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紀藤弁護士「省庁横断できないなら特命大臣置くべき」消費者庁の霊感商法対策会議がスタート

2022年08月29日 20:31  弁護士ドットコム

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消費者庁は8月29日、第1回霊感商法等の悪質商法への対策検討会をオンラインで開催した。委員は弁護士や民法学者ら8人で、河上正二東京大名誉教授が座長を務め、河野太郎消費者相も参加した。


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宗教法人に対する多額の献金被害が問題となっていることを受け、委員からは民法上の「契約」「贈与」と分けて考えていく必要があるとの意見が上がった。



世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士は、省庁横断で動くべきだと強調し「それができないなら内閣総理大臣直轄で特命大臣を置いてほしい」などと訴えた。



●被害件数は年1500件程度で横ばい

河野大臣も冒頭、物品の販売だけでなく、寄付の問題に言及した。「首相からもスピード感をもってとの指示がある。頻繁に集まって議論をしたい」とあいさつした。



消費者庁によると、2017~2021年度に霊感商法等で相談があったのは約1200~1500件で、3000件程度だった10年前よりは減少しているものの、横ばい傾向が続いている。



2021年度の相談については、平均契約額は110万円だが、100万円以上1億円未満の高額被害も28%いる。



社会心理学者でカルト問題に詳しい西田公昭立正大教授は、30年前から今もなぜ被害が続いているのかを考える必要があると指摘。「たとえ高等教育を受けていても、目に見えない恐怖に日本人は弱い。こういう視点で対策を考えていきたい」と述べた。



●「一般の契約と一緒に扱ってはならないのでは」

2018年の消費者契約法改正で国会議員として取り消し権の議論にも加わった菅野志桜里弁護士は、取り消し権の拡大はどれくらい効果があったのかを検証する必要があると指摘。「売買を献金として免れている問題を検討すべきだ」と述べた。



宮下修一中央大教授も個人的意見としながらも「献金は自発的な意思のもとで出されているかというと、必ずしもそうではない。勧誘目的を告げられず、人間関係のなかで巻き込まれた場合、一般の契約と一緒に扱ってはならないのでは。突き詰めて考えたい」とした。



紀藤弁護士は、1994年の福岡地裁判決は献金被害について勧誘を指示した旧統一教会の責任を認めていることを挙げ「『自由意志』ならば普通は違法にならないはず」と指摘した。



「憲法で認められている『信教の自由』について限界はどこにあるのかという議論になると、学者も思考停止する。多くの市民が共有できていない」とし、議論を促した。



●紀藤氏、先例にとらわれない対応を要望

また、紀藤氏は、消費者庁は先例にとらわれずに多角的に動いてほしいと注文した。ネットでライブ中継されているこの会議での議論を、法務省や警察庁が行っている関係省庁連絡会議でも共有することが必要だと述べた。



かねてから連絡会議には、2世問題に関わる厚労省などが入っていないことを問題視していた。「厚労省、外務省、文科省、地方自治体(総務省)も入ってメンバーを増やし、省庁横断でやってほしい。それができないなら内閣総理大臣直轄で特命大臣を置いてほしい」



さらに、長年活動している民間相談窓口を紹介し、どんな相談があるかを調査した上で、国がこうしたところへ委託するか、中立的な窓口をつくることを検討するよう求めた。



検討会の委員は以下の通り(50音順、敬称略)
河上正二 東京大名誉教授、青山学院大客員教授
菅野志桜里弁護士(一般社団法人国際人道プラットフォーム代表理事)
紀藤正樹弁護士(リンク総合法律事務所所長)
田浦道子 消費生活相談員(相模原市消費生活総合センター)
西田公昭 立正大教授
宮下修一 中央大教授
山田昭典 独立行政法人国民生活センター理事長
芳野直子 日本弁護士連合会副会長