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モードの売り場3フロア新設 「神戸阪急」大胆リモデルの狙いとは

2022年09月01日 17:02  Fashionsnap.com

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「Hankyu Mode Kobe」3階フロア

Image by: 神戸阪急
神戸阪急新館にモードファッションを中心とした売り場「Hankyu Mode Kobe」が新設され、8月31日にオープンした。同店にモードファッションの売り場が設置されるのは初めて。1階から3階にわたる3層構成で、もともとは「ロフト(LOFT)」が入居していたという(※ロフトは4階の1フロアに縮小移転)。Hankyu Mode Kobe新設の狙いをバイヤーの成冨友亮氏と江口美佳氏に聞いた。

◇リモデルの総投資額約80億円 モード売り場は目玉の一つに
 神戸阪急は、セブン&アイ・ホールディングスとそごう・西武が保有していた「そごう神戸店」が前身。事業と資産を譲受したエイチ・ツー・オー リテイリングが2019年10月に現在の屋号に変更した。屋号変更時に一部フロアの改装を実施したが、全館リモデルは初めて。そごう神戸店時代を含める全館改装は約20年ぶりだという。リモデルの総投資額は約80億円。Hankyu Mode Kobeはその目玉の一つとなる。
 神戸阪急が位置する三宮エリアはまちの活性化に向けて再開発が進められており、昨年4月には新たなランドマークとして神戸三宮阪急ビルが開業。新しい駅前空間「三宮クロススクエア」や、西日本最大級となる中長距離バスターミナル、歩行者デッキなどの整備も進められていく予定で、完成後は地元住民に限らず、外国人観光客を含む遠方からの来街が見込まれている。
 神戸阪急のリモデルはまちの活性化を見越して先んじて取り組んだという。「モードという考え方で売り場を展開しているところは三宮の商圏にはない」(成冨氏)という背景から、阪急百貨店の強みの一つであるモードファッションの編集力や企画力を掛け合わせた新しい売り場を設けることで、三宮エリアにファッションやライフスタイルの切り口でにぎわいの創出を目指す。神戸はデザイン都市としての取り組みを強化していることから、クリエイターの来店増も期待する。
◇メンズとウィメンズをミックスした売り場で「ライフスタイルとしてのモード」を提案
 これまでミセスやコンテンポラリーファッション、地元ブランドを取り扱う売り場はあったが、モードに特化した売り場は神戸阪急としては初となる。
 コンセプトは「ONE」。百貨店はメンズとウィメンズで売り場を分けていることが多いが、Hankyu Mode Kobeはメンズ×ウィメンズ、ファッション×ライフスタイル、オールド×ニュー、グローバル×ローカルといった異なる要素をミックスすることで、多様性を打ち出しながらワンストップで買い物ができる空間に仕上げた。同社としてもチャレンジングな取り組みだとしている。総売場面積は約2500平方メートル。展開ブランドは33ブランドで、7割以上が神戸エリア初出店ブランドだ。コンセプトに基づき、多くのブランドはメンズとウィメンズ両方のアイテムを取り扱う。
■出店ブランド一覧 ※◎は神戸初出店ブランド<新館1階 デザイナーズI>・ブルーボトルコーヒー(BLUE BOTTLE COFFEE)・コム デ ギャルソン ポケット(COMME des GARCONS POCKET) 取り扱いブランド:PLAY COMME des GARÇONS、COMME des GARÇONS PARFUMS、WALLET COMME des GARÇONS・ザ・ロウ(THE ROW)◎<2階 デザイナーズII>・アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)◎・アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)◎・クロエ(Chloé)・クロエ・ル・グラシエ(Chloé Le Glacier)◎・コーナー コウベ(CORNER KOBE)◎・ディースクエアード(DSQUARED2)・ジバンシィ(GIVENCHY)◎・ジル サンダー(JIL SANDER)・メゾン マルジェラ(Maison Margiela)◎・マリーエレーヌ ドゥ タイヤック(Marie-Hélène de Taillac)◎・マルニ(MARNI)・エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)◎・ノーズショップ(NOSE SHOP)◎・ソワリー(Soierie)◎・トム ブラウン(THOM BROWNE)◎<新館3階 クリエイターズ>・アミ パリス(AMI PARIS)◎・ブルーナボイン(BRÚ NA BÓINNE)◎・ブンザブロウ(BUNZABURO)◎・カルバン・クライン(Calvin Klein)◎・ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)◎/丸山邸 神戸別邸◎・ケンゾー(KENZO)◎・コトシナ(KOTOSHINA)◎・メゾン キツネ(MAISON KITSUNÉ)◎・マニキュリスト(manucurist)◎・マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)・ヌメロ ヴェントゥーノ(N ̊ 21)◎・ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP)◎・ウカ(uka)◎・ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル(Vivienne Westwood RED LABEL)・ワーム コウベ(WORM KOBE)◎
 百貨店で扱うモードファッションは基本的に単価が高く、足を運ぶ頻度が少ないことが課題になりがちだ。Hankyu Mode Kobeではデイリーに利用できるように、フードやインテリアなどいわゆる“非ファッション”の売り場が約25%の構成比になるように設計した。“非ファッション”の店舗には「ブルーボトルコーヒー(BLUE BOTTLE COFFEE)」や、「クロエ(Chloé)」のクラフトアイスショップ「クロエ・ル・グラシエ(Chloé Le Glacier)」、「ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP)」などがあり、クロエ・ル・グラシエは阪急百貨店との共同企画で実現した世界初の業態となる。

