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まるで浮世絵のような躍動感 ディップアートで作る「波のかんざし」

2022年09月06日 18:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

まるで浮世絵のような躍動感 ディップアートで作る「波のかんざし」

 細いワイヤーでフレームを作り、そこに樹脂の膜を張って作るディップアート。「アメリカンフラワー」という別名の通り、花を作る方が多いのですが、それ以外にも様々なものを作ることが可能です。


 ハンドメイドのアクセサリー作家、ひねこさんはディップアートの手法で躍動感のある「波のかんざし」を作りました。まるで浮世絵を見ているかのような美しさです。


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 デザイン業に就いていたひねこさんは、2016年に大好きなお祖母様の介護をするために退職。フリーランスで地域情報誌を作る仕事をしながら、minneでハンドメイド作品の販売を始めました。


 現在、アクセサリーとして花やクラゲ、金魚、波などをモチーフにした作品、羊毛フェルトで動物のマスコットを作っているとのこと。ワイヤーのフレームに樹脂の膜を張ったディップアートや、プラスチック板を加熱収縮させて作る「プラバン」、さらに最近では布を切り出して染める「布花」といった技法を使っています。


 ディップアートを始めたのは2019年から。練習を重ねて技量を高め、2020年に作品を販売できるようになったそうです。


 通常の花も作っていますが、ひねこさんの技量がより発揮されるのは、躍動感あふれるダイナミックな造形。最初に作ったのは、水中でヒラヒラと揺れる金魚のヒレをモチーフにした作品でした。


 実際に作ってみて、流れるようなワイヤーフレームのうねりを波の造形に使えるのではないか、と感じたひねこさん。その背景には、日本画家だったお祖父様の存在がありました。


 「私が生まれた時には他界していましたが、家にある祖父の絵を日頃から見ていました。その影響もあり、よく図書館に行っては日本画集を見たり絵を描いたりしていました」


 特に好きだった、というのが葛飾北斎。富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」は模写を繰り返したそうで、このような波を立体化し、表現できたら美しいだろうな、と思って作り始めたといいます。


 波に見せるため「カーブの角度と飛沫の大きさのバランスを重視しました」とのこと。波頭や飛沫など、細かいカーブや液体ならではの自在なうねり方を表現するため、ワイヤーワークは何度も試作を繰り返したのだとか。


 ワイヤーフレームを透明なディップ液に浸し、樹脂皮膜を作ります。複雑な形状もあり「皮膜もねじれてうまく張れませんので、楽しいけれど時間のかかる作品です」とひねこさん。


 ディップアートは、ディップ液を調合して着色する方法もありますが、ひねこさんは透明な樹脂皮膜に彩色する技法を主に採用しています。手書きとエアブラシを組み合わせることで表現の幅が無限に広がるのと、鮮やかな色が長持ちしユーザーに長く楽しんでもらえる、というのが理由だと語ってくれました。


 「彩色は昔からの慣れがあるのか、感覚で描いています。子どもの頃に描いていたアナログの技法が役に立っているようです」


 彩色が終わると、レジン液で皮膜を強化します。元々の樹脂皮膜は非常に薄いので、形を固定し皮膜が壊れたり破けたりしないようにする大事な工程。


 これまで作った「波」の作品では、最初に作ったものがお気に入りだと話してくれました。「アイデアを思いついてから、今すぐにでも形にしたいという想いが溢れ出て、寝る間を惜しんで勢いで作り上げました」という言葉の通り、ほとばしる思いがそのまま形になったかのようなフォルムです。


 ディップアートの「波」はヘアアクセサリー、特にかんざしにすると映えます。左右で違う形の波を組み合わせると、互いに響き合うような動きを感じさせる雰囲気に。


 作品を愛してくれるユーザーの方に対し、ひねこさんは次のようなメッセージを託してくれました。


 「いつも作品を見ていただきありがとうございます。見つけてくださっただけでも嬉しいのに、ご購入までしていただけるのは、作家として本当に励みになります。皆様からいただける応援が日々の原動力になっています。これからも私らしい作品、喜んでいただける作品を作る事ができたらと思っていますので、見守っていただけると嬉しいです!」


 ひねこさんの作品はminneのほか、BASEやcreema、BOOTHでも販売中。公式サイト「Marchen Cat」には、作品画像のほか、各ECサイトへのリンクも用意されています。



<記事化協力>
ひねこさん(@MarchenCat)


(咲村珠樹)