2022年08月14日 09:41 弁護士ドットコム
パートナーと一度も性交渉できず苦悩しているという男性から、「妻から慰謝料を取りたい」という相談が寄せられました。
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相談者は結婚8カ月になりますが、結婚前も後も性交渉が一度もありません。そこで妻と話し合いをすると「そもそも性的接触が好きではない」「潔癖症なのでできない」と断られたそうです。
結婚後に初めて言われたため、相談者は納得できずにいます。この場合、調停や裁判に発展した場合、離婚は認められるのでしょうか。また、相談者は妻から慰謝料をもらえるのでしょうか? 原口未緒弁護士に聞きました。
ーーデリケートな問題ではあるのですが、一方が望んでいるけれども一方はNGと言う場合、結婚においては離婚が現実味を帯びることも多いのではないでしょうか
婚姻には、前提として、性交渉が含まれていることが一般的な認識かと思います。
もっとも、現在は多様性の時代です。必ずしも、結婚=家族を作る=性交渉というご夫婦でないご夫婦もいらっしゃるでしょう。
事前に「私は性的接触が好きではないので、できない」ということを妻が夫にきちんと申告し、それを夫が了承した上で、婚姻をされたのであれば、離婚理由にはならないと思います。
ーー今回のケースでは、結婚前には、妻から「性的接触ができない」という申告を受けておらず、夫もそのことを認識していなかったようです
その場合、性的接触や性交渉、生殖行為を一般的には前提としている現在の婚姻関係においては、「性的接触や性交渉を行うことができない」ことを隠して婚姻し、婚姻後に判明した場合には、離婚理由となる可能性が高いと思われます。
もっとも、調停は、両者が合意しない限りは、調停成立となりません。調停で妻が納得しない場合には、訴訟に進む必要があり、訴訟においては、前述のように裁判官は離婚理由として認める判断をする可能性が高いのではないかと考えます。
ーー仮に夫の離婚請求が認められた場合、妻は「有責配偶者」になるのでしょうか
私はならないと思います。有責配偶者というのは、良好な婚姻関係を破綻させた原因を作り出した者を言います。わかりやすいのは、不貞行為をしたケースですね。
今回は「妻が性交渉ができないと知っていたならば結婚しなかった」というケースであり、そもそもその関係では「良好な婚姻関係」が存在したとは言えないのではないでしょうか。
また「妻が性交渉ができないことを知らせなかった」という事実は、不貞や暴力などのように積極的に破綻させたという行為には該当しないと考えます。
なお、慰謝料については、認められる余地はあるのではないかと思います。夫は、性交渉ができないことを知っていたならば、結婚しなかった可能性が大きいです。いわば「騙された」といったところが大きいかと思います。
妻に、夫に精神的苦痛を与えるであろう故意または少なくとも過失は認められますので、慰謝料が認められる余地はあると考えます。
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京弁護士会所属。心理カウンセリング・アカシックリーディングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com