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関ジャニ∞メンバー分析 第5回:安田章大、マルチな才能に溢れる表現者 並々ならぬ覚悟から覗かせる慈愛の心

2022年09月02日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

関ジャニ∞

 デビュー18周年を記念したスタジアムライブに続いて、冬にはドームツアー 『18祭』を開催する関ジャニ∞。歩みを止めることなくeighter(関ジャニ∞ファンの総称)に寄り添い続け、アイドルとして第一線で活躍する5人の魅力に触れる。最終回は安田章大。


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■マルチな才能と卓越した表現力の持ち主


 安田章大は、現在の関ジャニ∞のメインボーカル、リードギターを主に担うテクニカルな面に加え、ダンスに作詞作曲、時には役者やファッショニスタとして、さらにアートの分野でも才能を発揮するマルチアーティストである。1997年にジャニーズ事務所に入所し、同期にはメンバーの大倉忠義や丸山隆平がいる。ジャニーズJr.時代からバンドスタイルのユニットでギターを担当し、2004年に関ジャニ∞としてCDデビューしてからも、アイドルでありながら本格的なバンドスタイルを追求していくグループに欠かせない存在となった。作詞や作曲を手がけることも多く、「Snow White」のような繊細な楽曲からダンサブルな「Dye D?」など、そのジャンルは多岐にわたる。他にも映画『スパイダーマン:ホームカミング』日本語吹替版の主題歌「Never Say Never」では作詞作曲、「Black of night」では作詞作曲のみならず振り付けなど全面プロデュースを手がけている。


 ボーカリストとしての安田に着目すると、音域が広くリズム感に優れており、高い歌唱力の持ち主だ。さらに特筆すべきは卓越した表現力で、現在の5人体制となって初のシングル曲「友よ」の歌い出ししかり、「象」「オモイダマ」といった楽曲での安田の歌声は、目を閉じて聴いても情景が伝わってくるようだ。メンバーとのハモりでは、相手によって声質を意識的に変えて印象的なハーモニーを響かせ、楽曲によっては1歩後ろに下がり、他のメンバーのパートを際立たせているように感じる。ソロ曲「アイライロ」「わたし鏡」などのアコースティックギターによる叙情的な楽曲での表現力も素晴らしい。


 また、デビュー以前から卓越したダンステクニックを披露していた安田。激しいダンスを伴う坂本昌行のソロ曲「Shelter」でも見事なパフォーマンスを見せていたことが記憶に残っている。安田のダンスは所謂“キメ”と“軸”に優れた正確さが特徴で、全身を使ってダイナミックに表現。アルバム『8BEAT』完全生産限定盤収録で自身が作詞作曲も担当しているソロ曲「9」のMVでも、力強さとしなやかさを併せ持つダンスを見ることができる。


■魂が揺さぶられるような迫真の演技


 そして安田を語る上で欠かせないのが、役者としての軌跡である。舞台初主演作『カゴツルベ』では花魁に身を焦がす佐野次郎左衛門役を切なく、艶やかに演じ、存在感を見せつけた。以降も『トラストいかねぇ』『ジュリエット通り』など主演舞台で経験を重ねてきた安田。中でも大きな評価を得たのが、2017年に挑んだ福原充則の脚本・演出による舞台『俺節』である。安田が演じたのは演歌歌手を目指す津軽出身の高校生・海鹿耕治、通称“コージ”。安田の芝居と魂のこもった歌声は、文字通り心臓をわしづかみにされるほど鬼気迫るものがあったが、本作は後述の大手術直後の舞台であったことが後に報じられた。まさに人生そのものを賭けて挑んだ作品となった。


 再び福原とタッグを組んだ舞台『忘れてもらえないの歌』の滝野亘役ではバンドのボーカル&ギターとしてジャズに初挑戦し、戦後の“生き抜けず膝をつき負けていく者達”を取り巻く世界を見事に演じた。そして9月26日からは、福原との“昭和三部作”の完結となる舞台『閃光ばなし』に挑む。昭和38年の葛飾区青砥を舞台に、安田が演じるのは川沿いで自転車屋を営む、佐竹是政役だ。人間の欲望が良くも悪くも蔓延する時代を生き抜く人々の姿が描かれた作品で、安田がどのように泥臭くも体温を感じる主人公を演じてくれるのか、非常に楽しみである。


 冠番組『関ジャニ∞の「あとはご自由に」』(フジテレビ系)ではメンバーが有名俳優を相手にアドリブで演技に挑んでいるが、安田はどんなシチュエーションであっても非常に柔軟性がある印象だ。相手に合わせながらも、独自の解釈で展開の流れを作っていくテクニックは、これまでの舞台の経験による賜物だろう。2023年1月公開予定の映画『嘘八百 なにわ夢の陣』への出演も決まり、ますますの活躍に期待したい。


■大病経験を経たアーティストとしての覚悟


 2017年、脳腫瘍のひとつである髄膜腫の摘出手術を受けた安田。その後、自ら企画を持ち込んだという初のソロ写真集『LIFE IS』では広大な北海道の自然を舞台に、“生と死の輪廻”というテーマで苦悩や葛藤を抱えた等身大の姿を届けた。アイドルの写真集では異例ともいえる闘病中の姿も隠すことなく掲載し、「生きていられることのありがたさ」を表現した。


 『KANJANI’S Re:LIVE 8BEAT』完全生産限定盤のドキュメンタリー映像で、脱退したメンバーについて触れた安田。「辞められたらしんどかった、リードボーカルみんなおらんし、人気者が辞めていったし」と率直な気持ちを吐露したが、どんな状況下でも誰かを責める言葉を決して口にせず、真っ直ぐで愛情深い実に安田らしい姿であった。


 前述の写真集の中で、大病を患ったとは言わずに“授かった”と表現した安田の言葉に、彼の全てが集約されているように思う。青碧の海のような慈愛に満ちたスピリットを持つ“ヤスくん”は、かけがえのない精神的支柱である。(北村由起)