トップへ

BE:FIRST、1stアルバム『BE:1』で体現する“個”の輝き 試行錯誤重ねた新曲群を中心に注目ポイントを探る

2022年09月08日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BE:FIRST『BE:1』(CD+2BD)

 BE:FIRSTが8月31日にリリースした1stアルバム『BE:1』。「一人一人の個性」を輝かせることを打ち出した本盤では、7人の歌声が曲の度に主役を変えていくジャンルレスなBE:FIRSTの音楽を余すところなく楽しむことができる。新曲も8曲収録され、9月末から始まる全国ツアーではこれまでにないパフォーマンスが見られるだろう。そこで今回は、メンバー7人の「個」が作品の中でどう映し出されているかを彼らの発言とともに(※1、2)掘り下げながら、アルバムの注目ポイントを探っていきたい。


(関連:BE:FIRST、「Scream」ソロパフォーマンスから見えるメンバーの個性 変幻自在な表現で魅せる楽曲の世界観


 先行配信曲やシングル曲で構成される冒頭3曲に続いて登場するのは、RYUHEIが「どんな人にとっても心が温まるような歌詞」と紹介する、明るく穏やかなミディアムチューン「Moment」。LEOは、「レコーディングの時、一通り録り終わった後にみんなの歌を聴いてもう一度録り直した」、「歌い方などいろんな変化やチャレンジを加えた曲」と収録当時を想起。また、JUNONも「1バース目のパートは、プリプロ(仮録り)から本RECでファルセットに振り切って歌うと変更になった」と話し、レコーディング中にも試行錯誤を重ねた曲であることが窺える。


 グループ初のユニット曲「Softly」は、MANATO、RYUHEI、JUNON、LEOのボーカルをフィーチャーし、RYUHEIのウィスパーボイスを巧みに用いてセンチメンタルな心情を投影した大人のスローナンバー。R&Bの分野で第一線を走るFull Of HarmonyのHIROが作詞(SKY-HIと共作)とボーカルディレクションを手がけ、シンガーに教わる緊張感を感じながらも成長を実感する勉強の機会となったようだ。どこかダークさも含むため、聴き手によって受け取り方が異なるであろうこの楽曲。MANATOが「皆さんの目の前で披露するのが楽しみな曲でもある」と語るように、4人がステージでどう表現するかも見どころの一つだろう。


 これと対になる「Spin!」はSOTA、SHUNTO、RYOKIのユニット曲。SOTAの言葉を拝借すると「ラップで畳みかけるスーパーナンバー」である本楽曲は、トラップミュージックの要素を感じさせ、HIPHOPに振り切ったトラックとライムが“これぞBE:FIRSTのMCの真骨頂”と言わしめる1曲だ。作詞に参加したことを振り返りながら、RYOKIが「歌詞も1バース目からあんなに攻めている楽曲ってなかなかない」と太鼓判を押すと、SOTAも「リアルな強気な歌詞が書けたのがよかった」とコメント。さらには「踊りたくなるフロー、トラックなので僕的には踊りたいし踊ってほしい。(ライブでは)跳ねてほしいなと思います」と、ファンとの盛り上がりにも期待を膨らませた。


 さらに、7人全員でのマイクリレーが実現したのが「Milli-Billi」だ。この楽曲で「一番テイクを録り直した」と言うのがサビの〈Milli-Billi〉を歌うSHUNTOだが、その数なんと20回以上。「ディレクションの指示と自分のニュアンスの双方を取り入れつつ、噛まずに言わなければいけないので混乱した」と語っていたことからも、難易度の高さが伝わってくる。後述する「Message」ではSOTAとともにラップを担うSHUNTOやRYUHEI、「Betrayal Game」でラップデビューしたJUNONのフロウを堪能できるほか、今曲がラップ初挑戦となるLEOの新たな一面にも注目必至だ。


 メッセージ性が特に強い楽曲をアルバム後半に位置づけたのにも理由がありそうだ。デビューシングル収録の「Kick Start」のアンサーソングとして冠番組『BE:FIRST TV』で制作された「Grateful Pain」は、7人が「自分たちに刺さるように書いている」と話すように、メンバー本人の過去と現在を彷彿とさせる言葉が並ぶバラード。アルバム収録にあたってアレンジも変わり、楽曲に新鮮さももたらしている。一方、初のラブソングである「Message」は、LEO曰く「どんな恋心にも寄り添えるような、あったかい気持ちになれる曲」。今後のイベントやフェスで、最後にみんなで手拍子をしたり手を振ったりできるような一体感を生み出していく光景が浮かぶ。RYUHEIは最近ラブソングを聴くことも多いそうで、普段聴いている音楽からインスピレーションを得たり、メンバーのレコーディングに同席して良いところを吸収したりと、その成果も一層感じられるように思う。


 プレデビュー時から音圧高めの楽曲で魅了してきたBE:FIRSTが、結成1年を機にこのように新たなジャンルに挑み、確実に音楽を体現していくことの説得力は大きい。そんな中、プレデビュー曲の再録である「Shining One (Re-recorded)」ではメンバー自身も成長を実感できたのではないだろうか。MANATOは、持ち曲の中でも一番パフォーマンス回数が多いにもかかわらず「ちゃんと難しい」とその難易度を再確認。SOTAは「審査段階とラップのアティチュードが全然違う」とSKY-HIに成長ぶりを称賛され、手応えを感じた様子だった。


 BE:FIRSTが所属する「BMSG」の社名は、アーティストが“ありのままの自分”でいられる会社を意味した「Be My Self Group」の略称であるが、実はもう一つの意味も込められている。それが、「Brave(勇敢な)、Massive(圧倒的な)、Survive(存在し続ける)、Groove(楽しませる)」だ。これらの“BMSG”構成要素をしっかりと持ち寄り、自分たちが「個」であるのみならず、本アルバムでリスナー自身の「個」も尊重し愛することを掲げたBE:FIRSTの姿は、まさに結成時にSKY-HIが話していたような「誰よりも世界のことを愛しているグループ」に少しずつ近づいているのではないか。今月から始まる全国ツアーで新曲をどのように披露し、どう進化したステージを見せるのかに期待したい。(風間珠妃)


※1:https://youtu.be/2PuslheddBo
※2:https://youtu.be/Dh72SgqXvOM