2022年08月26日 18:01 おたくま経済新聞
ビーズに細い糸を通して作るビーズアート。多くはブレスレットやチャーム、ペンダントヘッドといった商品をイメージしますが、もっと大きなものだって作れます。
咲kura(さくら)さんが作ったのは、実際にかぶることのできる、きらびやかな王冠。ワイヤーや接着剤などは使わず、糸のテンションのみで形をキープした立体作品になっています。
8歳の時、祖母からプレゼントされたビーズとビーズ本がきっかけで始めたという咲kuraさん。祖母がビーズワークを趣味にしていたこともあり、一緒に作品作りを続けたのだそうです。
普段は、ビーズを糸に通して編んでいくオフルーム(ビーズステッチ)という技法で、耳飾りやブレスレット、ネックレスなどのアクセサリーを作っているのだとか。実際にかぶれる王冠、という大作にチャレンジしたのは、Twitter上の企画がきっかけだったといいます。
「2019年の初め、Twitter内で行われている、3か月で作りたいものを作る『とにかく見てくれ展』という企画に参加するために作り始めました」
糸で編んでいくオフルームのビーズワークは、使えるビーズの種類がワイヤーで編む時に比べて多く、デザインの自由度も大きいとのこと。しかし、糸は細く柔らかいため、大きな立体物を作るには、自重で形が崩れないよう、糸のテンションやビーズの配置といった設計に緻密な計算が必要になるのだといいます。
初めから丸ごと王冠を作っていくわけではなく、パーツごとに分けて作り、それをさらにビーズと糸で編み上げて冠の形にしていきます。自立するように強度を考えてビーズを配置すると、どうしても複雑な構造になってしまい、構想していた時よりも編み上げるのに相当時間がかかってしまったのだとか。
「それぞれのパーツがしっかり作れても、つなぎの部分も編み込まないと崩れてしまうので、全体的に難易度が高くなってしまいました。編んでも編んでも作業が進んでいないように感じる状況に、心が折れかけました」
企画の締め切りには数日オーバーして間に合わなかったものの、完成した冠は細かいシルバーのビーズが織りなす緻密な輝きと、ブルーの宝石カットビーズ、パールビーズなどで構成された贅沢な品になりました。
まるでプラチナの枠に石がはめ込まれているようにも見えますが、すべては糸に通されたビーズによるもの。思った通りの形状となるよう、ビーズの配置や糸にかかるテンションを調整し、型崩れせず自立した状態をキープしています。
完成した直後は「もう作らなくていいと思う、開放感の方が大きかった気がします」と咲kuraさん。達成感と喜びは、少ししてから湧いてきたといいますから、3か月に及ぶ制作期間の苦労が想像できますね。
ビーズと糸だけで編み上げたこの冠は、SNSにアップされると大きな反響を呼びました。糸で編まれているとは思えないという声も多く「何度も途中で投げ出そうとしましたが、諦めずに最後まで作り切って良かったと思えます」とも咲kuraさんは語っています。
もう一度作るのは体力・気力の面で難しい冠ですが、そのほかの作品も緻密で神経の行き届いたものばかり。咲kuraさんの作品はminneでも販売されています。
<記事化協力>
咲kuraさん(@sakura_eri08)
(咲村珠樹)