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森喜朗元首相は逮捕される? AOKI前会長が「200万円手渡した」報道 東京五輪めぐる汚職事件

2022年09月06日 12:11  弁護士ドットコム

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東京五輪・パラリンピックをめぐり、大会スポンサーだった紳士服大手のAOKI前会長、青木拡憲容疑者(=贈賄容疑で逮捕=)が、大会組織委員会の会長だった森喜朗氏に「現金200万円を手渡した」と供述していると報じられた。


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森氏のがん治療の見舞金だった可能性もあるという。東京地検特捜部は、現金を渡したとされる経緯や時期などについて、慎重に捜査を進めているとみられる。



一方で、森氏は、共同通信などの取材に対して、青木容疑者とスポンサー選定で話し合ったことはないと回答しているという。



はたして、森氏は罪に問われるのだろうか。元東京地検検事の西山晴基弁護士に聞いた。



●収賄罪または受託収賄罪に問われる可能性あり

――もし「200万円の提供」が本当にあったとしたら、罪に問われる可能性は?



森氏が「その職務に関し」て、AOKIに供与する便宜の対価として金銭を受け取ったのであれば、それは「賄賂」であり、森氏は収賄罪または受託収賄罪、AOKI前会長は贈賄罪に問われる可能性があります。



――どのような便宜供与があったと考えられるか?



現在、高橋治之元理事(=受託収賄容疑で逮捕=)がAOKIから金銭の提供を受けたとされる事件の捜査が進んでいます。



高橋元理事がAOKIから受けた依頼は(1)スポンサーへの選定、(2)公式ライセンス商品の速やかな承認、(3)追加協賛金(スポンサー料)の減免であった疑いがあるとされています。



報じられているような、高橋元理事が森氏にAOKI前会長を紹介した経緯を踏まえると、森氏にも(1)~(3)の話を通していた可能性があります。



ですので、まずは(1)~(3)についての便宜供与が考えられるでしょう。一方で、高橋元理事が「森さんも僕に任せている」などと発言していた旨の報道もあることから、森氏は積極的には便宜供与に関わっていない可能性もあります。



ですが、森氏が、(1)~(3)の便宜供与を黙認するにあたっての対価として金銭を受け取っていたのであれば、その立場上、高橋元理事との共犯として罪に問われる可能性があります。



●録音データから明確な記録があれば「立件」の可能性は高い

――「がん治療のお見舞いだった」という弁解については?



森氏やAOKI前会長からすると、見舞金としてはありえなくない金額かもしれません。



高橋元理事の事案とくらべると、提供された金銭が少額である分、別の趣旨の金銭であったという弁解は通りやすくなります。



しかし、面会時の録音などから、AOKI前会長から森氏への便宜供与の依頼があった事実が明らかであれば、金銭提供の趣旨が明確になるため、この弁解を付き通すことは困難になります。



また、そもそも、AOKI前会長が、従前から森氏と仕事とは別に私的関係があったのであればともかく、そうした関係性が特段ない森氏に対して、仕事を離れて見舞金として金銭を提供するというのも不自然です。



――立件の可能性はあるか?



とはいえ、弁解の内容にかかわらず、そもそも森氏という大物政治家に対する賄賂としては少額であることは否めません。



そのため、便宜供与を依頼する明確な発言の録音などがあり、200万円の提供の趣旨が明確であれば立件の可能性は高いですが、そうでない場合には、200万円の提供のみでの立件はハードルが高いと思われます。



●証拠がそろったら逮捕も視野に入っているかもしれない

――想定される捜査状況と今後の見込みはどうか?



特捜部は、面会時の録音等の物証から、すでに便宜供与の話があったことや金銭の提供があったことを把握している可能性があります。



そもそも、AOKI前会長が森氏に200万円を提供したことを自ら供述するメリットは少ないことから、否定できない物証を突き付けられて供述するに至ったのだと思われます。



特捜部は、今後も、AOKI前会長に対して、物証を武器にして、新たな供述を引き出す取り調べをおこない、全容解明を進めていくでしょう。



また、森氏については、先ほど述べたとおり、金額の点で立件のハードルがあるため、 森氏に提供された金銭はもっとあったのではないかと考えて捜査が進められると思われます。



AOKI前会長の供述と異なり、森氏が200万円の提供自体否定していることは不自然ですから、本当はもっと高額であるため、200万円の提供すら認められない状況にあることも想定されます。



また、AOKI前会長は、高橋元理事を介して、森氏の周辺人物やその他関係者にも広く金銭を提供していた可能性もあります。



これまで二転三転させてきた森氏の供述状況を踏まえると、特捜部は、証拠がそろった場合には、森氏の逮捕も視野に入れているかもしれません。




【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/