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「ちょいエロコスプレ」の最前線。変わるコミケの役割と中華圏レイヤーたちの参入

2022年08月20日 06:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

今や、誰もが知る存在となりつつある「コスプレ」。お盆のコミケにも4000人以上の多様なレイヤーたちが参加したが、こういうイベントで地味に人気なのが「ちょいエロ」のセクシー系コスプレだ。一般メディアの表舞台にはなかなか登場しないが、そこには独特の世界が展開されている。今回は、その最前線の話をしたい。(取材・文:ポメ崎)

アングラ風「コミケ発禁」で盛り上がったことも

コミケでコスプレ写真集が目立つようになったのは、2000年代初頭から。コスプレにセクシー要素(肌の露出)を加えた「エロコス」と呼ばれる新ジャンルが盛り上がってきたのは、2010年頃からだろうか。エロコス初期はアングラ色も強く、エロ業界に慣れている人には常識となっているような「暗黙の了解」をスルーする作品もちらほら出てきて、コミケでも主催側のチェックで「頒布禁止」を言い渡されるものもあったとか。2011年夏のコミケ後には、「コミケで発禁」になった作品の即売会が開催され、話題になったりもした。

その後は、エロコスの製作者たちにも「エロ業界のイロハ」が浸透。次第に穏健化し、コミケを彩る文化のひとつとして定着していった。現在のコミケでは、こうしたエロコス写真集(多くはDVD形式なので、コスROMとも呼ばれる)を頒布するエリアが、ごく当たり前のものになっている。

筆者撮影

メジャー化する一方で、「謎の勢い」みたいなものは失われた。かつて、こうした写真集は、コミケなどのリアル即売会か、限られたマニア向けの書店などでしか手に入らなかった。ところが現在では、個人レベルでもネット通販やダウンロード販売ができる世の中。コスプレイヤーの多くはTwitterなどでサンプル画像を公開して宣伝し、その上で販売サイトへと誘導するのが主流になっている。

月額課金のサブスクプランを用意するコスプレイヤーも増えている。毎月決まった金額を払えば、その人の新作コスプレがどんどん流れてくる仕組み。その金額は1000~5000円あるいはそれ以上と幅があるが決して安くはない。手を広げるよりも、特定の「推し」につぎ込む感じになっているのだろう。

コミケは貴重なリアル交流の場ではあるものの、コアなファンたちは推しレイヤーの写真集を買いに来て、サインをもらったり会話をしたりといった交流を楽しめば、もうお腹いっぱい。新たな出会いや発見のある「お祭り感」は乏しくなっているように思う。

表現が「似たりよったり」に?

もうひとつ残念なのは、レイヤー数のわりに作品の幅が狭いように思える点。このジャンルに詳しいユーザーからは、こんな話が聞けた。

「違うのは、被写体になっているコスプレイヤーだけで、コスプレ元ネタのキャラクターはバリエーションが少ないです。ポージングや画角も、わかりやすいセクシーさを求めた結果としてどれも似たり寄ったりになっています。どうエロく見せるか、手探りで試行錯誤していた10年ほど前に比べると、お手軽な商売感が出てしまっています」

売上アップを目指すと、コスプレ対象は旬のキャラ。ポーズも定番で……となりがちなのだろう。

中華圏のコスプレがプロすぎる

筆者撮影

ところで、エロコス界いはいま、中華圏レイヤーの参入が相次いでいる。日本市場は共産圏に比べ、圧倒的に自由度が高いからだ。Twitterでちょっと検索すれば一目瞭然だが、数多くの中国・台湾のコスプレイヤーが日本語でツイートし、日本のダウンロード販売サイトで写真集を売っている。

もちろん中国本土から、Twitterなどへのアクセスは遮断されているが、彼らはVPNなどを駆使してシレッとアクセスしてきている。購入するユーザーも日本人だけではなく、中国人ユーザーもやはりVPN経由で、Twitterや日本のダウンロード販売サイトを利用しているようだ。

ところで日本のレイヤーたちは、著作権者を怒らせないよう「あえてアマチュア感」を大事にしているケースも多いと思われるが、中華圏のエロコス写真集はガチプロ商売感が強いのも特徴だ。

かつて中華圏コスプレ写真集に関わっていた日本人からは、こんな話が。

「カラコンを使ったり化粧の技術も日本人コスプレイヤーより格段に上です。それに撮影はもちろん、写真の修正技術も完全にプロの手の入ったものばかりですよ」

日本のコスプレ文化は、著作権者とファンたちとの「阿吽の呼吸」みたいなところで発展してきたのだが……。今後はどうなることやら。