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iPhoneとの“連係カメラ”が便利! Macの新OS「macOS Ventura」を試す

2022年08月23日 07:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース

アップルが今秋に正式リリースを予定するMac用の最新OS「macOS 13 Ventura」のパブリックベータテストが開始されています。新世代macOSのハイライトの中から、最も注目されている「連係カメラ」の新機能やデスクビューアプリの使い勝手を中心にレポートします。


なお、パブリックベータ版の画面を公開することは禁じられていますが、本稿では特別に取材の許可を得たうえで、macOS Venturaパブリックベータの画面を掲載しています。また現在開発中であるパブリックベータ版のユーザーインターフェースは、正式版OSのローンチ時には変更になる可能性もあることをあらかじめご了承ください。



macOS Venturaのパブリックベータテストは、有効なApple IDと対応するMacを所有するユーザーであれば、Apple Beta Software Programの規約に同意・登録して誰でも無料で参加できます。次期macOS Venturaに対応するMacは以下の通りです。


2017年以降のiMac、iMac Pro、MacBook、MacBook Pro

2018年以降のMac mini、MacBook Air

2019年以降のMac Pro

2022年発売のMac Studio



iPhoneがユーザーの顔と手元を同時に写せるWebカメラになる



連係カメラ(Continuity Camera)とは、Macに同じユーザーのApple IDに2ファクタ認証でサインインしているiPhoneをペアリングし、iPhoneを外部カメラとして使うための機能です。


macOS Mojave以降、iOS 12以降から実現したMacとiPhone/iPadによる連係カメラがこのたび機能を拡張し、iPhoneをビデオ会議のWebカメラとして使えるようになります。



さらに、超広角カメラを搭載するiPhone 11以降の機種を組み合わせると、iPhoneがオーバーヘッドカメラのようになり、ユーザーの顔画像と一緒に手元の様子を同時に写せる「デスクビュー」アプリも加わります。

iPhoneとMacは無線・有線の両方の接続に対応



新しい連係カメラの利用には、macOS 13 VenturaをインストールしたMacと、iOS 16をインストールしたiPhoneが必要です。



MacとiPhoneの双方でWi-FiとBluetoothを有効にすると、対応するデバイス同士が自動で無線通信を始めて互いを認識。接続プロセスが完了すると、連係カメラが使えます。あるいはLightning-USBケーブルにより、iPhoneをMacに接続して有線接続で使うこともできます。


デスクビューアプリはiPhoneの超広角カメラを使うことから、先述の通りiPhone 11以降の機種であることが条件になります。一部のカメラエフェクトは、対応するiPhoneがさらに限定されます。以下で各内容を詳しく説明します。

機器連携がとてもシンプル



Apple M1チップの登場以来、MacBookシリーズが搭載するFaceTime HDカメラの画質もかなり良くなりました。正直に言って、わざわざiPhoneを外付けカメラとして使う必要もないのでは、と筆者も考えていました。



ところが、実機で連係カメラを試してみると、さすがAppleデバイス同士と褒めてあげたくなるほどシンプルな使い勝手が実現されていて、積極的に使いたくなります。これは「アリ」だと考えを改めました。


画質の向上を実感できるかは、使うMacの機種にもよると思います。macOS Venturaが入れられるIntel製チップ搭載のMacであれば、そのメリットがより強く感じられそうです。

ベルキンからMagSafe対応アクセサリーが登場



連係カメラはiPhoneのメインカメラを使います。MacのFaceTime HDカメラが搭載されている位置あたりでiPhoneのカメラを固定できれば三脚などを使っても構いませんが、今回はベルキンが連係カメラのために開発を進めている専用アクセサリーを早めに入手できたので、こちらを使ってテストしました。


本製品は、MagSafeに対応するiPhone 12以降の機種に装着するマグネット式ホルダーです。iPhoneの背中にペタッと付けて、本体からフックを引き出してMacBookのディスプレイに載せるシンプルな使い勝手としています。通電箇所や回転機構は持ちません。そして、iPhoneを充電する機能もありません。Apple純正のMagSafe対応iPhoneケースであれば、iPhoneに装着したまま本製品を付けて、Macに載せられました。



筆者が手計測した直径は約6cm前後、質量は34g前後でした。価格や発売日については今のところ明らかにされていません。

Zoomで連係カメラを試した



今回のテストのため、macOS Venturaを入れたM1 MacBook AirとiOS 16入りのiPhone 13を用意しました。



MacにiPhoneを近づけてZoomアプリケーションを立ち上げると、iPhoneをWebカメラとして認証するように促すオンボードダイアログがMacの画面に表示されます。ここで連係カメラを有効化すると、iPhoneのカメラとマイクがZoomの入力デバイスになります。



