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王者決定は鈴鹿へ持ち越し。「戦略ミスが響いた」フェネストラズと「狙った戦いはできた」野尻【SF第8戦決勝】

2022年08月22日 19:10  AUTOSPORT web

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2022スーパーフォーミュラ第7戦&第8戦もてぎ サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
前日の第7戦とはうってかわり、気温30度を超える真夏日のなかでのレースとなった全日本スーパーフォーミュラ選手権の第8戦決勝。このレースでは野尻智紀(TEAM MUGEN)が優勝した場合、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)、平川亮(carenex TEAM IMPUL)の順位次第では、最終鈴鹿大会を待たずにシリーズチャンピオンが決する可能性もあった。しかし、平川が2位、野尻が4位、フェネストラズが6位に終わったことで、王座決定の瞬間は10月の鈴鹿大会へ持ち越しとなった。

 ただ、ランキング上位ふたりの第8戦は、ある意味で明暗がわかれる結果となった。

■「戦う相手を間違えなかった」野尻智紀

 予選3番手からのスタートとなった野尻。前述のとおり、自身が優勝すれば、もてぎ大会でのチャンピオン決定の可能性も見えてくるのだが、今回は冷静に“戦う相手”を見極めながらレースを進めた。

「今回も難しい分岐点はたくさんあったと思います。予選で、本当はサッシャ選手の前に出るつもりというか、それがベストだなと理解はしていたのですけど、彼も非常に速いドライバーですし、今回は(彼の前に出ることは)叶いませんでした」

「ただ、目の前にサッシャ選手がいるという位置関係だったので、スタートでいくしかないなと思っていました。そこはイメージどおりの展開に持ち込めたと思います。そこからは、僕のペースでサッシャ選手に対して、どういうふうにレースを作っていくか、そこだけを考えて走っていました」

 2022年シーズン、野尻が表彰台フィニッシュを逃すのは第4戦のオートポリス以来2度目。そのときも同じ4位というポジションだったのだが、今回は打って変わって前向きに物事を捉えている様子が印象的だった。

「もちろん結果としては4位でしたし、うまく戦略を組めば勝てたレースだったかもしれませんけど、優勝するとなると、かなりリスクを負った選択をしないといけなかったです。その点で平川選手は前日(第7戦)で悔しい結果になったと思うので、それらも踏まえて、今回はサッシャ選手をマークしてレースを進めました。なにが今必要なのかを理解しながら、争う相手を間違えなかったのが、良かったのかなと思います。狙った戦いはできたのかなと思います」

 10月の鈴鹿大会では、早ければ土曜日の第9戦でチャンピオンが決まる可能性が大きくあるのだが、そのことよりも、第8戦でフェネストラズの前でゴールして、彼に勢いをつけさせなかったことに大きな意味があると感じているようだ。

「今シーズンのサッシャ選手の結果を見ると、リタイア以外は僕と同じように4位だったり、表彰台を何回も乗るリザルトを残していたので、(今回も)間違いなく来るだろうなと思っていました」

「特に、爆発的ななにかが彼と、彼のチームで見つかったら、手をつけられなくなるなという危険性は感じていたので、ここで僕がポイント差を広げたことで、もしそうなっても(サッシャの勢いが増しても)僕にできることが今は増えてて、最終戦に対していろいろな選択肢を持つことができたのが良かったんじゃないかなと思います」

 ほんの少しの懸念材料や不安要素も見逃さずに対処していく野尻とTEAM MUGEN。2年連続チャンピオンに向けて、その下準備を整える第8戦だったと言えるだろう。

■「トラフィックでノー・チャンス」のサッシャ・フェネストラズ

 一方、レース後のミックスゾーンに登場したフェネストラズは、野尻とは対照的に笑顔がなく、「戦略的に良くないレースだった。うまくやれていれば2番手くらいはいけたかもしれない。残念だった」と開口一番に話した。

 2番グリッドからスタートしたフェネストラズだが、野尻に抜かれて3番手に後退し、トップ2台を追いかけていく展開となった。15周目に野尻がタイヤ交換を済ませたのをみて、翌16周目にフェンストラズもピットイン。しかし、トップを走っていた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)と同じタイミングでのピットとなり、彼を逆転することはできず。結局後半スティントも大湯のペースに付き合うことになってしまった。

「平川が背後から迫っていきていたのだけど、そこでチームからピットインの指示が出た。そのタイミングで本当に良いのか、僕自身は確信を持てなかった」というフェネストラズ。というのも、本人は第4戦オートポリスのような展開を狙っていた。

 第4戦ではトップを走る野尻が先にピットインし、平川とフェネストラズがステイアウトを選択。結果的にふたりが野尻を逆転し、1位と2位をわけ合った。

「オートポリスのときもチームはピットインの指示を出したけど、僕はピットに入らずに引っ張ることを選択した。それが結果的に成功して2位を獲得できた。それでチームも学んだだろうと僕は思っていた。もし、オートポリスのときも、チームが言ったタイミングでピットに入っていたら、今日と同じことが起きてしまっていただろう」

「ここに来る前のミーティングで、『一番重要なのはクリーンエアで走れるところピットアウトできることだから、それも踏まえてピットストップのタイミングを見極めよう』とエンジニアに伝えたのだけど、結果的に今回は逆のことが起きて、ピットアウト後はトラフィックに引っかかり、ノーチャンスとなってしまった」

「僕のエンジニアも、そのことは理解していて、ステイアウトするべきと考えてくれていたみたいなんだけど、戦略の部分はエンジニアだけじゃなくて最終にチーム全体で決定することだから……クリーンエアであれば、速く走れるクルマがあったし、野尻とのポイント差を縮める大きなチャンスだったから、すごく悔しい」

「本当に残念だけど、ミスは誰でも起こしてしまうこと。一番重要なのは、同じことをこの先やらないようにしなければいけない」

 フェネストラズにとっては不本意な結果となってしまったが、懸念していた新しいクルマの違和感については、もてぎ大会を終えて不安な部分はかなり払拭された様子。同日午前の予選で2位を獲得した後の記者会見では、このようなことも話していた。

「金曜日のフリー走行では、違和感を感じることが多かった。今も以前のシャシーと比べてフィーリングがまったく同じとは言えないけど、少しずつ慣れてきた。実際に第7戦、第8戦と予選では良いポジションにつけられた」

「今振り返って考えると、以前のシャシーの方が運が悪かったのかなと思うところがある。僕がデビューした2020年もたくさんクラッシュがあって、問題が起きていた。だから、新しいシャシーの方が運を呼び込んでくれるのかなと、期待している」

 これで、野尻とのポイント差は32ポイントとなり、逆転タイトルのためには鈴鹿の2レースともに高得点が必要となったフェネストラズ。最終決戦に向けては「一生懸命、全力でやるだけだよ!」と、短いコメントに留めていた。奇跡の逆転チャンピオンに向けて、さらに進化した状態で鈴鹿大会に乗り込めるかが、ひとつの注目要素となりそうだ。

 そして、鈴鹿大会ではドライバーズタイトルだけでなく、チームタイトルも決定の瞬間を迎える。第8戦を終えて、TEAM MUGENが132ポイント、carenex TEAM IMPULが113ポイント、KONDO RACINGが91ポイントとなり、こちらも三つ巴のタイトル争いが繰り広げられそうだ。