  「トム ブラウン(THOM BROWNE)」もバーを併設した店舗を展開。通常はボトルでしか提供されないスパークリングワインなどの銘柄をグラスで楽しめるようにした。コレクションアイテムやバーでのドリンクのほか、阪急うめだ本店に構える「トム ブラウン チョコレート(THOM BROWNE CHOCOLATE)」で扱っているチョコレートも販売している。

 トラフィックの多いエスカレーターに近いエリアにはジュエリーやビューティといった、デイリーに利用したくなるようなブランドを配置。「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」は東京・青山にある「丸山邸 MAISON de MARUAYAMA」の“神戸別邸”と位置付け、コレクションラインに加えてフードや家具、インテリア雑貨など様々なアイテムが揃うライフスタイルコンセプトショップとして展開している。「ゴローズ(goro’s)」の買取販売専門店「コーナー(CORNER)」や、プレミアムスニーカーを扱う「ワーム コウベ(WARM KOBE)」といったリセール関連のショップも揃え、サステナビリティを訴求するという。

 また、リニューアルオープン日の8月31日から9月13日まで開催されるマルニのイベント「MARNI MARKET KOBE」では、夙川の名店「ミッシェルバッハ」の特別パッケージのクッキーローゼが登場。マルニのアーカイヴプリントハンカチで包んだ特別仕様で、各日数量限定で販売する。

◇六甲山を救え 地域課題に寄り添う新プロジェクトも始動
 リモデルに伴い、地域課題の解決につながる取り組みを行いたいという考えから、木材価値を創造するコミュニティ企業「SHARE WOODS」の山崎正夫代表と協業。山崎代表によると、神戸のシンボルでもある六甲山で木を育てるために行っている間伐(過密になった樹木の一部を伐採する作業)で発生した大量の木材の活用や流通に向けた仕組みづくりに加え、地域の産業から出た木材の利活用も課題となっているという。神戸阪急は「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」や「ジル サンダー(JIL SANDER)」といったグローバルブランドと一体となり、その木材を什器や備品に使用している。
 阪急百貨店の初代社長 清水雅氏がかつて禿山だった六甲山の植林や緑化活動に注力していたという背景もあり、成冨氏は今回のプロジェクトに縁を感じているという。「グローバルデザインに応えることができるものづくりの文化があること知ってほしい」とし、ローカルとグローバルを掛け合わせたプロジェクトとして今後も継続していきたい考えだ。

 Hankyu Mode Kobeの実現には2年以上の歳月をかけたという。江口氏は「“服を買う”というより“ファッションを楽しむ”場にできたらと思い、Hankyu Mode Kobeの計画を進めてきたので、ご来店いただき狙い通りファッションを楽しんでもらえたら嬉しい」とコメントした。

 なお、Hankyu Mode Kobeに先駆けて、「セリーヌ(CELINE)」などのラグジュアリーブランドが新館インターナショナルブティックスとして6月下旬から先行オープン。Hankyu Mode Kobeのオープンに併せて、本館では2~4階にビューティの売り場「KOBE HANKYU BEAUTY」が新設されたほか、本館3階に売場面積を2倍に拡張した婦人靴売り場がオープンするなど段階的にリニューアルが進められている。


■神戸阪急「Hankyu Mode Kobe」:特設ページ