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動物のスゴい耳図鑑 第1回 【ギョッ】カワウソの耳を人間で表現すると…イラストレーター・川崎悟司さんに聞く「動物の耳」の面白さ

2022年08月22日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
夏休みにお出かけするなら、自由研究のテーマ探しに動物園や水族館に行くのはいかがでしょうか? 子どもだけでなく、大人の知的好奇心を満たす楽しみ方を、『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)の著者であり、イラストレーターの川崎悟司さんに聞きました。

○動物の耳の能力をヒトの姿で表現



『絶滅した奇妙な動物』(ブックマン社)、『カメの甲羅はあばら骨 人体で表す動物図鑑』(SBクリエイティブ)といった書籍を手掛ける古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く動物のイラストは、特徴を強調する独特なものばかり。ちょっとギョッとするような強烈なイラストは、一度見ると印象に残るはず。


独自のセンスで動物の魅力を表現する川崎さんは、動物をどう見ているのでしょう? 今年4月に発売した『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』は、動物の耳の位置や役割を人間で表したイラストを交えつつ、そのスゴい能力を解説する書籍です。この本の制作を振り返りながら、川崎さんならではの動物の見方や耳の面白さを語ってもらいました。



――『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』は動物の「耳」だけにフォーカスした一冊ですね。



川崎さん:最初にこの本の企画を見た時は、ほ乳類だけかな? と思っていました。ウサギやネコなど、目に見える「耳介(じかい)」の部分は明確な違いがありますから。でもそうではなく、鳥類や魚類、爬虫類などまで入っていて驚きました。結果としては、さまざまな動物が登場してバランスのいい内容になったかと思います。明確なお題があって、適切な資料を読み込めばアイデアが浮かんでくるんです。



――これまでも多くの古生物や動物のイラストを描かれている川崎さんだからこそ、「耳」のようにニッチでマニアックなテーマでもイメージが湧くのかもしれないですね。



川崎さん:それでも、難しかったのはイヌですね。ヒトの数倍も聴力はいいのですが、ある意味特徴がなく……。



――ヒトの役に立つために多様な能力や見た目の犬種が作られたとも言われますが、直立耳・垂れ耳・半直立耳と様々な形がありますね。イラストでは能力を生かして猟犬として活躍するイヌの能力がよく描写されていると思います。


川崎さん:それでも、「動物の耳を人間の姿に例えてすごさを表現する」のがテーマなので、中にはギョッとするようなイラストがあるかもしれません。でも、見た目のインパクトで印象に残って、知識としては忘れないという効果はあるんじゃないかと思います。

○疑問が生じたら納得するまで調べる



――動物が好きで図鑑をずっと読んでいたり、動物の絵ばかり描いていたりといった"動物マニア"の子っていますよね。川崎さんもそうだったのでしょうか?



川崎さん:大きいもの、かっこいいものなどに対する憧れはあり、今もその延長で動物を見ているような気がします。特に気に入っている動物があるというわけではないですが、あえて言うなら、チーターが走っているところを見るのが好きですね。身体のしなり具合などに萌えます。



――動物を観察してインプットし、絵というアウトプットで表現するのが川崎さんならではの手法だと思います。子どもの時から絵が上手だったんのでしょうか?



川崎さん:賞を取るようなことはありませんでしたが、絵を描くことは大好きでした。見たものを立体的にとらえ、理解するのが得意なのかなと思います。一方向だけではなく、前後左右あらゆる角度から見て対象を把握するんです。そうすればどんなアングルの絵でも描けますね。あと役に立っているのは、疑問が生じたら納得するまで調べるクセです。あまり人に聞いたりすることはなく、基本は独学です。



――川崎さんの動物に対しての観察眼に興味があります。よく行く動物園や水族館と、過ごし方を教えてください。



川崎さん:大阪に住んでいるので、電車で行きやすい天王寺動物園にはよく行きます。動物を見る時におすすめしたいのは、事前に何かひとつ動物に対する知識を仕入れてから、それを確認しに行くことです。

例えば、フラミンゴは1本足だけで立って休んだりします。その立ち姿を確認したくて天王寺動物園に行きました。ここで動物園に行って知ったことは、フラミンゴだけでなく、ツルやコウノトリのような脚が細長いタイプの鳥はよく1本足だけで立っていることを知りました。こんな感じで、知識を得たり疑問を持ったりしたら、実際に動物園・水族館に行って本物の動物を見て確かめます。そこからまたプラスの情報が得られるし、さらに興味も知識も広がっていきますよ。

○生息地や生き様が動物の形に表れる



――『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』に登場する動物で、特に印象的な「耳」を教えてもらえますか?



川崎さん:まずは「クラゲ」です。自力で泳げない原始的なプランクトンの一種です。ヒトのような耳はなく、傘の縁部分に8個の感覚器があり、それぞれ2個の眼点を持っています。


――クラゲの感覚器をヒトに例えて描いたイラストは日本初かもしれませんね。暑い夏は涼しい水族館に行きたくなりますが、水族館に行ったら観察したい動物の耳はありますか?



川崎さん:カワウソの耳も独特のつくりですね。顔を正面から見ると、目・鼻・耳が一直線に並んでいます。これは水辺の動物の特徴で、現代の動物に限ったことではありません。古生物の骨の化石を見て「目・鼻・耳が一直線だから、水辺で暮らしていたのだろう」と推測したりもできるんですよ。


それから、ペンギン。鳥は空を飛べるよう骨が空洞で軽量化されていますが、ペンギンの骨は密度が高いつくりです。しかも翼の部分は、骨が板のような形状になっているんです。「同じ鳥類だから同じ特徴を持っている」といった思い込みがあると、裏切られてびっくりすることが多々ありますね。


――あの動物の耳はどんな形でどんな役割があるんだろう……といったように、気になる動物をインターネットやSNSで調べてから動物園や水族館に行ってみると新しい発見がありそうですね。

○『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(宝島社刊)


動物が持つ驚異の能力は「耳」がカギ!



効率的にエサをとるため、敵が出す音をよく拾えるようにするため―― 厳しい自然界で生き残るために進化した動物の耳。さまざまな能力があり、それはコミュニケーションのあり方につながります。



【川崎悟司さんより】

生き物の耳にはさまざまな形と機能があり、人間が感じることができない音を聴くことができる生き物もいます。 また頭部に耳があるともかぎらない生き物や、そもそも耳はなく、体のどこかで音を感じとっている生き物もいます。 だから生き物によってそれぞれ感じる音の世界は異なるでしょう。「そんな生き物たちの耳を人間が持っていたら……」を、イラストで可視化してみました。



動物園・水族館の飼育員、獣医師など、現場のプロに取材し、その秘密を解き明かします。



『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く、「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑です。



川崎 悟司 かわさき さとし 1973年、大阪府生まれ。古生物、恐竜、動物をこよなく愛する古生物研究家。古生物イラストレーターとしても活躍中。2001年、自身が描いた生物のイラストを時代・地域別に掲載したウェブサイト「古世界の住人」を開設。古生物や現代生物、未来の生物を骨格や進化から考察すること に定評がある。おもな著書に『絶滅した奇妙な動物』(ブックマン社)、『ウマは1本の指で立っている! くらべる骨格 動物図鑑』(新星出版社)、『カメの甲羅はあばら骨 人体で表す動物図鑑』(SBクリエイティブ)などがある。 この著者の記事一覧はこちら