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もうすぐ新型登場? ランボルギーニ「ウルス」はなぜヒットしたのか

2022年08月29日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
世界で売れているランボルギーニの半数以上はSUVの「ウルス」だ。「ランボがSUVを開発中」とのニュースが流れた当時、自動車ファンからは懐疑的な声も聞かれたものだが、今や押しも押されもせぬ同社の最量販車種となった。高性能版がもうすぐ登場するウルスの魅力を改めて考えてみたい。


○ランボの屋台骨を支える「ウルス」



2018年に市販が始まったランボルギーニのハイパフォーマンスSUV「ウルス」。初めて乗ったのは2019年春のテストドライブだ。栃木県内のクローズドコースでフルスロットルの加速(200km/h近くまで)とフルブレーキを繰り返し絶対性能を体験。30度近い土の登坂路や水路の通過、さらには会場周辺にある狭い田んぼ道(これは4WS=4輪操舵を試すため)や砂利道を駆け抜けるオフロード性能を試した。その年末にはイタリアアルプスの山岳路で雪道やアイスバーンでの踏破能力を試すことができたし、もちろんそこに向かうまでの高速道路でのハイスピードドライビングも。おまけにウルスの製造工場も見学できた。


さて、ランボルギーニのSUVといえば、1986年に登場した「LM002」を思い起こす方も多いだろう。こちらはスーパーカーの「カウンタック」などで使用していた5.2LのV型12気筒エンジンを搭載したピックアップトラック形状の4人乗りスーパーオフローダー(最高速度は200km/hオーバー!)だったのだが、残念ながら商業的に成功したモデルとはいえなかった。


そんなこともあって、ランボが新たなSUVモデルを開発していることに対し、当初は懐疑的な声も多かったようだ。しかしデビューするやいなや人気に火がつき、SUVブームの渦中だったこともあって世界中で大ヒットに。フォルクスワーゲン(VW)グループのプラットフォームを採用したことによる品質感、迫力あるスタイル、650PS/850Nmの4.0L V8ツインターボと4WDシステムの組み合わせによる0-100加速3.6秒、最高速度305kmhというパフォーマンス、4~5人の乗員と多くの荷物を載せることのできるマルチパーパスな能力などが認められた。ランボもウルスのヒットを正確に見越していたようで、本国サンタアーガタの工場面積と従業員数を倍増させ、需要にしっかりと対応した。


数字的に見ても、ランボの2021年における世界販売台数8,450台のうち59%の5,021台がウルスだったし、直近の2022年上半期では世界全体で5,090台(過去最高)が売れているというから成功の度合いがわかる。スーパーカーの「アヴェンタドール」と「ウラカン」が39%で、残りの61%がウルスだというからなかなかすごい。

○日本を一周した「ウルス」と久々の再開



2021年春、ランボルギーニはウルスで日本を1周するプロジェクト「URUS Challenge : UNLOCK ANY ROAD JAPAN」を実施。世界が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける中、サーキットから山道、砂地、氷、砂利に至るまで、どんな道も臆することなく走行するウルスが、この状況下だからこそあらゆる道を解き放ち、自由というものの真髄を日本全国で体現し、日本の美しさ、力強さなど多くの魅力を発信するというのが旅のテーマだった。

12人のジャーナリストがバトンタッチしながら、1台のウルス(イエローのパールカプセル仕様)で日本を縦断する同イベントには筆者も参加。4日間で広島から大阪までを走破するルートを担当した。この企画は豪華な写真集まで制作するという力の入りようで、同時期の本国ではイタリア各地の名所で撮影したランボの新旧各車を紹介する写真集が発行されている。


そして今年は、長野で開催されたランボルギーニオーナーによるドライブイベント「GIRO Japan」に取材車のウルスで参加。なんとこの個体は、ウルス チャレンジで使用した「品川310 に・650」ナンバーの個体そのもので、なんだか久しぶりに旧友にあったような、ちょっと嬉しい気分にさせてくれた。


昨年乗った際には新車同然だったパールカプセルのウルスは、メーターを見ると走行距離がすでに1.2万kmを越えていた。筆者以外にも数々のドライバーによってテスト走行が行われた証拠だ。



自宅の駐車場に持ち込んでみると、あいかわらず全長5mオーバーというその巨体にちょっとびっくりさせられるけれども、すぐに慣れる。走行モードを「ストラーダ」にしておけば、住宅街でもエンジン音を気にするほどではないし(V8に火を入れるときだけは結構吠えるが)、4輪操舵の4WSのおかげでステアリングは思ったより切れる。


一方、長野に向かう高速道路では、23インチの超大径タイヤを履いているにもかかわらず見事な直進性とセダン並みの乗り心地の良さを体験できた。ハイパワーが各部に及ぼすと思われる経年劣化がほとんど見られていないことに気付かされる。燃費は一般道だけだと6.8km/L、高速を含めると9.8km/L程度を表示していた。

○ハイパワーモデルが間も無く登場



数あるハイパフォーマンスSUVのなかでも、最もポピュラーなパワートレインとなっているのが排気量4.0LのV8ツインターボエンジンで、現在ウルスが搭載するそれは最高出力650PS/6,000rpn、最大トルク850Nm/2,250~4,000rpmという圧倒的な力を発生する。とはいえ、最近では同じVWグループであるアウディの高性能版「RS Q8」が600PS/800Nmまでパワーアップし、さらにポルシェの「カイエンターボGT」はウルスとほぼ同程度の640PS/850Nmを発揮する。ほかではメルセデスの「AMG GLS」が612PS/850Nm、BMWの「X5Mコンペティション」が4.4L V8ツインターボで625PS/750Nmという数字に。また、ベースモデルが550PS/700Nm(AMG製)だったアストンマーティンの「DBX」は、最新の「707」モデルではその車名の通り、707PS/900Nmというウルスを大きく上回る強力なエンジンを搭載することになった。



一方、アストンと同じ英国ブランドには別格の12気筒エンジン搭載モデルもあって、6.0L W12を積むベントレー「ベンテイガ」は635PS/900Nm、6.75L V12を積むロールスロイス「カリナン」は600PS/900Nmという具合だ。そして、同じイタリアのライバルメーカーからは、まもなく最新SUVモデルが投入されるという噂になっている。



そんな状況の中、ランボルギーニでは同じカテゴリーの中でのトップパフォーマンスをキープするべく、ウルスの高性能版である「ペルフォルマンテ」モデルを世に送り出そうとしている。来年から始まる電動化を前に「やるべきことはやる」の姿勢を貫くランボルギーニ。どんな走りを見せてくれるのか、試乗する日が待ち遠しい限りである。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)