみなさんと力を合わせて駆け抜けていきます。今回はキャストが比較的少ないので、ある意味では全員が主人公。ひとりひとりがしっかり作品を背負って挑まなければなりません。全員が責任を持って役と向き合った姿をお客さんに届けようと思っているので、最後まで応援よろしくお願いします!

◆◆◆

『舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車』は2022年9月10日より順次、東京・京都にて上演予定。演劇ならではの表現で描かれる新たな『鬼滅の刃』の魅力を、ぜひ客席で体感してほしい。


舞台「鬼滅の刃」其ノ参 無限夢列車

【公演期間・劇場】東京:2022年 9月10日(土)~9月11日(日) TOKYO DOME CITY HALL
京都:2022年9月16日(金)~9月25日(日) 京都劇場
東京凱旋:2022年10月15日(土)~10月23日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【原作】『鬼滅の刃』吾峠呼世晴 (集英社ジャンプ コミックス刊)
【脚本・演出】末満健一
【音楽】和田俊輔

【出演】
竈門炭治郎 小林亮太
竈門禰豆子 高橋かれん(※禰豆子の「禰」は「ネ(しめすへん)」が正式表記)(※高は、はしご高が正式表記)
我妻善逸 植田圭輔
嘴平伊之助 佐藤祐吾
魘夢 内藤大希
猗窩座 蒼木 陣
煉獄千寿郎 下川恭平
煉獄槇寿郎 細見大輔
煉獄杏寿郎 矢崎 広
(※煉獄の「煉」は「火+東」が正式表記)

アンサンブル
飯島優花
大原万由子
黒沼 亮
高原華乃
夛田将秀
丹下真寿美
千葉雅大
遥 りさ
星 賢太
米澤賢人
渡来美友

【監修】集英社(「週刊少年ジャンプ」編集部)
【協賛】ローソンチケット
【協力】一般社団法人日本 2.5 次元ミュージカル協会
【主催】舞台「鬼滅の刃」製作委員会

(C)吾峠呼世晴/集英社
(C)舞台「鬼滅の刃」製作委員会