2022年09月09日 18:01 弁護士ドットコム
職務質問の要件とされる「不審事由」がないにもかかわらず、警察官から職務質問を受けた――。
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外国ルーツを持つ人たちから、このような職務質問に対する疑問の声などが複数寄せられたことをきっかけに、東京弁護士会は、その実態を把握するためにアンケート調査を実施した。
外国にルーツをもつ回答者のうち、6割以上が過去5年以内に職務質問を受けているほか、外国籍とわかった途端に警察官の態度が変わったという人もいるなど、差別的な「レイシャルプロファイリング」の実態が浮き彫りになった。
レイシャルプロファイリングとは、人種や肌の色、国籍、言語など、特定の属性にもとづいて、個人を捜査の対象とすることだ。外見が「外国人風」だったり、外国語を話したりしていることを手がかりとした差別的な職務質問もこれにあたる。
東京弁護士会・外国人の権利に関する委員会がおこなったアンケート調査(調査期間:2022年1月11日~2月28日)の対象者は、日本に在住している外国にルーツをもつ人だ。
9月9日に公表された最終報告書によると、有効回答数2094件のうち、62.9%(1318件)が過去5年以内に職務質問を受けていることがわかった。
そのうち、複数回にわたって質問されたのは72.7%。最も多かったのは「2~5回程度ある」(50.4%)であり、「6~9回程度ある」(10.8%)、「10回以上ある」(11.5%)との回答もみられた。
職務質問を受けた人のうち、85.4%が「警察官が最初から外国ルーツを持つ人であることを認識して回答者に声をかけてきた」と認識しており、その理由(複数回答)として最も多く挙げられたのは「身体的特徴」(92.9%)だった。
また、職務質問の要件である「不審事由」はなかったと認識していたのは、76.9%だった。
「話しかけられてすぐに在留カードの提示を求められた」あるいは「話している途中で在留カードの提示を求められた」と回答した人は、合わせて77%となり、警察官から「質問に答えたくないことは答えなくて構わない」と説明されなかった人が、89.8%になることも明らかになった。
過去5年間の職務質問で気分を悪くした経験があると回答した人は70.3%。長時間にわたる質問や不審事由と関連しないプライベートな質問がおこなわれていることもわかった。
自由記述欄には、実際に職務質問を受けたという人たちから「差別的」「不快」「時間の無駄」などの単語を含む以下のような体験談や思いが寄せられた。
「見た目だけで薬などを持っているのではと疑われた。終始乱暴で失礼な態度で、いきなりズボンを脱がされ、下のものを見られた。侮辱的だし差別的。とても心が傷ついた。何も持ってないのを確認したら、謝りもせず、脱がせたまま立ち去っていった。本当に失礼だし、警察官としてありえない」
「最初は敬語で話しかけてくれていましたが、ブラジル国籍だと分かった途端口調から敬意が無くなり無線で2人ほど応援を呼ばれました。(中略)私が『日本国籍の方にも同様な対応ですか?』と聞くと警察官は『外国籍だということなんで細かく調べています』と、言われました」
「外国人であることが分かった途端警察官の態度が急変しタメ口で職務質問が行われた。その経験がトラウマになり今は帰国を考えている」
「外国籍とわかると態度が変わる人が多いので怖い」
「不愉快、一緒にいた日本人の友人には何もなく、自分のみ職質。理解不能」
「職務質問には協力しますが、態度と言葉使いがしっかりなっていないまま高圧的な態度を取られてしまうと、自分が犯罪者であるかのように思えてきて気分が悪くなります」 (すべて原文ママ)
東京弁護士会は9月9日、東京・霞が関で記者会見を開いた。最終報告書の内容を説明した宮下萌弁護士は「外国人=犯罪者あるいは犯罪者予備軍扱いしている人が一定数いると思われる。少なくとも、客観的に人種差別と疑われるような職務質問は避けるべきで、警察官への人権研修等を充実させるなどしてほしい。この調査結果は氷山の一角にすぎない」と述べ、改善を求めた。
また、有園洋一弁護士は「職務質問自体は犯罪の発覚や予防に役立つものであり、今回の調査は職務質問を否定するものではない」としたうえで、「見た目が外国人であることを理由にプロファイリングをかけているとすれば、本来であれば対象とすべき人を見逃しているかもしれず、刑事政策的に効果的な方法ではない」と強調した。
警察官職務執行法2条では、職務質問について、以下のように規定している。
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる」