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「男を追い出したい」 生活費負担してきた「ヒモ飼い」女性、恋愛感情失せて別れ決意…弁護士が教える「縁切り」方法

2022年09月03日 09:31  弁護士ドットコム

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同棲している男性を養う「ヒモ飼い」と呼ばれる女性たち。お金の負担をすることに苦痛を感じず、自らの意思でヒモを飼う人もいれば、交際相手が「ヒモ化」してしまった人もいるようだ。


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数年もヒモを飼い続けているという女性は、相手の生活費や遊び代、家賃などすべてを負担してきた。当初は、恋愛感情があったが、身勝手なふるまいや暴言・暴力が続き、「別れて家を追い出したい」と思うようになったという。



ヒモを追い出すための方法について、小田紗織弁護士に聞いた。



●関係解消せざるを得ない状況にヒモ男を追い込む

ーー法的手続きを踏めば、ヒモ男を家から追い出すことはできるのでしょうか。



たとえば夫婦関係を解消するための離婚には、調停や訴訟という法的手続きがありますが、「ヒモ男との関係を解消すること」を目的とした法的手続きはありません(※事実上の夫婦関係がある場合には、内縁関係調整調停という手続きはあります)。



そのため、心理的あるいは物理的に関係解消せざるを得ない状況にヒモ男を追い込むしかありません。



相談者自身が、親族や友人の協力を得るなどして、ヒモ男と話し合いをして関係解消して、ヒモ男に荷物をまとめて出ていってもらうのが最も理想的な方法です。



ーーヒモ男が家を出るための「条件」として金銭を要求してきた場合、応じたほうがよいのでしょうか。



相談者はこの条件に応じる義務はありません。しかし、もし応じてもよいと考えるのであれば、金銭の支払いと引き換えに出ていってもらうのもよいでしょう。



あとで説明しますが、もし強行的な手段をとる場合、相談者にかなりの費用負担が生じる可能性があります。そのリスクを踏まえれば、いくらか払って円満に出ていってもらうのは合理的です。先に金銭を渡してしまうと、出ていってくれない場合もあるので、相手が出ていってから渡すほうがよいでしょう。





ただし、この方法にはリスクもあります。相談者の住居が相手に知られているので、再びヒモ男が訪問してくる可能性があります。



ここで、相談者がこれまでの情でヒモ男を招き入れてしまうと、再び出ていってくれない状況に陥ることも考えられます。そこで、できればヒモ男が出ていったあとに、相談者自身も速やかにヒモ男が知らない場所へ転居するのがよいでしょう。



また、ヒモ男から暴力を振るわれた際に警察へ通報し、その介入によって物理的に分離された際に、ヒモ男に出ていくことを約束させ、鍵の返却を受け、その後、ヒモ男の荷物の返却などをおこなうケースもあります。この場合、ヒモ男と再び関わることのないように、相談者自身もヒモ男の知らない住所へ速やかに転居しましょう。



●ヒモ男との関係を「強引に」解消する方法

ーー先ほどの「強行的な手段」とは、どのような方法ですか。



まず、家の賃貸借契約を解約し、ヒモ男にも解約したことと退去期限を示して出ていくように伝えます。また、相談者自身もヒモ男の知らない場所に出ていくことで、ヒモ男との関係を物理的に解消するという方法です。



この方法のリスクは、(1)相談者自身の荷物の問題、(2)ヒモ男の荷物の問題、(3)ヒモ男が退去期限を守らず居座る場合の問題――があります。



ヒモ男がすんなりと諦めて期限までに自身の荷物をまとめて出ていき、退去期限の日に相談者が自身の荷物をまとめて運び出し、大家さんに明け渡しができれば、すべての問題は解決されて、一番よい流れといえます。





ーーあらかじめヒモ男が外出する日時がわかれば、その日時に合わせて相談者の荷物を運び出せそうです。ヒモ男の予定が読めない場合や、荷造りしようとすると妨害される可能性がある場合は、どうすればよいでしょうか。



この場合、相談者は大切な荷物など最低限の物だけを急ぎ持ち出して、出ていくしかありません。ただ、残された荷物をヒモ男が勝手に処分したり、損壊したりするリスクはあります。ヒモ男にはそれを賠償する責任はありますが、責任を果たさせるのは現実的に難しいです。



ヒモ男がひとまず出ていったものの、荷物が残っている場合、あるいはヒモ男が外出した隙に大家さんの承諾を得て鍵を変えて強引に追い出した場合は、相談者がヒモ男の荷物を保管して、ヒモ男に引き取ってもらうようにしなければなりません。



荷物のやり取りなどをめぐってヒモ男と連絡を取らざるを得なくなりますし、勝手に処分すればヒモ男から損害賠償請求をされるなど、面倒な関係が続いてしまいます。



ーーヒモ男が退去日を過ぎても居座る場合は、どうすればよいですか。



大家さんとの関係では、相談者が建物の明け渡し義務を果たしていないことになります。また、賃貸借契約の中で第三者との同居が認められていない場合や同居人を申告していなかった場合は、その点でも契約違反を指摘される可能性があります。



最終的には、大家さんがヒモ男に対し建物退去明け渡し請求をし、明け渡しが判決などで認められたあとも、ヒモ男が出ていかない場合には、強制執行をして出ていかせるということになります。



これに伴い、大家さんは、ヒモ男が出ていくまでの家賃相当額や要した費用など、生じた損害について、相談者や賃貸借契約の連絡保証人へ請求することは十分にあり得ます。そのため、このような場合は大家さんに対する責任を覚悟しなければなりませんが、ヒモ男との生活がいつまでも続くよりは、リスクを覚悟のうえでけじめをつけるほうが良いと思います。



いずれにしても、相手ありきの話です。何が起こるか考えだすときりがありません。その時々の状況ごとに法的問題やリスクを弁護士に相談しながら進めていきましょう。




【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/