連係カメラの使用中はビデオ会議等のコミュニケーションに集中できるよう、スマホに届く通知がすべてミュートされます。電話の通知はMacに転送されます。



FaceTime HDカメラとiPhoneのカメラによる画質を比べてみました。M1チップに統合されている画像信号プロセッサのデキがよいためか、画質に大きな差は感じませんでした。iPhoneによる連係カメラに切り換えると色の彩度がアップして、肌つやがよくなる印象はあります。通信回線が安定している環境で、Apple Studio Displayなどより解像度の高いディスプレイで映像を見比べれば、違いが明らかになるかもしれません。


iPhoneは縦横どちら向きにしても連係カメラが使えます。縦向きにすると、画面は被写体の人物にズームインした表示になります。


iPhone連係で使える「3つのビデオエフェクト」



コントロールセンターから各種ビデオエフェクトが選択できます。



常にカメラフレームの中央に人物を捉えるように追いかける「センターフレーム」は、その機能をビルトインしていないMacに、連係カメラが便利な機能を追加してくれる好例です。こちらは、超広角カメラを搭載するiPhone 11以降との組み合わせで使えます。



カメラに写る人物の背景に自然なボケ効果を付ける「ポートレートモード」は、Mac単体ではAppleシリコン搭載機だけで使えました。連係カメラがあれば、iPhone XRと第2世代のiPhone SE以降の機種を組み合わせることで、すべてのmacOS Ventura対応Macで利用できます。


さらにiPhone 12以降の機種であれば、人物の顔を明るく、周囲を暗くして引き立たせる「スタジオ照明」の効果が選択できます。


iPhone 12以降であれば、センターフレームを含む3つのビデオエフェクトを同時にかけることもできます。3つのエフェクトを同時にオンにしても、カメラの映像はカクつかず安定していました。



手元の様子が同時に写せる「デスクビュー」



ユーザーが話す様子に加えて、デスクの手元にあるものを見せたい場合には、連係カメラの新機能である「デスクビュー」が便利です。



コントロールセンターから機能を選択すると、アプリ化されているデスクビューが立ち上がります。この機能は、iPhoneの広角+超広角カメラを使います。2つのカメラで同時に撮影する動画をMacにストリームするため、超広角カメラを搭載するiPhone 11以降のメインカメラとパワフルなプロセッサが必要です。



デスクビューの映像は、iPhoneの超広角カメラによる垂直方向の広い視野を利用して、切り出したフレームに遠近感のゆがみを補正したあと、フレームを上下回転させることでデスクビューを作成します。本機能も、iPhoneが縦横どちら向きになっていても使えます。



デスクビューを起動すると、最初に超広角カメラで映すデスクトップの範囲を選択するカーソルがMacの画面に表示されます。撮影範囲の広い超広角カメラとはいえ、手元をぴたりと映し込むことがなかなか難しく、iPhoneを載せたMacとの距離を少し離す必要がありました。


通話中に手元にばかり意識が向くと、知らぬ間にユーザー自身が広角カメラからフレームアウトしていることもありました。センターフレームを同時に使うとよいでしょう。



アップルは、外部のデベロッパーもデスクビューを活用するアプリが開発できるように、WWDC 22以降からAPIの提供を始めています。ビジネスシーンに連係カメラとデスクビューを活用できるアプリが続々と登場してほしいですね。

ワークスペースの整理に役立つ「ステージマネージャ」



連係カメラの新機能のほかにも、macOS Venturaには楽しみな機能があります。iPadOS 16にも搭載される「ステージマネージャ」はその代表格です。



iPadOS 16のステージマネージャがどのようなものかは、先に本誌でレポートしていますので、合わせて参照してみてください。


iPadOSでは、ステージマネージャがマルチタスキングの向上に貢献する手応えがあります。macOSは、もともとマルチタスキングに優れるプラットフォームなので、むしろ複数立ち上げているアプリやウインドウを把握するための機能として位置付けられると思います。



実際に試してみると、macOSの画面センターにアクティブなアプリが表示され、左側には最近使用したアプリやウインドウが常時並んで表示されます。先ほどまで続けてきた作業を意識しながら、集中力を切らさずにマルチタスクがこなせそうです。


Macの画面左側にいつも使うアプリとウインドウが並ぶので、MacBookの場合は画面が少し手狭に感じられることが心配になるかもしれません。センターのアクティブウインドウを左側に持っていくと、最近使ったアプリのリストは自動的に隠れてくれます。アクティブウインドウを拡大して、最近使ったアプリのリストに重ねて表示することもできます。



もっとも、どちらかといえばデスクトップがすぐに散らかりがちになる画面の広いiMacやApple Studio Displayにメリットを実感させてくれそうな機能だと思いました。

iPhone/iPadに近づくMacのユーザーインターフェース



macOS Venturaは、iOS/iPadOSとの「見た目」と操作性のフュージョンがさらに加速しています。



「システム環境設定」の画面にはサイドバーが加わり、見た目がよりiOS/iPadOSライクになります。「時計」「天気」などiOS/iPadOSの定番アプリもmacOSに移植されました。わざわざiPhoneを立ち上げなくても、Macで仕事をしながら素速く天気を確認できて便利になりそうです。


新しいmacOS Venturaの登場により、Appleデバイスによるハードウエアとソフトウエアの双方による親和性がさらに高まり、「iPhoneのように使えるMac」の魅力がますます強く実感できそうです。


著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら(山本敦)