2022年08月17日 17:31 弁護士ドットコム
茨城県境町内を自動車で走行中に、対向車から岩のような物を投げられてフロントガラスに直撃したとする画像がツイッターで投稿され、1万9000回以上リツイートされるなど大きな話題となっている。
【関連記事:マイホーム購入も「道路族」に悩まされ…「自宅前で遊ぶことのなにが悪いの?」】
「走ってたら対向車から何か落ちてきた。。ひどいんだけど」(ツイートより)。投稿によると、岩のような物がフロントガラスを貫通するのは避けられたようだが、右半分が大きく破損しており、相当大きな衝撃があったことがうかがえる。車内にいた投稿者自身はガラス片を浴びてしまったようだ。車体の屋根部分の一部も傷つき、へこんでいた。
ドライブレコーダーで撮影された動画も投稿しており、物を投げてきたとみられる車の様子が映っていたが、夜間であるためはっきりとした状況の確認が困難なようで、投稿者も「黒いセダン、ヘッドライト付けずにフォグのみHID、銀メッキのホイール。。車種はわからんな」とツイートしていた。
投稿者は警察に連絡したものの、「器物損壊事件って警察から連絡来たけど、どうなんだろ。器物損壊なのかな」とも投稿しており、身の危険を感じた状況に対して「器物損壊事件」と伝えられたことに、疑問を感じている様子がうかがえる。
物がぶつかったことで車の制御を失うなどして大事故となったり、フロントガラスを貫通して物が直撃するなど、一歩間違えれば命を落とす危険もあったとみられるが、殺人未遂にはならないのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
——対向車から岩のような物を投げる行為はどのような犯罪に当たりますか。
被害者の方の投稿によりますと、フロントガラスの割れた破片が目に入っていたようですが、大事に至っていないことをお祈りいたします。
もちろん、今回の加害者の行為は、器物損壊罪(刑法261条)には該当し得ます。
また、法定速度とはいえ、高速で走行する車内から岩のようなものをフロントガラスにぶつける行為は物理的には相当な破壊力がありますので、人の身体に対する不法な有形力の行使に該当し、暴行罪(刑法208条)に該当するといえます。
被害者の方が怪我をされた場合は、傷害罪(刑法204条)にも当たり得るでしょう。
——SNS上では「殺人未遂では」との声もありますが、同罪が成立する余地はありますか。
今回は幸いなことにフロントガラスが割れたことで済みましたが、これはフロントガラスの性能が良かったという偶然の事情によるものです。死亡事故・事件になる可能性もあったと思われます。
殺人未遂罪が成立するためには、殺意すなわち「人を殺す故意」があったことが必要です。相手が確実に死ぬとまでは認識していないが、死んでも構わないという心理状態である「未必の故意」でも故意があったと認められます。
故意が認められるかどうかは、主に凶器の種類を含む犯行の態様や犯行の背景・動機などから判断されます。
仮に今回の加害者に殺意があったとした場合、殺人未遂罪が成立する余地はあります。しかし、相手を脅かすようないたずら目的などの場合、未必の故意があったと認定できるかは微妙なところであり、実務上、殺人未遂事件として立件するのは容易ではないかもしれません。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/