2022年08月22日 10:01 弁護士ドットコム
「SNSで『誰か殴り飛ばせ大バカ首相』と投稿したら、会社から注意を受けました。実効性もなくこの程度で問題視されるものかなとも思うのですが、会社から注意を受けるような内容なのでしょうか?」という相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者の男性は、投稿を見た知り合いから「会社に連絡する」と言われ、数週間後に上司からアカウント名を聞かれたため自分のものだと認めると、注意を受けたそうです。
勤務時間外に個人のアカウントで投稿したものであっても、内容次第では会社から注意や処分を受けてしまう可能性はあるのでしょうか。薬師寺正典弁護士に聞きました。
「勤務時間外に従業員個人のSNS等のアカウントを用いて行う投稿については、基本的には私生活上の行為であるため、原則として懲戒処分を科すことはできません」
では、どういう場合に処分の可能性があるのでしょうか。
「判例上、行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合には、私生活上の行為を理由とした懲戒処分も有効と解される傾向にあります。
例えば、投稿内容が会社の業務内容に関するものであり、投稿内容が悪質であり、会社の信用・社会的評価を大きく低下させてしまうような場合には、懲戒処分は有効となる可能性が高いと考えられます」
今回の場合はどうでしょうか。
「会社が任意の方法で従業員の個人アカウントを認識・把握することは可能といえますので、そのうえで投稿内容や会社の業種、投稿者である従業員の地位や職種等を検討し、会社の信用・社会的評価への影響が生じ得ると会社が判断すれば、そのことを理由に会社から事実上の注意を受ける可能性はあると思われます。
一方で、事実上の注意を超えて懲戒処分まで行う場合には、懲戒規定の該当性を含め、会社としてもより慎重な検討が必要になるでしょう」
【取材協力弁護士】
藥師寺 正典(やくしじ・まさのり)弁護士
中央大学法科大学院修了後、2013年弁護士登録。労働法制委員会(第一東京弁護士会)、日本CSR普及協会、経営法曹会議等に所属。主に、使用者側の人事労務(採用から契約終了までの労務相談全般、団体交渉、問題社員対応、就業規則対応、訴訟対応、労基署対応、労務DD等)、中小企業法務、M&A等の商事案件に対応。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所(東京事務所)
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/